セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

remo

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「ねえ、頭に桜の木が生えてるよね?」
「…生えてますね」

経理課は今日も通常運転。
デキる課長に可愛い後輩たち。
帳簿? 予算書? 給与明細?
経理処理って楽しい―――っ

「オンナは30からなの? そうなの? 今30がキテるの?」
「知りませんよ」
「よし、合コン年齢30にしよ」
「完全に方向性を間違えてる。まあ、イケメンならここにもいますけど」
「…谷はないわー」
「黙れよ、清水」

「イケメンならここにも、…」
「「黙れよ、細田」」

お昼休みにいつものくせで給湯室横の控室に入り、朝コンビニに寄り忘れたことを思い出した。

「あれ? 橘ちゃん、シャケおにぎりないの? ついに結婚諦めたかー」

うるせー、真鍋。

「もう決まったんで」

ふいに甘く掠れた声がして、後ろからふんわり抱きしめられた。
爽やかな柑橘の匂い。長い腕。きれいな指。

「柚くん」

振り仰ぐと、柚くんの澄んだ瞳が優しく緩んでいた。
警察への報告が終わったらしい。

「食べに行く?」

そのまま柚くんに控室から連れ出される。

「えー、藤倉くんが追いかけてたの、橘ちゃんなの? わぁー、披露宴の祝辞なら任せて―――」

セクハラ部長上等。お昼休みランチ万歳。
オフィスラブ最高。

「橘、お疲れ」
「桐生さん!」

終業時間をだいぶ過ぎ、フロアに人がまばらになった頃、ふらりと桐生さんがやって来た。

「お前、ホント仕事し過ぎ」

桐生さんが穏やかな笑顔で私の頭を撫でる。
桐生さんはやっぱりとても私を安心させてくれる。

「課外のおっさん、風紀乱すなよ?」

心なしか低めの柚くんの声がする。

「あ、そうだ。藤倉くん、来月から楽しみだね」

対する桐生さんはなかなか楽しそうな様子で柚くんを見た。

「は?」
「早めに親睦深めようと思うんだよね。今日、お前んち行くわ」
「はあ?」

事情が飲み込めない柚くんと私に、

「秋の人事」

桐生さんが小声で囁いた。

あ、…もしかして、柚くん配属先変わるのかな。え、…海外推進部? 桐生さんの部下?

なんか柚くんがものすごく嫌そうな顔で桐生さんを見ている。その視線を受け止めて、

「えー、橘も食べたいよな。柚くんの手料理」

桐生さんが私に振った。

「おい、…」

え。柚くんの手料理?

柚くんと目が合った。
次の瞬間、柚くんは観念したようにパソコンを閉じた。

「…帰るよ、あおい」

わー、顔に出てた? 出てた?
だって柚くんの手料理なんて食べたいに決まってる―――っ!

「…謀っただろ?」
「ははっ、まさか」

何だかんだ、柚くんと桐生さんて、相性がいいんじゃないかと思う。
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