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Ⅰ.あかり
06.
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「なぁ、あんた、マサトの彼女なんだってな?」
「マサト、猫っ可愛がりしてるらしいじゃん」
その日、図書室にやってきたのは、鳴瀬ではなかった。
見たことのない3年生の男子が3人、背後から私を囲む。
「ちょっとさぁ、俺たちと一緒に来てよ」
嫌な感じの笑い声。
やばいと思って、逃げ出そうと思ったときはすでに遅く、
後ろから口をふさがれて、身体を拘束された。
図書室内に人気はない。
必死にもがく私の抵抗なんて、まるで物ともせず、奥の書庫まで引きずり込まれた。
「怖くないよ~」
「俺たち優しいし~」
背後から口と腕を押さえつけられ、前から足の上に乗りかかられた。
身体を動かすことができず、声も出せない。
必死で首を振ると、髪をつかまれて、一人が至近距離に顔を近づけてきた。
「手間かけさすんじゃねえよ」
身体中を恐怖が駆け巡る。
この人たち、本気だ。
や、だ…!
震えが止まらず、涙がにじむ。
制服のブラウスがボタンごと引きちぎられた。
「きれいな身体してるじゃん」
「けっこう胸あるんだ」
「マサトくんとはどんなふうにヤッてるの~?」
乱暴に胸をつかまれる。
下着がずらされて外気が触れる。
やだ。
やだ、やだ…!
「へ~、可愛いピンク」
男たちが舌なめずりをして、2人がかりで胸に触れる。
ざらついた手の感触に怖気が走る。
吐き気が込み上げるけれど、恐怖で身体が動かない。
「おい、早くして、俺にもやらせろよ」
背後の男が苛立たし気な声を出す。
怖くて悲しくて気持ち悪くて、涙があふれる。
今この瞬間に気を失えたらいいのに。
いっそ、舌を噛み切ろうかと思ったとき、
「うわぁっ!」
突然、身体から男たちの重みが消えた。
涙の膜の向こうに見えたのは、…
「なんだよ、お前!」
先輩たちを容赦なく殴り倒しているオレンジ色の頭。
「お、まえっ、1年のくせに生意気なんだよ!」
狭い書庫に、罵倒と殴り合う音、耳をふさぎたくなるような肉体や骨がぶつかり合う音が響き渡る。
3年生3人を相手に、そのきれいな顔を歪め、冷たく目を光らせて、鳴瀬が足とこぶしを振り回していた。
恐怖に身をすくめ、ただ泣いているだけの無力な私の前に、先輩たちが転がされる。
『傷害事件を起こして中学を転校…』
「こいつ、あれだ!少年院帰りとかいう1年の鳴瀬だよっ」
「くっそ、覚えてろよっ!!」
3年生が書庫に血の跡を残したまま、身体を引きずるようにして図書室を後にした。
それを見送った鳴瀬が、荒い息をつきながら私を見る。
情けなくて恥ずかしくて、消えてなくなりたい。
こんな姿、鳴瀬に見られたくない。
「マサト、猫っ可愛がりしてるらしいじゃん」
その日、図書室にやってきたのは、鳴瀬ではなかった。
見たことのない3年生の男子が3人、背後から私を囲む。
「ちょっとさぁ、俺たちと一緒に来てよ」
嫌な感じの笑い声。
やばいと思って、逃げ出そうと思ったときはすでに遅く、
後ろから口をふさがれて、身体を拘束された。
図書室内に人気はない。
必死にもがく私の抵抗なんて、まるで物ともせず、奥の書庫まで引きずり込まれた。
「怖くないよ~」
「俺たち優しいし~」
背後から口と腕を押さえつけられ、前から足の上に乗りかかられた。
身体を動かすことができず、声も出せない。
必死で首を振ると、髪をつかまれて、一人が至近距離に顔を近づけてきた。
「手間かけさすんじゃねえよ」
身体中を恐怖が駆け巡る。
この人たち、本気だ。
や、だ…!
震えが止まらず、涙がにじむ。
制服のブラウスがボタンごと引きちぎられた。
「きれいな身体してるじゃん」
「けっこう胸あるんだ」
「マサトくんとはどんなふうにヤッてるの~?」
乱暴に胸をつかまれる。
下着がずらされて外気が触れる。
やだ。
やだ、やだ…!
「へ~、可愛いピンク」
男たちが舌なめずりをして、2人がかりで胸に触れる。
ざらついた手の感触に怖気が走る。
吐き気が込み上げるけれど、恐怖で身体が動かない。
「おい、早くして、俺にもやらせろよ」
背後の男が苛立たし気な声を出す。
怖くて悲しくて気持ち悪くて、涙があふれる。
今この瞬間に気を失えたらいいのに。
いっそ、舌を噛み切ろうかと思ったとき、
「うわぁっ!」
突然、身体から男たちの重みが消えた。
涙の膜の向こうに見えたのは、…
「なんだよ、お前!」
先輩たちを容赦なく殴り倒しているオレンジ色の頭。
「お、まえっ、1年のくせに生意気なんだよ!」
狭い書庫に、罵倒と殴り合う音、耳をふさぎたくなるような肉体や骨がぶつかり合う音が響き渡る。
3年生3人を相手に、そのきれいな顔を歪め、冷たく目を光らせて、鳴瀬が足とこぶしを振り回していた。
恐怖に身をすくめ、ただ泣いているだけの無力な私の前に、先輩たちが転がされる。
『傷害事件を起こして中学を転校…』
「こいつ、あれだ!少年院帰りとかいう1年の鳴瀬だよっ」
「くっそ、覚えてろよっ!!」
3年生が書庫に血の跡を残したまま、身体を引きずるようにして図書室を後にした。
それを見送った鳴瀬が、荒い息をつきながら私を見る。
情けなくて恥ずかしくて、消えてなくなりたい。
こんな姿、鳴瀬に見られたくない。
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