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7章.あした色リユニオン

05.

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「絶対絶対、目ぇ開けないでねっ」
「…開けなきゃ見えねえじゃん」

ななせがその麗し過ぎるご尊顔をずいずい近づけてくる。
いやあ、むりむり。眩しい。眩し過ぎるっ!
反射的に座ったままベッドの上を後ずさるも、背後は壁に行き当たる。

「ほら、早く」

逃げ場なし。
いや、だから、そんな迫ってきたら触っちゃうかもしれないでしょおおおっ
…って、最初からそのつもりか。

「キスして、つぼみ?」

ずっっっるい、ななせ!!
そんなカッコ良すぎる顔で可愛くおねだりするとか、絶対拒否できないやつじゃん。意地悪ななせのテクニシャン―――っっ

「…目、瞑ってよ、ななせ」

いたたまれなくて自分の口に手を当てる。鼻息がななせにかかってしまう。
せめて。その吸い込まれそうに綺麗な目を閉じて欲しい。
ななせに見られたら、動けなくなるんだよ。魅せられて。囚われてしまう。

「俺にキスするつぼみが見たいんだけどな」

長いまつ毛を少し伏せたななせがちゅっと私の手の甲に口づける。
ううう、おおおう、…破壊力っ
なんちゅう色気を振りまいてくるんじゃあ―――っ

ななせの唇が触れた感触が甘やかな快感になって身体中を巡る。ぞくぞくする。もっとそばで、もっといっぱい触って欲しい。

「…ななせぇ、…」

自分の声が甘えて濡れているのが分かる。キスしたい。キスして欲しい。ななせにいっぱい触りたい。だけど恥ずかしい。

「…しょうがねえな、はい」

ななせが目を閉じた。

…無防備で。信用されてると言うか。委ねられてると言うか。
いや、試されてんのかな。なんか、緊張と興奮と背徳感があるんですけど、…

精神状態がぐらぐらになりながら、再度、気合を入れて目を瞑る。
ううう。届くか、届くかな。唇を突き出してななせに迫る自分の顔なんて絶対に見られたくない。必死で前のめりになるのになかなかななせに触れない。

…あれ。

そっと目を開けたら、ななせのドアップと目が合った。

「な、…っ!!」

ななせ、目開けてるじゃんっ、てか、さり気なく下がってるじゃんっ
そりゃあ届くわけないじゃんっっ!!

「ななせの嘘つきぃいいいい―――――っ」

アホみたいなタコ顔見られた。ひどい。恥ずかしい。

余りのいたたまれなさに、グーでななせをポカポカ叩いたら、あっさり受け止められて腕の中に囲われた。

「…ごめんて。可愛すぎた」

ななせが全開で笑っている。

くうう、そうやって人を玩具にして。という恥ずか悔しい気持ちは、無邪気なななせの笑顔に負けた。どんなななせでも好きだけど。やっぱりななせには笑っていて欲しい。ななせが笑っていると安心する。ななせが笑っていると幸せが満ちる。

「…だいすき」

簡単にこぼれ落ちてしまう私の気持ちに、ななせの瞳がどこか切なげに煙った。

「…うん」

ななせの唇が触れる。
優しくて。優しくて。意地悪で。愛しい。

…あ。

唐突に閃いた。
以前、ななせから感じた煙草の匂い。あれ、スミスさんたちテロリスト集団が車の中で吸ってたのと同じ匂いだ。ななせが取引に赴いて指輪に細工したっていうの、きっと、あのイギリスの夜だ。

『…ななせ、煙草の匂いがする』
『あー、…まあ、我慢しろ。…飛行機の時間まで抱いててやるから』

ななせってホントに、…

「…バカ、嘘つき」
「なんだよ、そんな怒んなって。いっぱいキスしてやるから」

文句は全部キスに塞がれる。

ずるい。大好き。

ななせのキスは、言葉より雄弁で。
ななせのキスに、全部溶かされていく。
不安も緊張も恥ずかしさも。悲しさも寂しさも。

ただ、ななせを好きな気持ちだけが底なしに溢れ出す。

「…つぼみが脱がせて?」

あっけなくななせに陥落し、心地よい温もりと感触と甘美な舌先の動きにたゆたっていたら、上手に着させてもらったウエディングドレスがいつの間にか壁に掛けられていて、上着を脱いだななせが悪戯顔でネクタイを緩めた。

え、…

なんかまたSっ気出してきたよ、この人。 …ななせを脱がせる??
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