セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

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「桐生さん、今日はありがとうございました」

駅から少し歩いた隠れ家的な豆腐料理のお店で、桐生さんと隣り合って座る。正面に夜の庭園が見え、室内は照明が絞られて落ち着いた空間が広がっていた。

「連れ回して、疲れてない？」

桐生さんがいたわるように私の頭に手を置く。

「とんでもない。スーツの弁償にまで付き合ってもらって、本当に助かりました。紳士物ってよくわからないから」

「んー、まあ、敵情視察？」

桐生さんが小首をかしげて屈託なく笑う。えくぼが可愛い。

…敵情視察？　

前菜、アボカド豆腐、湯葉のお刺身。
おからのサラダ、薄揚げの味噌田楽、天ぷら盛り合わせ。
香味野菜蒸し、豆腐と牛肉の煮物、あんかけ湯葉ご飯。
豆乳のチーズケーキ。

季節の味が凝縮された豆腐料理が次々と並べられる。
そのどれもが驚くほど美味しい。

「で、実家はどうだった？」

日本酒を傾けながら、桐生さんが私をのぞき込んだ。

「俺と付き合っていいって？」

な。
何もかも見透かされている！

豆腐料理を堪能して、緩んでいた気持ちが一気に引き締まる。
桐生さんの恋愛スキルが高すぎて太刀打ちできない。

「…桐生さん、奥様いますよね？」

ふて腐れた気味に白旗を上げると、

「いません」

桐生さんは楽しそうに両手を上げた。

「え…」

桐生さんを見つめたまま、完全に固まってしまった。

え？　あれ？　あれ、だって、…

「去年別れた。忘れられない人がいたから」

桐生さんが、するりと私の髪をなでた。
真摯な眼差しが胸を射る。

「お前が好きだよ、橘」

切なげに目を細めた桐生さんの端正な顔がゆっくりと近づいて、
一瞬おでこに熱い唇が触れる。

「予約、な」

耳元で甘い吐息がささやいた。