セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】

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「橘主任、お昼、お先でーす」

明るい清水さんの声に我に返ると、既にフロアにはほとんど人がいなかった。

平日昼過ぎ。オフィスビル。13階。

眼鏡を外して、乾いた眼を瞬く。
パソコン視過ぎ。
酷使し過ぎた眼はコンタクトが入らず、最近はもっぱら眼鏡。

お昼は、給湯室隣の控え室で、ひそかにコンビニのおむすびを食べる。

「あ、橘さん。またシャケおにぎり?渋いね~。花嫁資金貯めてんのかな~?」

セクハラ気味な真鍋部長のお昼チェックは笑顔でスルー。

控室に置かれたランチテーブルの隅を陣取る。
テーブルに座るのは黙々と食事を詰め込む冴えない社員ばかり。

若い子たちとランチ巡りをしたり、
社食で社内交流をしたりする気力はもうない。

コンビニおむすび上等。野菜ジュース最高。ぼっち飯バンザイ。

1人暮らし歴10年。
最近の関心事はマンションの購入。
橘あおい。赤菱商事経理部勤務。
来月30歳になる。


「あ、あおちゃん。発見~」

野菜ジュースをすすっていたら、秘書課の結子さんがひょっこり現れた。

「結子さんっ」

自然と声が弾む。
美しくて仕事が出来ておまけに人柄も可愛い結子さんは私の憧れ。

「常務にね、お土産貰ったんだけど、ここのお菓子、あおちゃん好きだったから、一緒に食べようと思って」

向かいに腰かける結子さん。

幹部役員室は上階にあるから、秘書課の結子さんは普段、この階には現れない。

「皆さんもいかがですか」

女神降臨に、狭い控室が突然華やぐ。
美人は人類を勇気づける。
微笑みかけられて、おじさんたちは一斉に鼻の下を伸ばす。

どんなに冴えなかろうと、背中を丸めて下を向いていようと、
人間は相手を全身で感じているものなのだ。

「でね、あおちゃん」

私に向き直って、いささか興奮気味に結子さんが話し出す。

「帰ってくるの」

美しい結子さんが可愛いらしくはにかむ。
結子さんは私より年上だけど、この自然な女性と少女の融合が幅広い世代から愛される所以だと思う。

「颯人」

その名前だけ、とても大切に抱きしめる結子さんは、クラクラするほど可愛い。

「来月、NYから帰ってくるんだって。またここで一緒に働けるよ。どうしよう~、あおちゃん」

両手を握りしめてもだえる結子さん。
可愛い過ぎて、こっちまで赤面しそう。

「良かったですね、結子さん!」

思わず結子さんの両手を上から握ると、結子さんはこっくりとうなずいた。

「颯人」とは、
結子さんの同期で、私が入社した頃、同じ課の先輩だった、
桐生颯人きりゅうはやとさん。

仕事が早くて指示もわかりやすくて、優しくて頼りになって、男女問わず尊敬されていた。
あまり仕事が出来るので、海外推進部に抜擢されて、5年前にNYに飛んだ。

結子さんは、入社以来、ずっと桐生さんに片思いしている。

多分、一生結婚しない、と結子さんは言う。

…桐生さんはもう既に結婚しているから。
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