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blue.81
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「のいちゃん、具合はどう?」
なんかもう寝ても寝ても寝れて、何度目かに目を覚ますと、武邑さんがお見舞いに来てくれていた。
「さっき奏の様子も見てきたよ」
穏やかな笑みを浮かべてベッドの隣に腰かける。
「のいちゃんのこと、心配で仕方ないみたい。ちょいちょい脱走するらしくて、怖い先生にベッドに縛り付けられてた」
武邑さんがくすくす笑いながら教えてくれた。
それ、絶対結城先生じゃん。
「奏くん。…大丈夫なんですか?」
「まあ。…絶好調なんじゃない?」
絶好調?
すごく優しい目をしていた武邑さんは、ふと真面目な顔になり、
「のいちゃん、すぐに見つけてあげられなくてごめんね。あの2人は誘拐罪で起訴する予定だから」
立ち上がって姿勢を正し、丁寧に頭を下げた。
「や。いやいや、そんな、…」
なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
でも、あの2人が捕まってくれて良かった。
本気で二度と会いたくない。
「前回の諜報員事件で非常用のリモートアプリをスマホに入れてもらったでしょ? タクシーの中で強い刺激を受けて作動したみたいで。奏がいち早く気づいてGPS情報を頼りに探したのは良かったんだけど、正確な位置とスマホから離れたのいちゃんを探すのに手間取って、…本当にごめんね」
武邑さんの言葉に首を横に振る。
「諜報組織もまだ解明に時間がかかってるから、のいちゃん、今後も気をつけて」
「はい」
武邑さんは公務に忙しいみたいで、「奏のことよろしく」と言って帰って行った。
…よろしく。
よし、よろしくしてこよう‼
がばっと起き上がったら胸に激痛が走ってベッドの上でうずくまった。
いや。普通に痛いわ。
しばらくそのままじっとしていたら、
バン‼ とドアを開ける威勢の良い音に続いて、ブロンズ美女が乗り込んできた。
「…出たよ、ペルシャ」
金髪碧眼。抜群のプロポーション。
露出多めのスタイル。必然的な上から目線。
「アメリア…」
「そこのモンキー!」
アメリアが無駄にクリアな「モンキー」の発音で私を指さす。
「カナデから手を引きなさい!」
…麗しい。
白い肌。高い鼻。ぱっちりな目。
小さい顔。豊かな胸。細い腰。長すぎる足。
奏くんの隣にめっちゃ似合うけど。
「カナデは私のフィアンセよ」
こればっかりは譲れない。
「…親戚って言われてたじゃん」
うかがうようにその美しすぎる顔を見ると、鼻で笑われた。
「カナデ、照れてる。日本男児奥ゆかしい」
…そうかあ?
私のうさんくささ全開の視線をまるで気にせず、アメリアは芝居がかって力説した。
「私、カナデに出会った瞬間、雷に撃たれた。運命‼ ジャジャジャジャーン‼」
まあそこはアミィの手を取ってみた。
「わかる! 確かにあのカッコ良さは撃たれる!」
けども、速攻で振り払われた。…つれない。
「分かるわけないね、パッと出が! カナデを危険にさらす悪魔の使い手め。コザルのなりをしていても魔女っ子アミィの目はごまかせないわ!」
いや、なんか。なんか日本文化を誤解してる気がする。
「とにかく、カナデはイギリスに連れて帰る。私たちは一族が決めた正式な結婚相手だから。He is mine! OK, monkey?」
アメリアが言いたいことだけ言ってすっきりした感じで出て行こうとしたから、ちょっと頭に血が昇った。
「モンキーじゃない!」
間違えた。
「OKじゃない‼ 私だって宇宙の果てより奏くんが好きだもんっっ‼」
わー、極上の美人相手に啖呵切っちゃった―――っ
なんかもう寝ても寝ても寝れて、何度目かに目を覚ますと、武邑さんがお見舞いに来てくれていた。
「さっき奏の様子も見てきたよ」
穏やかな笑みを浮かべてベッドの隣に腰かける。
「のいちゃんのこと、心配で仕方ないみたい。ちょいちょい脱走するらしくて、怖い先生にベッドに縛り付けられてた」
武邑さんがくすくす笑いながら教えてくれた。
それ、絶対結城先生じゃん。
「奏くん。…大丈夫なんですか?」
「まあ。…絶好調なんじゃない?」
絶好調?
すごく優しい目をしていた武邑さんは、ふと真面目な顔になり、
「のいちゃん、すぐに見つけてあげられなくてごめんね。あの2人は誘拐罪で起訴する予定だから」
立ち上がって姿勢を正し、丁寧に頭を下げた。
「や。いやいや、そんな、…」
なんだか申し訳ない気持ちになってしまう。
でも、あの2人が捕まってくれて良かった。
本気で二度と会いたくない。
「前回の諜報員事件で非常用のリモートアプリをスマホに入れてもらったでしょ? タクシーの中で強い刺激を受けて作動したみたいで。奏がいち早く気づいてGPS情報を頼りに探したのは良かったんだけど、正確な位置とスマホから離れたのいちゃんを探すのに手間取って、…本当にごめんね」
武邑さんの言葉に首を横に振る。
「諜報組織もまだ解明に時間がかかってるから、のいちゃん、今後も気をつけて」
「はい」
武邑さんは公務に忙しいみたいで、「奏のことよろしく」と言って帰って行った。
…よろしく。
よし、よろしくしてこよう‼
がばっと起き上がったら胸に激痛が走ってベッドの上でうずくまった。
いや。普通に痛いわ。
しばらくそのままじっとしていたら、
バン‼ とドアを開ける威勢の良い音に続いて、ブロンズ美女が乗り込んできた。
「…出たよ、ペルシャ」
金髪碧眼。抜群のプロポーション。
露出多めのスタイル。必然的な上から目線。
「アメリア…」
「そこのモンキー!」
アメリアが無駄にクリアな「モンキー」の発音で私を指さす。
「カナデから手を引きなさい!」
…麗しい。
白い肌。高い鼻。ぱっちりな目。
小さい顔。豊かな胸。細い腰。長すぎる足。
奏くんの隣にめっちゃ似合うけど。
「カナデは私のフィアンセよ」
こればっかりは譲れない。
「…親戚って言われてたじゃん」
うかがうようにその美しすぎる顔を見ると、鼻で笑われた。
「カナデ、照れてる。日本男児奥ゆかしい」
…そうかあ?
私のうさんくささ全開の視線をまるで気にせず、アメリアは芝居がかって力説した。
「私、カナデに出会った瞬間、雷に撃たれた。運命‼ ジャジャジャジャーン‼」
まあそこはアミィの手を取ってみた。
「わかる! 確かにあのカッコ良さは撃たれる!」
けども、速攻で振り払われた。…つれない。
「分かるわけないね、パッと出が! カナデを危険にさらす悪魔の使い手め。コザルのなりをしていても魔女っ子アミィの目はごまかせないわ!」
いや、なんか。なんか日本文化を誤解してる気がする。
「とにかく、カナデはイギリスに連れて帰る。私たちは一族が決めた正式な結婚相手だから。He is mine! OK, monkey?」
アメリアが言いたいことだけ言ってすっきりした感じで出て行こうとしたから、ちょっと頭に血が昇った。
「モンキーじゃない!」
間違えた。
「OKじゃない‼ 私だって宇宙の果てより奏くんが好きだもんっっ‼」
わー、極上の美人相手に啖呵切っちゃった―――っ
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