8 / 92
iiyori.01
08.
しおりを挟む
「うわ、レズってる」
いつの間にか保健室にやってきた女子生徒の坂下沙里が、抱き合っている私たちを見て、心底嫌そうな顔をした。
「マキちゃん、お腹痛い。寝かして」
「またかよ、沙里。あんた生理重いんだからさ、そんな短いスカートで生足出してないで、中にきっちり短パン履いとけ?」
マキちゃんは卯月を私に渡すと、勝手知ったる様子でベッドに向かう坂下さんに手を貸している。
「薬飲んだ?」
「持ってない」
「だから、持ち歩けって言ってるじゃん」
「だって急になったんだもん」
「…たくもう」
ぶつぶつ言いながら薬と水を渡すマキちゃんは頼れる教師そのもので、女の私から見ても惚れてしまう。
「あ、…なえちゃんセンセーのちょっと信じられないくらいカッコイイ隠し子、全校女生徒のハートを鷲づかみにしてるけど、早くしないと食われちゃうかもよ?」
ベッドに入った坂下さんが仕切りカーテンを閉める直前、なんか恐ろしいことを言い捨てた。
えええ―――、…
隠し子じゃないけどな。
という突っ込みは、ひとまず置いといて。
いやでも親子に見えるのか。そうか親子か。という衝撃も置いといて。
穂月はまあ、あの見た目だから注目はされるだろうけど、言動が時代がかってるし、現代高校生の授業内容についていけるか謎だし、教室では浮きまくるんじゃないかと思っていたけど。
お昼寝中の卯月を保健室のマキちゃんに預けて、お昼休みに様子を見に行ったら、穂月が死ぬほどモテていた。
「え~? 穂月くん、お弁当持ってきてないの? 一緒に食べよう」
「なえちゃん、家事出来そうにないもんね。明日から作ってきてあげるよ」
「ねえねえ何が好き? 購買のパン買ってきたよ」
「放課後ヒマ? 遊び行こ?」
「海外に居たんだっけ? 日本案内してあげるぅ~」
穂月の周りを、どこぞのアイドルが来たのかと思うくらい大勢の生徒たちが取り囲んでいて、女子はみんな可愛さを前面に押し出し、
「志田のシュートすごかったな」
「足めっちゃ速いじゃん」「なんかスポーツやってたの?」
「サッカー部に入らねえ?」「いやいやバスケでしょ」
「たたずまいからして剣道がいいと思うけどなあ」
男子は男子で穂月の能力の高さに勧誘を繰り広げている。
当の穂月は静かな微笑みを浮かべて周りの話を聞き、丁寧に受け応えている。なんだか周りを囲まれたり、かしずかれたりすることに慣れているように見える。
いつの間にか保健室にやってきた女子生徒の坂下沙里が、抱き合っている私たちを見て、心底嫌そうな顔をした。
「マキちゃん、お腹痛い。寝かして」
「またかよ、沙里。あんた生理重いんだからさ、そんな短いスカートで生足出してないで、中にきっちり短パン履いとけ?」
マキちゃんは卯月を私に渡すと、勝手知ったる様子でベッドに向かう坂下さんに手を貸している。
「薬飲んだ?」
「持ってない」
「だから、持ち歩けって言ってるじゃん」
「だって急になったんだもん」
「…たくもう」
ぶつぶつ言いながら薬と水を渡すマキちゃんは頼れる教師そのもので、女の私から見ても惚れてしまう。
「あ、…なえちゃんセンセーのちょっと信じられないくらいカッコイイ隠し子、全校女生徒のハートを鷲づかみにしてるけど、早くしないと食われちゃうかもよ?」
ベッドに入った坂下さんが仕切りカーテンを閉める直前、なんか恐ろしいことを言い捨てた。
えええ―――、…
隠し子じゃないけどな。
という突っ込みは、ひとまず置いといて。
いやでも親子に見えるのか。そうか親子か。という衝撃も置いといて。
穂月はまあ、あの見た目だから注目はされるだろうけど、言動が時代がかってるし、現代高校生の授業内容についていけるか謎だし、教室では浮きまくるんじゃないかと思っていたけど。
お昼寝中の卯月を保健室のマキちゃんに預けて、お昼休みに様子を見に行ったら、穂月が死ぬほどモテていた。
「え~? 穂月くん、お弁当持ってきてないの? 一緒に食べよう」
「なえちゃん、家事出来そうにないもんね。明日から作ってきてあげるよ」
「ねえねえ何が好き? 購買のパン買ってきたよ」
「放課後ヒマ? 遊び行こ?」
「海外に居たんだっけ? 日本案内してあげるぅ~」
穂月の周りを、どこぞのアイドルが来たのかと思うくらい大勢の生徒たちが取り囲んでいて、女子はみんな可愛さを前面に押し出し、
「志田のシュートすごかったな」
「足めっちゃ速いじゃん」「なんかスポーツやってたの?」
「サッカー部に入らねえ?」「いやいやバスケでしょ」
「たたずまいからして剣道がいいと思うけどなあ」
男子は男子で穂月の能力の高さに勧誘を繰り広げている。
当の穂月は静かな微笑みを浮かべて周りの話を聞き、丁寧に受け応えている。なんだか周りを囲まれたり、かしずかれたりすることに慣れているように見える。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます
天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。
王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。
影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。
私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる