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データを流出させたのは恐らくカズマさん。で、司令塔は氷室さん。

人の会社を陥れてなにが「大人」だ!
なにが「外堀」だ!
一寸の虫にも五分の魂。
絶対、後悔させてやるから!

でもヘルプデスクで確認できなかったわけだから、証拠になるようなものは残していないんだろうな。

だとしたら、…

「は? 藤倉グループへ連れていけ? なんでよ?」

沙織さんにくっついて藤倉グループへ行ってみよう。
とにかく敵を見てみないことには始まらないでしょう!

「いつでも力になるって言ってくれたじゃないですか」
「それは藤倉くんに言ったんであって、なんで桐生とデキてるあんたと、…」
「私、…」

沙織さんの目を見る。
美人の代名詞のような容姿で、出来る女性代表のような立ち振る舞い。
だけど、瞳の奥には、普通に恋するただの女の子がいる。

「桐生さんとは付き合ってません。好きな人がいるので、これからも付き合うことはないと思います」

もっと早く。ちゃんと説明すべきだったことをやっと言えた。

「…は?」

あっけにとられた顔をしていた沙織さんだったが、

「じ、…じゃあ、桐生はどうなるの!? 小悪魔気取りもいい加減にしなさいよ―――っ!?」

首を締め上げられた。

姐さん、ギブですがな、ギブ―――っ

なんで美人はこぞって力が強いかな。

「橘さん、僕たち分かり合ったよね? Yes,we can! だよね?」

恨めしそうな顔で見てくる加藤さんと課長に監査業務を任せ、私は有休をとって沙織さんと藤倉グループに向かった。

「…何の勝算もないのに別れたっていうの? 馬鹿じゃないの。ホント馬鹿じゃないの。でもそういう人なのよ!」

沙織さんはぶつぶつつぶやき、

「…小悪魔気取りめ―――っ!」

時折思い出したように私を手にかける。

姐さん、苦しいから。苦しいから―――っ

藤倉グループは都内一等地に自社ビルをドーンと構え、レンガ造りで噴水のあるおしゃれなエントランスで、受付ではヒューマノイドロボットが愛らしくお出迎えしてくれた。

「え、ええっと、監査は来週からでは?」

沙織さんに用件を告げられた経理担当者が慌てて飛んできたが、その狼狽ぶりには同情するものがある。
私だって監査関係者が突然来たらビビる。

「監査とは、作られた書類を眺めて終わるものではありません。日常のありのままの状態を確認することに意味があるんです」

姐さんがもっともらしいことを言って押し切った。

すみません。お邪魔します。
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