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「橘くん。会議遅れるよ」
「……」

「補佐、業者さんが見積もり持ってきてますけど」
「……」

「落差激しいなー」
「清水さん、オブラート」

午後のフロアは平常通りで、警備が停電の原因を調べているとは聞いたものの、倉庫の一件が夢だったような気さえしてくる。

でも。

『見-つけた、ヒロヤクンのアキレス腱』

倉庫のおかしな人物は、柚くんのことを知っているみたいだった。

斜め向かいの空席のデスクをちらりと見る。
柚くんは怒涛の早さで業務をこなして早退した。

何にも教えてくれないけれど、たくさんの何かを背負わされているような気がする。

…柚くんのために出来ることがあればいいのに。

倉庫で、「私に出来ることがあったら何でもする」と言ったら、柚くんに優しく頭を小突かれた。

『…ばかタヌキ』

タヌキ派の柚くんに信楽焼の置物をプレゼントしようかなぁ。
…いや、何か違う。

柚くんみたいに料理が出来たら。
身体に優しい野菜料理とか作ってあげられるのに。

取り柄がなくて、ため息しか出ない。

…せめて、仕事の負担はかけないようにしたい。

「清水さん、旅費の精算今日中だからね。締め切り厳守ね」
「…まさかの鬼で復活」
「清水さん、ドンマイです」

終業後。
ちょっとスマートフォンで調べものをしていたら、桐生さんに見つかった。

「橘、また遅くまで仕事して、…って信楽焼野菜レシピ? お前何調べてるの?」

わー。ごめんなさーいっ

桐生さんに若干呆れられながら会社のエントランスを出たところで、

「すみません、お話があります!」

なんだか思い詰めた感じの美雨さんにつかまった。
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