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3章. ゆい

machi.49

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冬の間、ずっと稜さんのマンションから外を見ていた。

悠馬がくれたCDを携帯に落としてもらって、何度も聴いた。
悠馬が私を想ってくれていると錯覚して、何度も何度も聴いた。

雪が舞った日は、本当に悠馬の声が聴こえた気がした。

悠馬からの連絡はなかった。
わかっているのに、何度も何度も携帯電話を確かめてしまう。
番号のメモを渡したことを、忘れてしまえればいいと思うほどに。

リナさんは命を懸けて悠馬を想っているというのに、
愚かな私はまだ悠馬を待っていた。

3月になったある日。

稜さんのマンションに、私宛の荷物が届いた。
開けてみると、私の眼鏡だった。

『じゃ、取ろうか?』

再会したときにいたずらに笑って、悠馬が取り上げた私の眼鏡。
その後、優しいキスをしてくれた。
震えながら、キスをした。

これは。
もう、会えないってこと?
もう、会わないってこと?

眼鏡を手にしたら、涙が落ちた。
殴打されるより蹴られるより、痛かった。

『ごめん』って、痛々しく揺れる悠馬の瞳。
苦しいほど、抱きしめてくれた悠馬の腕。
私と翔を丸ごと包んでくれた悠馬の広い胸の中。
何も言わずに満たしてくれた最後のキス。

『待ってて』って言ったのに。

悠馬。

離さないでほしかった。
連れていってほしかった。

悠馬。

ふてくされた口調も。むっとした物言いも。
無茶な行動も。照れた表情も。触れる時の優しい指も。
全部全部、大好き。

悠馬。

もっと、
悠馬を待っていたかった。

ずっと、
悠馬を待っていたかった。

ただ、悠馬が好きで。それだけだった。
だけど、それだけじゃ、どうにもならない。

こんな風に、終わるのかな。
みんな、どうにもできない気持ちを抱えて、
恋を終わりにするのかな。
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