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1章.あめ色ハニームーン
08.
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ななせとの相合い傘は、いつの時代も女の子の憧れだった。
急な雨に降られて、靴も靴下もずぶぬれで、廊下を濡らしてお風呂場に駆け込んでいた虚しい学生時代。
ななせは傘なんて持ち歩いていなかったけれど、入れてくれる女の子が引きも切らず、濡れて帰ったことなんて一度もなかった。
だけど私は、その列に並ぶ権利を持っていなかった。
ななせはずっと大切な弟で、そこから外れることは許されないと思っていたから。
本当は、今日も。
相合傘を期待するモカルカのことが羨ましかった。好きな人と相合傘をすることが、こんなに幸せなんて知らなかった。
「どうした?」
それをななせが、不意に、簡単に叶えてくれた。
思い出したら、感慨深くてちょっと切ない。目の前にいるななせが涙に滲んで幻みたいに見えたから、私をのぞき込むななせに思わずしがみ付いた。
「…なんだよ。もう欲しい?」
ゆっくり私を撫でながら、至近距離で艶やかに笑うななせ。
ななせのこと、好き過ぎて怖い。
ぎゅうぎゅうにしがみつくと、ななせはわざとリップ音を立てながら、私の上で唇を遊ばせた。ななせは目も鼻も唇の形も、本当に全てが綺麗で完璧で、非の打ち所がない。
そして。
私を快感で溢れさせる方法を分かり切っている。
「ちが、…」
結局。
ななせと一緒にお風呂に入ると、私はあっという間に溶かされて、ななせしか見えなくなって、自分の全てをさらけ出すことになって、許しを請いながらななせに纏わりつくしかなくなる。
「…わ、ない」
そう。
ななせとのお風呂は好きだけど、ただ、やっぱり、それが悔しい。
私ばっかりななせを欲しがって、貪欲にななせを求めることになって。ななせはいつも余裕そうに笑いながら、散々焦らして戯れて高めて弄ぶ。
それは死ぬほど恥ずかしくて死ぬほど気持ちいい。
「お前、すぐ真っ赤になって。全然慣れないな」
手のひらと、指と舌と唇で。
簡単に弾き飛ばされた私をななせが膝の上に抱き上げて、見せつけるように私に触れた指を舐めた。
「ななせ、…」
敏感に研ぎ澄まされた身体がわななく。
水に濡れて滑らかに艶めくななせの肌に触れて、離れたくなくて必死に吸いつく。この体勢は、否応なしにななせの全てを感じて、私の中から期待と欲望が滝のように溢れ出していく。
悔しいけどななせが欲しい。
お願いだから。早く。
どうか。もっと。いっぱい。
「…遊び倒したくなる」
切羽詰まってる私に舌を出すななせが、めちゃめちゃ意地悪セクシーで、身体の奥が締め付けられて切なく鳴き声を上げる。
「や、なな、…」
水音に煽られて、ななせに焦がれて、苦しいくらい喘がされて、快感に溺れる。
「可愛いな。めちゃめちゃ俺のこと欲しがって」
意地悪ななせがSっ気を出してきて、焦らして焦らして全然くれない。適当なことを言って弄びながら、何度も何度も私を快感で弾けさせる。
嬉しいけど切なくて。
この先をななせに教え込まれた身体がもう耐え切れずに、
「やだ、もう、ななせと、…」
「俺と、なに?」
「ななせと一緒じゃなきゃ嫌だ、…っ」
涙に濡れながら必死で懇願することになる。
「…いいよ」
やっと。やっと。
ゆっくりゆっくりななせに満たされて。
「お前、ホント可愛いな」
いつも。
これ以上ないほどの至福に震える。
唇も舌も身体も腕も脚も。
ななせとぴったりくっついて1ミリの隙間なく溶け合って、境界線が分からないくらい混ざり合う。
「俺は全部。お前のだよ」
幸せの彼方に飛ばされて、繰り返し繰り返し穿たれて、注がれて満たされて、忘我の境地で恍惚に漂う。
急な雨に降られて、靴も靴下もずぶぬれで、廊下を濡らしてお風呂場に駆け込んでいた虚しい学生時代。
ななせは傘なんて持ち歩いていなかったけれど、入れてくれる女の子が引きも切らず、濡れて帰ったことなんて一度もなかった。
だけど私は、その列に並ぶ権利を持っていなかった。
ななせはずっと大切な弟で、そこから外れることは許されないと思っていたから。
本当は、今日も。
相合傘を期待するモカルカのことが羨ましかった。好きな人と相合傘をすることが、こんなに幸せなんて知らなかった。
「どうした?」
それをななせが、不意に、簡単に叶えてくれた。
思い出したら、感慨深くてちょっと切ない。目の前にいるななせが涙に滲んで幻みたいに見えたから、私をのぞき込むななせに思わずしがみ付いた。
「…なんだよ。もう欲しい?」
ゆっくり私を撫でながら、至近距離で艶やかに笑うななせ。
ななせのこと、好き過ぎて怖い。
ぎゅうぎゅうにしがみつくと、ななせはわざとリップ音を立てながら、私の上で唇を遊ばせた。ななせは目も鼻も唇の形も、本当に全てが綺麗で完璧で、非の打ち所がない。
そして。
私を快感で溢れさせる方法を分かり切っている。
「ちが、…」
結局。
ななせと一緒にお風呂に入ると、私はあっという間に溶かされて、ななせしか見えなくなって、自分の全てをさらけ出すことになって、許しを請いながらななせに纏わりつくしかなくなる。
「…わ、ない」
そう。
ななせとのお風呂は好きだけど、ただ、やっぱり、それが悔しい。
私ばっかりななせを欲しがって、貪欲にななせを求めることになって。ななせはいつも余裕そうに笑いながら、散々焦らして戯れて高めて弄ぶ。
それは死ぬほど恥ずかしくて死ぬほど気持ちいい。
「お前、すぐ真っ赤になって。全然慣れないな」
手のひらと、指と舌と唇で。
簡単に弾き飛ばされた私をななせが膝の上に抱き上げて、見せつけるように私に触れた指を舐めた。
「ななせ、…」
敏感に研ぎ澄まされた身体がわななく。
水に濡れて滑らかに艶めくななせの肌に触れて、離れたくなくて必死に吸いつく。この体勢は、否応なしにななせの全てを感じて、私の中から期待と欲望が滝のように溢れ出していく。
悔しいけどななせが欲しい。
お願いだから。早く。
どうか。もっと。いっぱい。
「…遊び倒したくなる」
切羽詰まってる私に舌を出すななせが、めちゃめちゃ意地悪セクシーで、身体の奥が締め付けられて切なく鳴き声を上げる。
「や、なな、…」
水音に煽られて、ななせに焦がれて、苦しいくらい喘がされて、快感に溺れる。
「可愛いな。めちゃめちゃ俺のこと欲しがって」
意地悪ななせがSっ気を出してきて、焦らして焦らして全然くれない。適当なことを言って弄びながら、何度も何度も私を快感で弾けさせる。
嬉しいけど切なくて。
この先をななせに教え込まれた身体がもう耐え切れずに、
「やだ、もう、ななせと、…」
「俺と、なに?」
「ななせと一緒じゃなきゃ嫌だ、…っ」
涙に濡れながら必死で懇願することになる。
「…いいよ」
やっと。やっと。
ゆっくりゆっくりななせに満たされて。
「お前、ホント可愛いな」
いつも。
これ以上ないほどの至福に震える。
唇も舌も身体も腕も脚も。
ななせとぴったりくっついて1ミリの隙間なく溶け合って、境界線が分からないくらい混ざり合う。
「俺は全部。お前のだよ」
幸せの彼方に飛ばされて、繰り返し繰り返し穿たれて、注がれて満たされて、忘我の境地で恍惚に漂う。
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