セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

remo

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「では今日はここまでにしましょう。どうもお疲れさまでした」

加藤さんの声に、一同そろって頭を下げる。

終わった―――――っ

不安しかなかった会計監査。
とりあえず初日は無事クリア。
まあ直しはいっぱいあるんだけど、ひとまず終わったから良し。
後の3日間もこの調子でいけば何とかなるかな。

監査法人の皆様も長居する気は毛頭ないらしく、いそいそと帰り支度をしている。

沙織さんも恵那さんも、ウソかホントか反応に困ることはあったけど、だからと言って何事も起こらず、居心地が悪いだけで終わってよかった。

「それじゃあ、橘さん、失礼します」

ドア口に立ち、一礼して会議室を出て行く皆様をお見送りする。
通路の向こうに後姿が見えなくなってから、おもむろにドアを閉めた。

あー、良かった。

ほっとしてそのままへたり込み、ちょっとだけ休んでから片付けよう、と思っていたところで、外からドアノブが回った。

「忘れ物しちゃったぁ、ウサギチャン」

素早く中に入ってきた恵那さんが、後ろ手に会議室のドアを閉める。
続いて、鍵のかかる音がした。

心臓が凍りついた。
床に座り込んだまま、後ずさる。が、そんな微々たる動きは瞬時に跳躍してきた恵那さんに封じられた。

黒い革手袋をはめた恵那さんは、私に馬乗りになり、両腕を頭上に拘束すると

「い~い眺め」

口元に不気味な笑みを刻みながら、舌なめずりをする獣そのものに舌でゆっくりと唇をなぞった。

革手袋で乱暴に私の顎をつかむ。

「ボクねぇ、ヒロヤクンのこと嫌いなんだよねーぇ。平然と何でも手に入れちゃって、そのくせ何にも興味ないみたいにスカしちゃってさー」

恵那さんの手が首に降りてくる。指先で首筋をなぞられて、恐怖と気持ちの悪さで吐き気がした。

「あのアタマ空っぽのおヨメさん? いいこと教えてくれたよねぇ。こんなところにヒロヤクンのアキレス腱があったなんてーぇ」

下から喉を締め上げられて、息が出来なくなる。苦しくて、生理的な涙が込み上げる。

「アンタをめちゃくちゃにしたら、どんな顔するかなーぁ」

恵那さんが狂ったような甲高い笑い声をあげた。
声は違っていたけれど、倉庫の笑い声と同じに聞こえた。

「そんな大層な中身とも思えないけどぉー」

恵那さんの手が首から離れ、胸元にかかった。
気道が空気を求めて音を鳴らし、苦しくて咳き込んだ。

恵那さんがブラウスのボタンを外すと全身に鳥肌が立って、逃れようと必死でもがいた。

…柚くん!

多分、今、柚くんは来ない方がいいのに。
この人の目的は柚くんなのに。

柚くんしか思い浮かばなかった。
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