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4章. 悠馬

machi.61

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羽田から直接、リナが入院している病院へ向かう。

「リナ…」

ルーカスと染谷がベットに座るリナに駆け寄った。
リナは、青白く血の気のない顔で、ぼんやりと空を見ていた。

「悠馬さん…!」

リナに付き添っていた母親が俺を認める。
その声に、リナが瞼を震わせて俺を見た。

「…っ、悠馬…!」

リナの目がみるみる涙で膨らむ。
痛々しく包帯が巻かれ、
点滴が刺されたままの細い両手を俺に伸ばす。

俺が近寄ると、リナは俺にしがみつき、声を震わせて泣いた。

「悠馬、…行かないで」

ルーカスと染谷がやりきれない表情で目をそらす。
リナの母親が床に正座し、俺に向かって頭を床に擦り付けた。

「お願いします。リナを見捨てないでください。お願いします…!!」


ゆいの声が聞こえる。

『…好き』

俺は世界一の屑だ。

やるせない沈黙と泣き声が充満する病室で、
強く、目を閉じた。


リナはしばらくの間、俺を見るとすがって泣き、
俺の姿が見えなくなると、病院中を泣きわめいて探し回り、
裸足のまま外に飛び出したりして、不安定な様態だった。

「そばにいるから」

何度かリナに言い聞かせると、徐々に落ち着きを取り戻し、
体調も回復してきた。

10日程で退院できることになったが、
マンションに戻ってもしばらく母親が付き添っていた。

林さんやルーカスも毎日様子を見に来て、
マスコミ対応をしてくれたり、献身的に支えてくれたりして
一週間もすると表面上は、ほぼ元の状態に戻ったようだった。

ただ。
別れ話をしようとすると、リナは半狂乱になって、自傷行為に走る。

俺の手足には、見えない糸が幾重にも絡みついて、
がんじがらめに縛られている。

チェストの引き出しには、
リナのサインを待つばかりの離婚届と、ゆいの眼鏡がしまってある。

時々それをぼんやり眺めた。

…身動きできない。
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