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4章. 悠馬
machi.58
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「ゆい、連絡先、教えて」
過去をやり直すことはできないけど、
これからを一緒に過ごすために、俺はもう間違えたくない。
ゆいがメモを取りに立ったわずかばかりの間に、
結城に告げた。
「もう少しだけ、ゆいと翔をお願いします」
結城なら、ゆいを傷つけるようなことはしない。
ゆいと翔を全力で守ってくれるだろう。
結城は射すくめるように鋭く俺を見た後、
ふっとそのまなざしを緩めた。
「早くしないと、俺がもらうよ?」
「…手、出さないでくださいね」
「…さぁ」
また、意地悪く余裕そうな笑みを浮かべると、
「あんまり、…泣かせるな」
そう告げる結城の声に感情が表れていて、胸が痛い。
結城の目を見て、しっかりうなずいた。
俺に結城以上の力があるのかわからない。
でも、ゆいが俺を選んでくれるなら、
俺は、全力でゆいと生きていく。
ゆいから電話番号を受け取ると、ゆいと翔を焼き付けた。
「ゆい」
ゆいの頬に指の背で触れると、
ゆいが不安そうに瞳を揺らめかせた。
大丈夫、今度はさよならじゃない。
あの時は言えなかったけど、今なら言える。
必ず迎えに来るって、約束するから。
「…待ってて」
そのために、足を踏み出したとき、
「…好き」
ゆいの声が耳を打って、どうしようもなく愛しさがあふれて
ゆいに口づけていた。
理性も常識も世間体も捨てて、このままさらいたい。
初めて告げてくれたゆいの言葉が身体の奥深くまで沁みて
愛しくて切なくてたまらなくて、胸が震える。
愛してる、の代わりに舌を絡めた。
今度会う時は、ちゃんと言葉にするから
それまで、待ってて。
もう一度ゆいを見たら、進めなくなりそうで、
そのまま振り返らずに、マンションを後にした。
外は凍てつきそうに寒くて、吐く息が白く煙る。
空には下弦の月が、かすかに輝いて見えた。
過去をやり直すことはできないけど、
これからを一緒に過ごすために、俺はもう間違えたくない。
ゆいがメモを取りに立ったわずかばかりの間に、
結城に告げた。
「もう少しだけ、ゆいと翔をお願いします」
結城なら、ゆいを傷つけるようなことはしない。
ゆいと翔を全力で守ってくれるだろう。
結城は射すくめるように鋭く俺を見た後、
ふっとそのまなざしを緩めた。
「早くしないと、俺がもらうよ?」
「…手、出さないでくださいね」
「…さぁ」
また、意地悪く余裕そうな笑みを浮かべると、
「あんまり、…泣かせるな」
そう告げる結城の声に感情が表れていて、胸が痛い。
結城の目を見て、しっかりうなずいた。
俺に結城以上の力があるのかわからない。
でも、ゆいが俺を選んでくれるなら、
俺は、全力でゆいと生きていく。
ゆいから電話番号を受け取ると、ゆいと翔を焼き付けた。
「ゆい」
ゆいの頬に指の背で触れると、
ゆいが不安そうに瞳を揺らめかせた。
大丈夫、今度はさよならじゃない。
あの時は言えなかったけど、今なら言える。
必ず迎えに来るって、約束するから。
「…待ってて」
そのために、足を踏み出したとき、
「…好き」
ゆいの声が耳を打って、どうしようもなく愛しさがあふれて
ゆいに口づけていた。
理性も常識も世間体も捨てて、このままさらいたい。
初めて告げてくれたゆいの言葉が身体の奥深くまで沁みて
愛しくて切なくてたまらなくて、胸が震える。
愛してる、の代わりに舌を絡めた。
今度会う時は、ちゃんと言葉にするから
それまで、待ってて。
もう一度ゆいを見たら、進めなくなりそうで、
そのまま振り返らずに、マンションを後にした。
外は凍てつきそうに寒くて、吐く息が白く煙る。
空には下弦の月が、かすかに輝いて見えた。
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