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iiyori.02

08.

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ふわふわする。

なんだろう、この温かくて逞しくて安心するもの。
滑らかで心地よくてずっと包まれていたいような。

擦り寄ったら優しく抱きしめられて、感じたことのない幸福な気持ちが込み上げてきた。ぴったり張り付く滑らかな肌が心地よい。すべすべで温かくて固くて触ってもびくともしない、…

「…おい」

ぎゅううっとしがみついたら肌触りの良すぎるものが微妙に揺れる。それがまた心地よい。ゆらゆら揺られてすりすり擦れる。大きくて温かくて安心する。もっといっぱい。もっとずっと。永遠に包まれていたい。調子に乗って手のひらで撫でさすり、唇を触れていたら、

「やめろ、くすぐったい」

なんか引きはがされた。

「…や、だ、…」

離れていく。行ってしまう。
たとえようのない喪失感に襲われて、必死でしがみつく。
この大きくて温かくて安心する温もりは絶対に離したくない。

「…いいのか? このまま抱いても」

困ったような低い声と手のひらが耳に触れて、すごく優しい唇が唇に重なった。

ほどけてく、…

ルールとか。世間体とか。立場とか。人間性とか。
真面目に。堅実に。先のことを考えて。

ずっとがんじがらめに縛られて、自分を覆い隠して、真っすぐに道を外れないようにひたすら正しい方向に歩いてきた、今までのものたちすべてが。

ほどけて、剥がれて、むき出しになる。
怖がりで、弱虫で、ありのままの、…

「…なえ」

重ね合わされた唇から、吐息が漏れる。
低くかすれて。甘く優しい。私を呼ぶ声。

愛しい、…

「ちちうえ、ははうえ、ちりが、…っ、めんぼくない、…っ」

心地よさの極限で、生温かい湿り気に起こされた。

「え、…あれ? 卯月、おしっこ?」

私を包み込んでいた温もりが離れ、目を擦りながら身を起こすと、

「厠には俺が連れていく。お前は何か着ておけ」

薄衣がはだけたしどけない姿の穂月が卯月を抱き上げ、私に布団を着せ掛けた。

「うん、…」

優しい。さすがパパ。

と思いながら、寝ぼけ眼のまま自分を見て、一気に覚醒して目玉が飛び出した。

まっやんけ―――っっ!!
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