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blue.42

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「研究所の横尾さん、情報漏えいで懲戒解雇だって」

翌朝、出勤すると、なんだか会社がざわついていた。

「和泉さんの研究データをコミネに横流ししたらしいよ」
「それでコミネに引き抜いてもらおうとしたけど、コミネは情報を受け取ったことを全面否定していて、行き場を失くしてるらしい」
「まあ、そんなことする人、どこの会社も欲しがらないだろうね」
「自業自得だよね」

あの助手の人、解雇されたのか。

会うたびに受けた恨みつらみの視線。…思い出したくない。

「本宮、研究所の所長が謝りに来るってよ」

広報課に行くと、橙子さんの機嫌がよかった。

「いらぬ疑いをかけて申し訳なかったって。良かったね。もしあんたが疑われたまま和泉さんが救ってくれなかったら、横尾さんと同じ目に遭ってたかもしれないよ」

橙子さんが笑顔で私の背中をバシバシ叩く。

「…はい」

和泉さんには感謝してもしても足りない。
そして、和泉さんを思うと、胸の奥が締め付けられて苦しい。

「何よ~? 元気ないじゃん。え? 私、疑ってないよ。本宮はそんな頭ないって知ってる!」
「ですよね、橙子さん、分かってらっしゃる!」

って、応じてから、何か微妙に間違ってるような気がした。
森先輩が声を殺して笑っているので、とりあえずクリップを投げておく。

「やっぱり助手の代わりに手伝ってくださいって言われたらどうする? 勿体つけてやろうか」

橙子さんは楽しそうにしているけれど、またあの研究室で和泉さんと麻雪さんと一緒に過ごすことを考えたら、胃が痛くなってきた。



「はぁぁ、和泉王子にそんな過去が」
「いや、悩める王子、萌える」

おい、そこの他人事2人!

お昼休みにいつも通りミオちゃんサリちゃんと社食に集合した。
今日こそAランチ定食をセレクトすると、本日はぶりの照り焼きではなくサバの味噌煮でした。
サバ味噌も美味しい!

「それで人を寄せ付けないんだね。孤高の存在だと思ってたけど、そういうことかぁ」

まだうっとりしているミオちゃんを置いて、サリちゃんがスパっと切る。

「まあ、のいには無理だよ。もうあきらめて次行こっ」

軽いな、おい。

まあ、あんなに切なくごめんなって言われたら諦めるしかないのかもしれないけどさ、そう簡単に諦められないのが人間っていうか、…せめてもうちょっと引っ張ろうよ。

恨みがましく2人を見ると、

「いいじゃん、のいには次があるんだからさ」
「そうだよ、ずるいよ、イケメンは世界で共有するって約束でしょ」
「ストップ、独占」
「独り占め、ダメ、絶対」

逆にめちゃめちゃ恨みがましい視線を向けられた。

え。それってもしかして、

「…奏くんには彼女が一億人いるよ」

いや、もしかしなくても奏くんのことだよね。

「まったまたー、隅に置けませんな、奥さん」
「あーんとかされちゃってさ」

2人が無駄にニヤニヤしながら私を見てくる。
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