セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

remo

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桐生さんが手早く私のパソコンを操作して仕事をシャットダウンする。
片腕で私をつかまえたまま、谷くんと一緒にフロアを出た。

「あの、…沙織さんは?」

どうにも罪悪感にさいなまれておずおず問いかけると、

「さあ?」

あっさりかわされた。

桐生さんは以前と変わらない。
私が柚くんを待っていることも、
沙織さんの気持ちも全部分かっているみたいだけど、

それでも、

「藤倉いない間に悪い虫がつくと困るしな」

とか、冗談のような本気のような、
どう反応したらいいのかわからないようなことを言って、
私のそばに居てくれる。

ずっと変わらずいつも、桐生さんは優しい。

時々、沙織さんからの呼び出し、…もとい、近況報告会があり、なんかもう、申し訳なさでいっぱいになるんだけど、
沙織さんも全部分かっているみたいで、

「人の気持ちは買えないからね。私だって好きな人には幸せでいて欲しいんだ」

そう言う横顔が切なくて、
でもやっぱり格好良くて、
この人たちには一生敵わないだろうなと思ったりする。

「離れている方が幸せなことだってあるのよ」

旭町団地妻ズの会でバーベキューパーティーが開催された時に、タコさんがそう言って私を慰めてくれた。

「毎日顔突き合わせてるとさ、嫌なところばっかり目に着いちゃうもの。あれもやってくれない、これもやってくれない」
「そうそう。洗剤くらい詰め替えろよ、ゴミ出しは各部屋のゴミ袋回収からがゴミ出しなんだよ」
「ごはん茶碗は水に浸して。鍋が噴いてたら火を止めて」
「排水溝が詰まるから髪の毛は自分で捨てて。ついでに男のロマンも捨ててトイレは座ってやって」

…慰めてくれていたはずなんだけど、マコさんが同調して日ごろのうっぷんが止まらなくなってしまった模様。

「亭主元気で留守がいいって奴かね…」

焼きトウモロコシを大喜びで食べているイクちゃんを見ながら、ナミちゃんが呟いた。

一緒にいることが当たり前になったら、そんな風に思うこともあるのかな。

柚くんに、「食べ終わったらちゃんとお皿片付けて」とか。
…いや。「片付けろ」って言われる方に10000円。

っていうか、そんな毎日、最高じゃないか―――っ

無事3歳を迎えたイクちゃんのおむつが外れたらしく、ナミちゃんは穏やかに見えたけれど、最近は「2人目妊活」で旦那さんと揉めている、という。

「そのためにやるのは嫌だとか、…元々やるのはそのためじゃんね⁉」

…悩みが高尚過ぎてコメントできない。

恋って難しい。悩みが尽きない。
難しいけど、一緒に居たいと思うのも居たくないと思うのも、未来のことで悩むのも、…全部柚くんがいい。

柚くんとなら、どんな時間も幸せだって思うんだ。
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