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郊外のどこまでも開けた大地。
草むらを駆け抜ける強い風。
明かりの着いた平屋建ての小屋。
翼を広げるセスナ機。
まだ沈み切らない夕陽がフェンスの向こうから山並みと空をオレンジ色に染める。
桐生さんに連れられて、スカイダイビングクラブのエアポートにやってきた。
「すご~い、あたし、初めてです~」
「俺も!」
清水さんと谷くんが説明を受けながらワクワクしている。
桐生さんの知り合いがスタッフにいて、特別にナイトダイビングを開催してくれるという。
「…私も初めて。怖いな、颯人」
結子さんが可愛らしく桐生さんにすり寄ると、
「お前は地底まで落ちていけ」
柚くんがひそやかに毒づいていた。
…なんか、昔の面影を見たような。
インストラクターの皆さんと一緒に搭乗し、夕焼けの空に飛び立った。
「じゃあ、跳ぶのはこのくじの順番で。今一番伝えたいことを叫びながら跳ぶこと」
桐生さんからくじが配られる。
セスナ機が雲をくぐって上空へ進んだ。
都会の街が眼下に広がる。
暮れかけた街には色とりどりの明かりが灯り、宝石を散りばめたような景色を一望できた。
「あおい。誕生日、おめでとう」
桐生さんが私の頭に手を置き、優しくなでた。
くじの番号は6。私が一番最後。
「…私だって、幸せになりたい―――っ」
1番を引いたらしい結子さんがものすごい形相で絶叫しながら跳んでいった。
「謙虚さを持て」
「誠実に生きろ」
「…地底から出直せ」
風がうなる。上空のひんやりした空気が肌を刺した。
「チーフ、お嫁にもらってくださーい」
「橘補佐、ついていきますー」
清水さんと谷くんが次々と叫びながら跳んでいく。
「下で待ってるから」
次は桐生さん。私に優しく微笑みかけると、
「まだ離さないから―――」
飛び立って行った。
桐生さん。なんでそんな優しいかな。
桐生さんの大きなやさしさに包まれる。
涙が込み上げそうになって、空の澄んだ空気とまばゆい夜景を噛みしめた。
こん。
頭を小突かれて見ると、柚くんのきれいな瞳が真っすぐにこっちを見ていた。
「じゃ、行きますよー」
インストラクターさんの合図で、柚くんが宙に舞う。
「…逃げんなよ―――」
柚くんの少し掠れた声が耳にこだました。
柚くん。
パラシュートの影が夜の空に浮かぶ。
どこまでも愚かな私は。
やっぱり、
柚くんの言葉に意味を探してしまう。
「行きましょうか」
インストラクターさんの合図に頷いて、空に躍り出た。
涙が一筋、空に散る。
この叫びは、多分地上には届かない。
一生口に出せなかったかもしれない。
「…柚くん、大好き―――――」
耳元で風がうなる。
身体が押し上げられて、くすぶった気持ちはすべて空中に飛んでいった。
橘あおい。30歳。
大空の中、両手を広げて、生まれて初めて愛を叫んだ。
草むらを駆け抜ける強い風。
明かりの着いた平屋建ての小屋。
翼を広げるセスナ機。
まだ沈み切らない夕陽がフェンスの向こうから山並みと空をオレンジ色に染める。
桐生さんに連れられて、スカイダイビングクラブのエアポートにやってきた。
「すご~い、あたし、初めてです~」
「俺も!」
清水さんと谷くんが説明を受けながらワクワクしている。
桐生さんの知り合いがスタッフにいて、特別にナイトダイビングを開催してくれるという。
「…私も初めて。怖いな、颯人」
結子さんが可愛らしく桐生さんにすり寄ると、
「お前は地底まで落ちていけ」
柚くんがひそやかに毒づいていた。
…なんか、昔の面影を見たような。
インストラクターの皆さんと一緒に搭乗し、夕焼けの空に飛び立った。
「じゃあ、跳ぶのはこのくじの順番で。今一番伝えたいことを叫びながら跳ぶこと」
桐生さんからくじが配られる。
セスナ機が雲をくぐって上空へ進んだ。
都会の街が眼下に広がる。
暮れかけた街には色とりどりの明かりが灯り、宝石を散りばめたような景色を一望できた。
「あおい。誕生日、おめでとう」
桐生さんが私の頭に手を置き、優しくなでた。
くじの番号は6。私が一番最後。
「…私だって、幸せになりたい―――っ」
1番を引いたらしい結子さんがものすごい形相で絶叫しながら跳んでいった。
「謙虚さを持て」
「誠実に生きろ」
「…地底から出直せ」
風がうなる。上空のひんやりした空気が肌を刺した。
「チーフ、お嫁にもらってくださーい」
「橘補佐、ついていきますー」
清水さんと谷くんが次々と叫びながら跳んでいく。
「下で待ってるから」
次は桐生さん。私に優しく微笑みかけると、
「まだ離さないから―――」
飛び立って行った。
桐生さん。なんでそんな優しいかな。
桐生さんの大きなやさしさに包まれる。
涙が込み上げそうになって、空の澄んだ空気とまばゆい夜景を噛みしめた。
こん。
頭を小突かれて見ると、柚くんのきれいな瞳が真っすぐにこっちを見ていた。
「じゃ、行きますよー」
インストラクターさんの合図で、柚くんが宙に舞う。
「…逃げんなよ―――」
柚くんの少し掠れた声が耳にこだました。
柚くん。
パラシュートの影が夜の空に浮かぶ。
どこまでも愚かな私は。
やっぱり、
柚くんの言葉に意味を探してしまう。
「行きましょうか」
インストラクターさんの合図に頷いて、空に躍り出た。
涙が一筋、空に散る。
この叫びは、多分地上には届かない。
一生口に出せなかったかもしれない。
「…柚くん、大好き―――――」
耳元で風がうなる。
身体が押し上げられて、くすぶった気持ちはすべて空中に飛んでいった。
橘あおい。30歳。
大空の中、両手を広げて、生まれて初めて愛を叫んだ。
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