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奏くんの美しい瞳。
永遠に続く深い闇を明るく照らすアースアイ。
宇宙に浮かぶ地球のような青と淡褐色の瞳。
いつも私の心を照らし出す不思議な色の瞳。
奏くんの揺れる瞳を見たら、涙が込み上げてきた。
バカで。どうしようもなくて。
情けなくて。みっともなくて。
何も持ってない。
誇れるものも、あげられるものも、何にもない。
だけど。
「…奏くんが好きです」
涙を噛み締めて奏くんを見上げた。
それしかないけど。
他には何にも持ってないけど。
「バカだけど分かるよ。奏くんが好きだよ。これだけは確かだよ、…」
胸が詰まって泣き声になった。
この想いを、
どうやって伝えたらいいか分からない。
どうやったら伝わるのか分からない。
「奏くんが好き。奏くんだけ。ずっとずっと奏くんだけが好きだよ。絶対絶対、奏くんだけ、…っ」
胸がいっぱいで息が苦しくて、途切れそうになる声を振り絞った。
奏くんの美しい瞳が切なさをたたえて私を映し、
その桜色の麗しい唇を一度噛みしめると、
奏くんが全てを奪い去るようなキスをした。
深くて熱くて狂おしくて
溺れて揺られて何もかも吹き飛ばすような
理性も思考も常識も
頭も身体も脳みそも全部がとろけるような
甘く激しく痺れるキスに息が出来ない。
嵐のような愛しさに流されて
気が付いたら奏くんに力いっぱい抱きしめられていた。
「お前、…ホント、バカ」
甘く震えるかすれた声。
優しさと愛しさに溢れた声。
力強い腕。硬い胸板。
奏くんの匂い。繰り返す鼓動の音。
「しょうがねえから、このバカは俺が一生面倒みてやるよ」
奏くんの優しい声が心に沁みてどうしようもなく涙が溢れて止まらなかった。
「わしもバナナは好きじゃ」
喜四郎おじいちゃんがダイニングテーブルで優雅にバナナを食べている。
「のう、アミィ?」
おじいちゃんの丸い指が、アメリアの艶やかな金髪を優しく撫でた。
「アミィもバナナは好きよ。アミィも、アミィも、…」
アメリアは美しい碧眼に大粒の涙をためて頷くと、テーブルに突っ伏して泣き声を上げた。
「武士の端くれとして仁義を重んじるわっ! でもでもっ、アミィの愛は永遠よ―――っ!」
…ぶし?
どうもアメリアはアニメと時代劇で日本語を学んだ節がある。
「せっかくだからバナナケーキを焼こうかしら。ねえ、あなた」
「最高だよ、ハニー。ナギサの作るバナナケーキは世界一なんだ」
奏くんのお母さんの陽気な声とお父さんの甘い声が、バナナと共に仲良くキッチンに向かう。
「手伝います。うち、洋菓子屋なんです」
「まあ、ありがとう。碧くん」
和泉さんがスマートに立ち上がり、2人に続くと、
「…きたわ、雷鳴! 運命よ! ジャジャジャジャーン‼」
アメリアが急に覚醒して、一瞬で涙を乾かし、長い脚を更に伸ばして浮き浮きと後を追いかけて行った。
「アオ~、アミィも手伝うわ~~~」
永遠、短いな、おい。
それを見送っていたら、
「…俺、部屋にこもるから」
ふいに奏くんが私を抱き上げて、すたすたとらせん階段を上り始めた。
え。ちょっと待って。
これっていわゆるお姫様抱っこというやつでは。
それで、部屋にこもって、いったい何を…
「お前、覚悟できてるんだろうな?」
覚悟――――――っ⁉︎
ごっくん…‼
下斜め45度から見ても完璧に麗しい顔に意地悪セクシーな笑みを浮かべて、奏くんが私の息の根を止めにきた。
「もう、奏ったらはしゃいじゃって。ケーキが焼けたら呼びに行っちゃうわよ?」
永遠に続く深い闇を明るく照らすアースアイ。
宇宙に浮かぶ地球のような青と淡褐色の瞳。
いつも私の心を照らし出す不思議な色の瞳。
奏くんの揺れる瞳を見たら、涙が込み上げてきた。
バカで。どうしようもなくて。
情けなくて。みっともなくて。
何も持ってない。
誇れるものも、あげられるものも、何にもない。
だけど。
「…奏くんが好きです」
涙を噛み締めて奏くんを見上げた。
それしかないけど。
他には何にも持ってないけど。
「バカだけど分かるよ。奏くんが好きだよ。これだけは確かだよ、…」
胸が詰まって泣き声になった。
この想いを、
どうやって伝えたらいいか分からない。
どうやったら伝わるのか分からない。
「奏くんが好き。奏くんだけ。ずっとずっと奏くんだけが好きだよ。絶対絶対、奏くんだけ、…っ」
胸がいっぱいで息が苦しくて、途切れそうになる声を振り絞った。
奏くんの美しい瞳が切なさをたたえて私を映し、
その桜色の麗しい唇を一度噛みしめると、
奏くんが全てを奪い去るようなキスをした。
深くて熱くて狂おしくて
溺れて揺られて何もかも吹き飛ばすような
理性も思考も常識も
頭も身体も脳みそも全部がとろけるような
甘く激しく痺れるキスに息が出来ない。
嵐のような愛しさに流されて
気が付いたら奏くんに力いっぱい抱きしめられていた。
「お前、…ホント、バカ」
甘く震えるかすれた声。
優しさと愛しさに溢れた声。
力強い腕。硬い胸板。
奏くんの匂い。繰り返す鼓動の音。
「しょうがねえから、このバカは俺が一生面倒みてやるよ」
奏くんの優しい声が心に沁みてどうしようもなく涙が溢れて止まらなかった。
「わしもバナナは好きじゃ」
喜四郎おじいちゃんがダイニングテーブルで優雅にバナナを食べている。
「のう、アミィ?」
おじいちゃんの丸い指が、アメリアの艶やかな金髪を優しく撫でた。
「アミィもバナナは好きよ。アミィも、アミィも、…」
アメリアは美しい碧眼に大粒の涙をためて頷くと、テーブルに突っ伏して泣き声を上げた。
「武士の端くれとして仁義を重んじるわっ! でもでもっ、アミィの愛は永遠よ―――っ!」
…ぶし?
どうもアメリアはアニメと時代劇で日本語を学んだ節がある。
「せっかくだからバナナケーキを焼こうかしら。ねえ、あなた」
「最高だよ、ハニー。ナギサの作るバナナケーキは世界一なんだ」
奏くんのお母さんの陽気な声とお父さんの甘い声が、バナナと共に仲良くキッチンに向かう。
「手伝います。うち、洋菓子屋なんです」
「まあ、ありがとう。碧くん」
和泉さんがスマートに立ち上がり、2人に続くと、
「…きたわ、雷鳴! 運命よ! ジャジャジャジャーン‼」
アメリアが急に覚醒して、一瞬で涙を乾かし、長い脚を更に伸ばして浮き浮きと後を追いかけて行った。
「アオ~、アミィも手伝うわ~~~」
永遠、短いな、おい。
それを見送っていたら、
「…俺、部屋にこもるから」
ふいに奏くんが私を抱き上げて、すたすたとらせん階段を上り始めた。
え。ちょっと待って。
これっていわゆるお姫様抱っこというやつでは。
それで、部屋にこもって、いったい何を…
「お前、覚悟できてるんだろうな?」
覚悟――――――っ⁉︎
ごっくん…‼
下斜め45度から見ても完璧に麗しい顔に意地悪セクシーな笑みを浮かべて、奏くんが私の息の根を止めにきた。
「もう、奏ったらはしゃいじゃって。ケーキが焼けたら呼びに行っちゃうわよ?」
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