セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

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『あの時より、ちゃんと抱いてやるよ?』

心臓を一突き。

柚くんに見つめられたら。
時間も場所も年齢も。
立場も義務も責任も。
何もかもが消えてしまう。

柚くんでいっぱいになって
柚くんのことしか考えられなくなる。

なんて。
言ってる場合か!?
この人だれ︎!?
柚くんにSっ気とか聞いてないんですけど―――っ

動揺に動揺を重ねた理性あおいが騒ぎ出すのを
乙女あおいが一蹴でねじ伏せ、大暴走。
勝手に口を動かした。

「…はい」

いや、ちょっと待て!!
どんだけ素直なんだ、自分!

柚くんは一瞬目を見開いてから、楽しそうに笑った。
私の大好きな。
無邪気な、子どもみたいな笑顔。

「よくできました」

柚くんが長いまつ毛を伏せる。
柔らかい髪が額をくすぐる。
きめ細かい綺麗な顔が近づく。

柚くんの桜色の柔らかな唇が、…

「ちょっ、ちょっと待って!!」

理性あおい、奇跡の大反撃で柚くんを押しのける。

「…なっ、何言ってるの、柚くんなんて! 結婚してるくせに! あんな可愛い奥さんがいるくせに!」

そうだよ。
大事なこと忘れてたよ。

何かまた涙が込み上げてきた。

そうだよ。
私がどれだけ…

『彼も前に進んでる』
『奥様ですか?』『ええ、まあ』
『あんたが結婚相手!?』
『紘弥はあたしと結婚するんです!』

柚くんには奥様がいるから、
だから。
忘れようとして、忘れられなくて。
消そうとして、消せなくて。
泣いても泣いてもどうにもできなくて。
だけど、それでも。
どうしても…

「してねえよ」

ちょっと傷ついたみたいな顔で柚くんが私を見る。

してない!?
え、なんで? えっ、えっ、なんで?
え? 結婚してない!? してない―――!?

人生本気でやり直そうかと思うほど動揺して、完全に固まってしまった私の耳に、

「…まだ」

柚くんのつぶやきが聞こえた。

まだ!?
え? まだって何?
結婚してる? してない? する? しない?
まだって何―――――っ!?

混乱を極めている私を見て、柚くんが少し意地悪に口の端をもたげた。

「…俺が結婚したと思って悲しかった?」

ちょっと、この人だれ!?
なにこのSっ気全開モード!
悲しかったに決まってるじゃ―――――ん!!

「柚くんの、ば、…っ」

つかまれたままの両手を再び振り上げた私を

「あー、はいはい」

簡単に制して、柚くんはその桜色の唇でほんの一瞬私に触れた。

「…ホントばか」

唇に、柚くんを感じた。

「言ったのに。…俺はお前がいいって」

柔らかくて甘い。
濡れてとろける。
震えるほど優しい。
泣きたいくらい愛しい。

「…お前じゃなきゃ嫌だって」

柚くんが、その綺麗な瞳でまっすぐに私を見て、長い指で涙の跡をなぞる。

泣きたいくらい優しく、
とろけるくらい甘く、
世界一大切なもののように、

柚くんがもう一度私にキスをした。
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