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iiyori.02

07.

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未だ赤いであろう自分の顔に冷水を浴びせ、泡立てた石鹸でごしごし洗う。

多分、私がいちいち反応するからダメなんだ。
いるよね、女性教師とみるとからかってくる男子生徒。
毅然とっ!!! これに尽きる。

ふう、…高揚したまま全身を洗い終えると、一息ついて湯船に浸かる。

あったかい。
食べ散らかしてお風呂に直行とか最高過ぎる。

穂月はなんであんなに余裕があるんだろう。

もしも私が時間を超えて未来に行ったりしたら、もっと全然パニックで、泣いてうろたえて帰り道を探す、みたいなことになりそうだけど。

『お前に会うために、俺は時を超えて来た』

本当かなあ、…そんなおとぎ話実在するかなあ、…
なんか騙されてるんじゃないかなあ、…

まろやかに温かいお湯にブクブク沈み込んだ。

でもこんな、冴えない教員騙してどんなメリットがあるというの、…お金? そりゃあいずれ結婚しなきゃと思って少しは貯めてるけど、そんな、教員の給与なんてたかが知れてる、…けど、まあ、そうか、お金かあ。

「なえ? ずいぶん経つが、大丈夫か?」

イケメンが時空を超えて自分に会いに来るなんて、29年間地味に真面目に生きてきた私に神様がくれた最高のご褒美じゃん、…

お金で買えるなら、ちょっとくらい流されてみても、…みても、…みても、…

疲労がお湯に溶けて急速に眠くなってきた。
あくびを噛み殺して湯船の淵にもたれる。

「なえ? 大丈夫か? 入るぞ?」

真面目なだけが取り柄で、冒険は一つもしたことがない。
なんとなく付き合った人はいるけど、我を忘れるような恋愛なんてしたことがない。結婚相談所で紹介してもらうような身元が確かで生活能力のある人と堅実な結婚をして両親を喜ばせようと思っていた。

確かな将来。着実な未来。

「…なえ、…っ!!」

でもそんな未来、本当に幸せなのかな。

『何があっても絶対あの子を好きになっちゃダメよ。何をどう考えてもあんたたちに未来はないからね!!』

だけど私はずっといい子で、…いい子できたから、…
よく知らない人と同居なんてできない。高校生と恋愛なんてできない。
遥か先まで見通せる直線ルートから外れるなんて、怖くて…、怖くて…

「…怖くない。俺がいる」

全裸で年下のイケメンに抱きあげられるなんて、夢の中でしか出来ないよ。
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