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藤倉紘弥。
苗字が変わったのは、美雨さんと結婚したからだと思っていた。
でも。
柚くん、結婚してないって言った。
『してねえよ、…まだ』
…うん。
ちょっと、いや、だいぶ引っかかるけど、それはひとまず置いといて。
『父が代表を務める会社』
そもそも、柚くんが藤倉グループと関わったのは。
もしかして。
「あ~ああ~、再婚なんて儚い夢~、夢見た俺のばかやろう~」
「それだ!」
調子っぱずれの加藤さんの鼻歌に食いついた。
加藤さんが小さい目を瞬かせて丸顔をきょとんとさせる。
結婚したのは柚くんじゃなくて、柚くんのお父さんだったんじゃ…
「…なんだ、そうかぁ…」
「…そうなんです。実はちょっとだけ夢見ちゃったりしちゃったりとか」
「そうだったのか…」
「今更ですよね、てへ」
「いえ、アリです!」
「え、アリですか」
「Yes, we can」
…ん?
気がつけばいつの間にか加藤さんと何かが通じ合っていた。
「それでは、また明日」
本日の業務が終了し、なんだか元気を取り戻した加藤さんが、退社を渋っている沙織さんを強引に連れて帰って行った。
会議室のドアからお見送りしていると、一瞬昨日の恐怖がよみがえってきたけれど、振り返ると会議室には、
「…なに?」
柚くんがいる。
「…何でもないです」
柚くんがいれば怖くない。
というか、柚くんがいれば埃っぽい会議室だって秘密の密室。
よくあるじゃないですか。
オフィスラブの恋人同士が会議室やらエレベータやら資料室やらで、…
うううわわわあああ―――――
「…置いてくよ?」
とっくに片づけを済ませた柚くんが書類を持って通路から見ていた。
「…うぇい」
急いで後を追いかける。
脚の長さゆえか柚くんはどんどん先に行ってしまう。
閉まりかけのエレベータに慌てて飛び乗った。
まあ、オフィスラブの恋人同士っていうのに、そもそも該当しないのかもしれない。
エレベータで、柚くんの横顔を盗み見る。
滑らかな肌色。形のいい鼻。長いまつ毛。綺麗な瞳。
…やばい。いつ見ても血圧が上がる。
…柚くん。
キス、してくれたけど。
私と柚くんは。
私:柚くん大好き。
柚くん:俺のこと好きだろ。で、別の人と結婚。
あれ? これってつまり。
世間でいうところの。
2番目(セカンド)!?
え? セカンドラブってそういうこと―――!?
苗字が変わったのは、美雨さんと結婚したからだと思っていた。
でも。
柚くん、結婚してないって言った。
『してねえよ、…まだ』
…うん。
ちょっと、いや、だいぶ引っかかるけど、それはひとまず置いといて。
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そもそも、柚くんが藤倉グループと関わったのは。
もしかして。
「あ~ああ~、再婚なんて儚い夢~、夢見た俺のばかやろう~」
「それだ!」
調子っぱずれの加藤さんの鼻歌に食いついた。
加藤さんが小さい目を瞬かせて丸顔をきょとんとさせる。
結婚したのは柚くんじゃなくて、柚くんのお父さんだったんじゃ…
「…なんだ、そうかぁ…」
「…そうなんです。実はちょっとだけ夢見ちゃったりしちゃったりとか」
「そうだったのか…」
「今更ですよね、てへ」
「いえ、アリです!」
「え、アリですか」
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…ん?
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「…なに?」
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柚くんがいれば怖くない。
というか、柚くんがいれば埃っぽい会議室だって秘密の密室。
よくあるじゃないですか。
オフィスラブの恋人同士が会議室やらエレベータやら資料室やらで、…
うううわわわあああ―――――
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とっくに片づけを済ませた柚くんが書類を持って通路から見ていた。
「…うぇい」
急いで後を追いかける。
脚の長さゆえか柚くんはどんどん先に行ってしまう。
閉まりかけのエレベータに慌てて飛び乗った。
まあ、オフィスラブの恋人同士っていうのに、そもそも該当しないのかもしれない。
エレベータで、柚くんの横顔を盗み見る。
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…やばい。いつ見ても血圧が上がる。
…柚くん。
キス、してくれたけど。
私と柚くんは。
私:柚くん大好き。
柚くん:俺のこと好きだろ。で、別の人と結婚。
あれ? これってつまり。
世間でいうところの。
2番目(セカンド)!?
え? セカンドラブってそういうこと―――!?
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