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Ⅱ.有輝

19.

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翌朝一番で八丈島空港に行った。
まぶしいくらいに晴れている。

あかり。

待っていて。
お前に会いに行くから。


もう一度だけ
君の瞳に映る
僕にかけてみたくて

もう少しだけ
君のそばにいたい
本当はいつでも
君のそばにいたい


もしも、あかりが俺を必要としてくれるなら、
傷つけることになるかもしれないけれど、
絶対に離れない。

船で一晩の距離は航空機だと1時間足らず。
それでも、羽田空港の雑踏を抜けるのがもどかしかった。

高いビルもごった返す人波も濁った空気も灰色の空も
人を荷物のように押し込む電車も、…
何も変わらないようでいて、何もかも違って見えた。

『…やっと、会えたか』

俺があかりを見つけた時に、慎弥さんはそう言った。
目に映るものが180度違って見えるような出会いがあるなら
確かにあきらめるのは、まだ早いのかもしれない。



高校の校門の前に立つのは、何日ぶりだろう。
とっくに授業が始まっているからか、校内は静まり返っている。
部外者にはどこかよそよそしささえ感じさせる。

石造りの校門に重々しく彫り刻まれた学校名。
正面玄関までの石畳。中庭にしつらえられた花壇。
校庭の大銀杏。サッカーゴール。並べられたタイヤ。
体力測定に使う砂場。奥に連なる部室棟。
毎日通っているときには、気に留めることのない風景。

当たり前のように過ごして気づかないまま通り過ぎてしまうけれど。
この景色を見られるのは、幸運なことに違いない。

校門を抜ける前に息を整えた。
校舎を見据えながら、足を踏み出した。

あかり。

校舎を渡ってきた風が俺を吹き抜けていく。
湿った砂と初夏の匂いがした。
太陽の光がまぶしくて、目を細めながら見上げた校舎の向こうに、八丈島で見たのと同じ青空が広がっていた。
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