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blue.78
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夢を見ているんだと思った。
目の前に奏くんのきれいな顔があって、長いまつ毛の下で不思議色のアースアイが不安げに揺れている。
「…のい?」
桜色の唇が甘く掠れた声で私の名前をつむぐ。
「か、…」
口を動かそうとしたら頭に激痛が走った。
「バカ、お前。動くな」
奏くんが慌てた様子で私に手を伸ばし、頬にそっと触れる。
温かい。奏くんの手。奏くんのぬくもり。
「すぐ助けが来るから」
奏くんの優しい声。いたわるように長い指の背が頬を撫でる。
遠くの方からパトカーと救急車のサイレンが微かに聞こえた。
目を凝らすと切り立った断崖の向こうにいくつかの灯りが行き交うのが見えた。
程なくして、複数の足音が地面を揺らした。
「こ、…」
奏くんが立ち上がりかけて言葉を飲んだ。
「あそこから落ちたならこの辺のはずだ」
「あの女が生きてて余計な事しゃべったら今度こそ終わりだ」
足音に続いて聞こえてきた声は、もう二度と聞きたくなかった横尾と谷口の声だった。
「動くなよ」
奏くんが私にささやきかけて守るように立ちはだかり、声がする方を静かに見つめた。
足音とぼそぼそ話す声、不安定に揺れる小さな明かりが徐々に近づいてくる。
「あそこに誰か、…うわっ!」
「わあっ!!」
横尾と谷口がかざす明かりが目に入った時、前に立つ奏くんが2人に向かって飛び掛かっていった。
生々しい殴打音が響く。
視界をかすめる黒い影。どさりと岩に叩きつけられる音。
うめき声。怒声。空を切り裂く金属音。飛び散る土砂。
「こいつ、怪我してんじゃねえのか」
「ナイフ使え。二人がかりで行くぞ」
ぞっとする台詞が耳に入り、身体中の血が怒りに渦巻いた。
待って。
奏くんは瀕死の重傷を負って、ICUから出たばかりなのに。
役立たずの身体に鞭を打って無理やり起き上がる。
額から生温かい何かが滴り落ちて視界を遮る。
這いつくばって武器になりそうな石を拾った。
「奏くんに手出したら、殺すから!」
もみ合う3つの影に近づいて、ナイフを握る手を目指してつかんだ石を力いっぱい投げつけた。
「どんな手を使っても、地獄の底まで引きずり落としてやるから!」
息が切れる。
視界を遮るのは血なのか涙なのか分からなかった。
神様どうか、今だけ私の腕に力を下さい。
あのナイフを振り落とす力を宿して下さい。
手当たり次第、石を拾い、ナイフめがけて投げつけた。
目の前に奏くんのきれいな顔があって、長いまつ毛の下で不思議色のアースアイが不安げに揺れている。
「…のい?」
桜色の唇が甘く掠れた声で私の名前をつむぐ。
「か、…」
口を動かそうとしたら頭に激痛が走った。
「バカ、お前。動くな」
奏くんが慌てた様子で私に手を伸ばし、頬にそっと触れる。
温かい。奏くんの手。奏くんのぬくもり。
「すぐ助けが来るから」
奏くんの優しい声。いたわるように長い指の背が頬を撫でる。
遠くの方からパトカーと救急車のサイレンが微かに聞こえた。
目を凝らすと切り立った断崖の向こうにいくつかの灯りが行き交うのが見えた。
程なくして、複数の足音が地面を揺らした。
「こ、…」
奏くんが立ち上がりかけて言葉を飲んだ。
「あそこから落ちたならこの辺のはずだ」
「あの女が生きてて余計な事しゃべったら今度こそ終わりだ」
足音に続いて聞こえてきた声は、もう二度と聞きたくなかった横尾と谷口の声だった。
「動くなよ」
奏くんが私にささやきかけて守るように立ちはだかり、声がする方を静かに見つめた。
足音とぼそぼそ話す声、不安定に揺れる小さな明かりが徐々に近づいてくる。
「あそこに誰か、…うわっ!」
「わあっ!!」
横尾と谷口がかざす明かりが目に入った時、前に立つ奏くんが2人に向かって飛び掛かっていった。
生々しい殴打音が響く。
視界をかすめる黒い影。どさりと岩に叩きつけられる音。
うめき声。怒声。空を切り裂く金属音。飛び散る土砂。
「こいつ、怪我してんじゃねえのか」
「ナイフ使え。二人がかりで行くぞ」
ぞっとする台詞が耳に入り、身体中の血が怒りに渦巻いた。
待って。
奏くんは瀕死の重傷を負って、ICUから出たばかりなのに。
役立たずの身体に鞭を打って無理やり起き上がる。
額から生温かい何かが滴り落ちて視界を遮る。
這いつくばって武器になりそうな石を拾った。
「奏くんに手出したら、殺すから!」
もみ合う3つの影に近づいて、ナイフを握る手を目指してつかんだ石を力いっぱい投げつけた。
「どんな手を使っても、地獄の底まで引きずり落としてやるから!」
息が切れる。
視界を遮るのは血なのか涙なのか分からなかった。
神様どうか、今だけ私の腕に力を下さい。
あのナイフを振り落とす力を宿して下さい。
手当たり次第、石を拾い、ナイフめがけて投げつけた。
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