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おまけBlue.
01.
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「豚に真珠」
「猫に小判」
「「ジョージの指にペアリングっっ」」
うららかな昼下がり。
今日も沢山の人がひしめく東島建設の社食に、ミオちゃんとサリちゃんの声が響き渡る。
「それ、某ブランドの新作リングじゃん」
「なぜにジョージばかりがモテるのじゃ」
イギリスで、奏くんと街歩きをしていて、ふいっと入ったお店で奏くんが買ってくれた。
「失くすなよ」
奏くんが私の手を取って指にはめてくれて、なんか、なんか、…
自分の手が特別なものになってしまった‼
って感じで落ち着かない。
ジュエリーなんて付けるの生まれて初めてで、
一日中目が離せないし、
全人類が私の左手に注目してるような気がするし、…
「…幸せすぎて怖い」
つぶやいたら、
ミオちゃんとサリちゃんが私のラーメンに箸を突き刺した。
「チャーシューもらうわ」
「煮卵もらうわ」
いやもう、ネギだけでいい。
スープだけでもいい。
麺がのびても幸せ。
「ジョージがのびた麺をこの世で一番美味しいもののように食べてる」
「愛って盲目…」
夢のようなイギリス滞在を終え、奏くんと一緒に日本に帰ってきて、
今日、久しぶりに出勤した。
「それで、どうなの。ラブラブ生活は」
「プリンス奏はサルに愛を囁くのか?」
え、…。
奏くんの甘い唇がよみがえる。
奏くんがキスしてくれると、もう何にも考えられなくなって、
奏くんに触れられると、身体の奥がもっともっとってきゅうきゅう鳴いて、
どこまでもどこまでもとろけてしまう。
それであの甘くかすれた声で「のい」って呼ばれると、
胸がいっぱいになって涙が出てきて、
1ミリの隙間もないくらいくっついて離れたくなくなる。
「…幸せすぎて死ぬ」
他に言いようがない。
「アフリカに帰ってもらっていい?」
「もしくはロケットに乗っちゃって」
ミオちゃんとサリちゃんの祝福が沁みる。
-----------------------
「課長、お先に失礼します」
「うん、木下。お疲れ様」
ん?
「森くん、食材買ってくね」
「はい。準備して待ってます」
んん?
終業時刻になると、なんか広報課にピンク色の空気が漂った。
「あの、皆さん。一体、…?」
そしてみんな、そそくさと帰宅準備を始める。
「本宮くん、よくぞ聞いてくれたね」
隣の橙子さんが重々しい感じで私の肩に手を置き、
「鼻血こそ神だよ」
まるで分からないことを言い出した。
「この前、会議に遅れそうで急いだら通路で人とぶつかってさ。鼻血出してスーツに染みが付いて、途方に暮れてたら森くんがすばやく落としてくれたのよ」
橙子さんがうっとりと森先輩を見ると、森先輩が目を逸らしながら顔を赤らめた。
「その勢いで課長が木下さんに告白したってわけ」
つながりが全く分かりませんが、…
「…おめでとうございます」
私がイギリスに行っている間に、広報課には恋の花が咲き乱れたらしい。
「どうもどうも。というわけで、本宮くんは仕事に励んでくれたまえよ。お疲れっ」
「お疲れ!」
橙子さんと森先輩が肩を並べて仲良くフロアをよぎっていく。
なんか私の机の上にはゲラ刷りやら校正表やらレイアウト図案やらが山積みになっていて、気づいたら広報課メンバーは誰もいなくなっていた。
知らないうちに定時退社を推奨する課になったらしい。
いや。皆さん、幸せそうで何よりですが。
これ、一人寂しく残業コースじゃん…
「猫に小判」
「「ジョージの指にペアリングっっ」」
うららかな昼下がり。
今日も沢山の人がひしめく東島建設の社食に、ミオちゃんとサリちゃんの声が響き渡る。
「それ、某ブランドの新作リングじゃん」
「なぜにジョージばかりがモテるのじゃ」
イギリスで、奏くんと街歩きをしていて、ふいっと入ったお店で奏くんが買ってくれた。
「失くすなよ」
奏くんが私の手を取って指にはめてくれて、なんか、なんか、…
自分の手が特別なものになってしまった‼
って感じで落ち着かない。
ジュエリーなんて付けるの生まれて初めてで、
一日中目が離せないし、
全人類が私の左手に注目してるような気がするし、…
「…幸せすぎて怖い」
つぶやいたら、
ミオちゃんとサリちゃんが私のラーメンに箸を突き刺した。
「チャーシューもらうわ」
「煮卵もらうわ」
いやもう、ネギだけでいい。
スープだけでもいい。
麺がのびても幸せ。
「ジョージがのびた麺をこの世で一番美味しいもののように食べてる」
「愛って盲目…」
夢のようなイギリス滞在を終え、奏くんと一緒に日本に帰ってきて、
今日、久しぶりに出勤した。
「それで、どうなの。ラブラブ生活は」
「プリンス奏はサルに愛を囁くのか?」
え、…。
奏くんの甘い唇がよみがえる。
奏くんがキスしてくれると、もう何にも考えられなくなって、
奏くんに触れられると、身体の奥がもっともっとってきゅうきゅう鳴いて、
どこまでもどこまでもとろけてしまう。
それであの甘くかすれた声で「のい」って呼ばれると、
胸がいっぱいになって涙が出てきて、
1ミリの隙間もないくらいくっついて離れたくなくなる。
「…幸せすぎて死ぬ」
他に言いようがない。
「アフリカに帰ってもらっていい?」
「もしくはロケットに乗っちゃって」
ミオちゃんとサリちゃんの祝福が沁みる。
-----------------------
「課長、お先に失礼します」
「うん、木下。お疲れ様」
ん?
「森くん、食材買ってくね」
「はい。準備して待ってます」
んん?
終業時刻になると、なんか広報課にピンク色の空気が漂った。
「あの、皆さん。一体、…?」
そしてみんな、そそくさと帰宅準備を始める。
「本宮くん、よくぞ聞いてくれたね」
隣の橙子さんが重々しい感じで私の肩に手を置き、
「鼻血こそ神だよ」
まるで分からないことを言い出した。
「この前、会議に遅れそうで急いだら通路で人とぶつかってさ。鼻血出してスーツに染みが付いて、途方に暮れてたら森くんがすばやく落としてくれたのよ」
橙子さんがうっとりと森先輩を見ると、森先輩が目を逸らしながら顔を赤らめた。
「その勢いで課長が木下さんに告白したってわけ」
つながりが全く分かりませんが、…
「…おめでとうございます」
私がイギリスに行っている間に、広報課には恋の花が咲き乱れたらしい。
「どうもどうも。というわけで、本宮くんは仕事に励んでくれたまえよ。お疲れっ」
「お疲れ!」
橙子さんと森先輩が肩を並べて仲良くフロアをよぎっていく。
なんか私の机の上にはゲラ刷りやら校正表やらレイアウト図案やらが山積みになっていて、気づいたら広報課メンバーは誰もいなくなっていた。
知らないうちに定時退社を推奨する課になったらしい。
いや。皆さん、幸せそうで何よりですが。
これ、一人寂しく残業コースじゃん…
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