セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

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「…橘。お前、仕事し過ぎ」

頭の上に手の重みを感じて我に返った。
パソコンの画面を見つめながら、白昼夢を見ていたようだ。

あの時胸の奥に灯った小さな明かりは、汚い私が吹き消してしまった。

「ほら、帰るぞ」

たくましい腕に横抱きにされて椅子から立ち上がる。

「え、って、…ええっ、…桐生さん！？」

桐生さんは床に崩れ落ちそうな私を片腕で支えながら、もう片方の手でパソコンを操作する。

パソコンのブルーライトが桐生さんの整った顔を照らす。
細められた目尻が優しい。

フロアには、ほとんど人が残っていなかった。
外は真っ暗で、隣り合うオフィスビルの群れがそれぞれに明かりを放っている。

「す、すみません、桐生さん」

眼鏡をずり上げ、慌てて体勢を立て直す。

デスクの上に缶コーヒーが置かれていて、
『休んで下さいね』
付箋が付いていた。

…谷くん。

何だかいろいろやらかしたような気がするけれど、
お昼休みから今までの記憶がおぼろげだ。

「橘。豆腐食べに行こう」

斜めに振り向いた桐生さんは、微笑むと頬に人懐こいえくぼができる。
いまだ片腕をほどいてもらえず、桐生さんの顔が近い。
無意識に息を止めうつむくと、桐生さんの匂いと温かさに包まれているのを一層強く感じた。

今日は朝からほとんど何も食べてない。
ここぞとばかりに空腹が豆腐を後押しした。

「わかりました。今日は私にお任せください！」

そうだった。
独りで、会社と家を往復するだけの毎日。
昨日さらした醜態のお詫びをするくらいのお金はある、はず。

「俺、あっちで生活してから、時々無性に豆腐が食べたくなるんだよね」

桐生さんは楽しそうに、大きな手で私の頭を優しくなでた。

OK！どんとこい、豆腐。

意気揚々とエレベータに乗り込んだところで、

「…結子さん！」

上階から降りてきた常務と結子さんに遭遇した。