マチ恋 ―君に捧げるLove song― 一夜の相手はスーパースター。誰にも言えない秘密の恋。【完結】

4章. 悠馬

machi.63

マンションのリビングで、意を決したように俺の前に立った。

このところルーカスに任せきりでリナと向き合っていなかったが、
リナはしっかりした口調で続ける。

「心配しないで。もう、馬鹿なことはしない。
本当はちゃんとわかってたの。でもどうしても諦められなかった。
今まで困らせてごめんなさい。」

自棄になっているわけではなさそうだった。

「最後に、お願いがあるの」

リナが俺に抱き付いてきて、身体をすり寄せてくる。

「…、朝まで抱いて」

「リナ？」

確かめようとリナの目を見ると、
リナは涙を浮かべながら、それでもきっぱりと言い切った。

「悠馬が好き。やっぱり、好き。
…だから、悠馬、お願い。思い出をちょうだい」

最近は泣くことも少なくなっていたリナが、今は静かに涙を落としていた。

「最後に、悠馬が欲しい…！」

怖いくらい真剣な表情で俺を見る。

リナのことは、嫌いな訳じゃない。
全力で慕われて、嬉しいし、有難い。
一緒に過ごしてきた情もある。
応えられなくて悪いと思う気持ちもある。

それで、リナが納得するなら。
簡単なことだ。たった一晩。

『好き…』

ゆいが、待っている。
ゆいが、泣いている。

ゆいと溶け合ったあの夜。
俺の奥深くに眠るかけがえのない大切なもの。
誰にも見せたくない、俺の腕の中のゆい。

一度目を閉じてから、
涙の中で俺を見つめるリナを、見つめ返した。

リナの手を取る。

それは、出口の見えない暗いトンネルの中に灯された、
誘惑の光。


ゆい。ごめんな。

もう少しだけ、待ってて…