【完結】君への祈りが届くとき

remo

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Ⅱ.有輝

05.

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4月の終わりに、学年別の校外学習があった。
1年生は、富士山付近で日帰りキャンプ体験をするらしい。

学校行事に参加するなんて、何年振りだろう。
クラスの輪を乱しているのは自覚しているし、薬を変えてからますます起きるのが億劫で、正直だるくて仕方ない。
でも、あかりは絶対参加する。

朝の集合で、あかりがA組の点呼を取っていた。
校外学習の係りになったようだ。

「らしい」な、と思ったら、楽しくなってきた。

「有輝くん、隣いい?」
「ポッキー食べる?」

なんでバスはクラスごとなんだろう、と思っていたら、
隣が妙に賑やかになっていた。

「…どうも」

ポッキーなんかかじったりして、俺は自分で思うより浮かれているのかもしれない。

「きゃあ~」
「か、かっこいい…」
「ズリーよ、ポッキー1本で女子がきゃあきゃあ」
「あきらめろ、素材が違いすぎる」

担任が今日の注意やら説明をしているのに、
俺の周りは騒がしい。

窓の外を眺めると、あかりの乗っているバスが見えた。
…アイツ、カレー作るのとか上手そう。

男子の役割は薪集めで、林の中を往復した。

空手の合宿を思い出す。
稽古で山野を走り回って、宿舎でみんなでご飯を食べた。
おかわりの杯数を競ったり、誰の寝相が一番悪いか言い合ったりした。
あの頃、空はいつも青かった。

かまどに火を起こして、手分けしてカレーを作る。
あかりが何かを運んだり配ったり、忙しそうに動き回っているのが遠くから見えた。

カレーを食べたら、片づけをして、オリエンテーリング。
班ごとにゴールを目指して歩き出す。

「ここ、さっき通らなかった?」
「地図、逆さまなんじゃねーの?」
「ねーねー、有輝くん、どっちだと思う?」
「とりあえず、移動は走ろうぜっ」

俺の班はテンションが高めらしく、
男子も女子も妙に盛り上がっていた。

林の中を歩くと、ゆっくり息ができる。
どっかであかりの班に会わないかなと思って探したけど、
全然見当たらなかった。

ゴール付近で、A組の担任が風に紙を飛ばされていた。
俺の近くにも落ちたので拾ってみると、
今日の行動計画のようだった。

「鳴瀬、ありがとな。いや~、風、強いな~」

A組の担任が走ってきたので手渡した。

平静を装えたかどうかわからない。
ちらっと見ただけのプリントの文字が脳裏に焼き付いている。

『校外学習係 A組 諏訪あかり 連絡先 090-****-****』

これは、天使の誘いか。
悪魔の誘惑なのか…
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