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Ⅰ.あかり

04.

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「あかり」

学校からの帰り道、私の家に至る手前の曲がり角で、聖人が手を引く。
足を止めて伺うように見上げると、彼が優しくキスをする。

この瞬間、私は動けなくなり、世界で一番残酷な人間だと思い知らされる。



「見ぃーちゃった」

聖人と別れて、家まで来ると、玄関からひょっこり、ミオリが顔を出した。

「ね~、ちゅーしてたよね~っ、聖人さんって、どんな感じなのぅ?」

「ちょっと、ミオ、声大きいよ」

慌てて妹の口をふさぐも、ミオリは全く悪びれた様子もなく、

「いいじゃん!聖人さんなら! あーあ、ミオに勉強教えてくれないかなぁ。そんで、イケナイ勉強もしようかとか言っちゃったり?」

盛りがってる妹を横目に家に入ると、

「おかえり。もう、ごはん出来てるわよ」

キッチンから母の声がした。

母に返事をしてから2階に上がると、

「実際さぁ、あーちゃんたちって、もうヤッちゃった?」

「ミオっ」

部屋まで着いてきた妹が、あけすけな質問をしてくる。

「いいじゃ~ん、教えてよ。ね~、そうなったら、教えてね。絶対だよ」

茶色がかった緩いウェーブの髪をふわふわさせながら、上目づかいに見てくるミオリを

「私、着替えるから。ミオ、明日からテストなんでしょ」

「そぉ、だから今日のご飯はママがハンバーグにしてくれたんだ。受験生ってお得~」

何とか部屋から追い出す。

色白で背が小さく、明るくて屈託がない妹は世間でも学校でも男女問わず人気者だ。

私に向けられる「しっかりしている」は、ミオリに向けられる「可愛い」の対極だってわかってる。

年子の妹は、甘えていて可愛らしく、…時々、私に自分を嫌いにさせる。
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