セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

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目が合うと一瞬で値踏みされ、声を出さずに笑われた、…ような気がする。

会計監査の概要と資料の確認など、1時間余り打ち合わせをして、その日は終了となったが、その間ずっと沙織さんに見られている気がしていたたまれなかった。

ドア口に立ってお見送りをしながら、明日からの会計監査週間を思って胃が痛くなる。内心ため息しか出ない私の耳に、

「よろしくね、ウサギチャン」

すれ違いざま、アシスタント男性の愉快そうな声が響いた。



「橘さん、この付箋のところ、領収書と帳簿の日付もしくは金額にずれがあるので確認してください」
「…はい」

「橘さん、この未入金部分の詳細資料見せて下さい」
「…はい」

「これデータ管理の訂正が必要だね。ファイル、データで送ってもらえる?」
「…はい」

会計監査週間。
私は監査法人の皆様とほぼ会議室に缶詰めになる。

もともと至らない点をご指摘いただくものだけど、1年間の業務内容をテストされているみたいで身の置き所がない。

そうでなくとも。
沙織さんのきびきび具合が半端なくて、自分が無能に思えてくるし。
アシスタントの恵那さんは得体が知れなくて、なんか怖いし。

『ウサギチャン』

昨日、それを聞いた時は、停電の倉庫に閉じ込められた恐怖がよみがえって全身が震え、誰もいない会議室に縮こまって隠れた。ようやく震えがおさまってから恐る恐るドアを開けると、通路にはもう誰もいなかった。

空耳? 気のせい? ふざけただけ?

今朝は皆さん、特に変わった様子もなく粛々と業務が進行している。
恵那さんに至っては一番親しみやすい雰囲気さえ出している。

気にし過ぎ、なのかなぁ。

「お昼ですね。どこに行きますか」
「あ、…はい」

昼食休憩は監査の皆様をランチにお連れするのが恒例になっている。
課長がやれよ、と言いたいが、昨日腹痛で早退し、今日は体調不良で休暇をとっている。

…監査週間まるまる休む気じゃあないでしょうね? …大いにあり得る。

胃が痛い。

会社を出て少し歩いた中華料理店へご案内する。
ホテルの一角で、夜はそれなりの雰囲気とお値段で本格中華が味わえるらしいけれど、ランチはもう少しカジュアルで、サラダやスープ、チョイスできる1品やチャーハン、デザートなどのメニューになっている。

「身体の中からキレイになる、薬膳料理を取り入れてるんですって。いいわね~」

沙織さんのお気に召したようで、何よりです。

「女性はそういうの、好きだよね。僕は中華と言えばラーメンしか浮かばないけどなぁ」
「だからダメなんですよ、加藤さんは。この前健診で引っかかったでしょ」
「そうなんだよ、気をつけないと。その点、恵那くんは優秀だよね。身体鍛えてるんだって?」
「…まあ、いざという時のために」

テーブル席に着いて話が弾んでいる様子の皆さんですが、恵那さんの視線が絶えず注がれている気がして落ち着かない。
結局のところ、どこにいても居心地が悪い。
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