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「…あおい?」

柚くんがはっとしたように私をのぞき込む。

「ヒロヤクンの本気が見られて満足だからぁー、逮捕されてあげてもいいけどぉー」

遠くから、カズマさんの声がする。

「…ウサギチャンに早く解毒剤飲ませないとねー」

愉快そうな笑い声が響き、屈強な男性たちに引き連れられたカズマさんが近づいてくる。
私を抱きしめたままの柚くんに、

「ホント、ウサギチャンのことになると見境ないね、ヒロヤクン」

楽しそうに話しかけるカズマさんの声が聞こえる。

「ハワイに飛んでもらうはずだったのに、戻ってきちゃってさぁ。まあ、どっちにしても、ハワイに行かないとね。ボクの手伝いしてくれたら、解毒剤渡してアゲルからぁ―――」

タガが外れたようなカズマさんの笑い声。
朦朧とする意識の中で、

「(柚くん、ごめんね)…」

柚くんを窮地に追い込んでしまったことを悟る。

…ごめんね。
柚くんの役に立ちたかったのに。

私の声が聞こえたかのように、柚くんがもう一度優しく唇に触れた。
優しすぎて泣きたくなる。
柚くんが遠くに行ってしまいそうで怖い。

「(だいす、)き…」

世界一大切な柚くんの腕の中で、意識が途切れた。
あとはただ何もない暗闇に落ちていく。

…触れた瞬間。
柚くんだって分かった。

柔らかくて甘くて心地良い。
自然に口を開けてねだってしまう。
もっと。
深く。奥まで。いっぱい。

甘い舌に隅々まで満たされる。
身体の奥がとろけて揺れる。

髪の間に差し込まれた長い指が優しくなでる。
長いまつ毛が肌に触れて優しくくすぐる。

何か注がれて奥深くまで沁みわたる。
ずっと乾いていた私を温かく潤す。
内側から溢れるほど満たされて快感に震える。

もっと。

繰り返し何度も何度も触れてくれた。
温かい胸の中で優しく揺らしてくれた。

「あおい」

少し掠れた甘い声が泣きたいくらい優しく名前をつむぐ。
世界一大切なもののように私を呼ぶ大好きな声。匂い。全部。

「…ごめんな」

柚くん。
大好き。
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