49 / 88
3章. ゆい
machi.48
しおりを挟む
悠馬がマンションに来てから2週間。
リナさんは実際に手首を切り、倒れていたところを
仕事関係者に発見されて、病院に搬送されたらしい。
以来、仕事は全てキャンセルして、引きこもっているという。
食事も睡眠も摂らず、衰弱しきっているという。
悠馬はずっとそばについているらしい。
私に対するバッシングは以前の比ではなかった。
『人殺し』『悪女』『性悪』『死ね』『消えろ』『要らない』『寄生虫』『ヘビ女』…
仕事を終えてタクシーに乗ろうとしたときに、後ろからやってきた人につかみかかられて、地面に引きずり倒された。
「お前が死ね!お前が!」
罵倒とともに、激しく殴打されて、蹴りつけられた。
幸い、タクシーの運転手と近くにいた人が止めに入ってくれたけれど、
病院に戻った私はひどい有様だったようで、稜さんが血相を変えて飛んできた。
「ゆい、ごめん。ゆい…!」
稜さんが震えながら、ずっと私を抱きしめていてくれた。
けがの治療という名目で、私は休職を余儀なくされた。
病院周辺は、野次馬の数や騒動が激しく、利用者からの苦情が殺到したようだ。
しらかばハイツは建物への危害が続き、住民への危険性を考えて、他の社宅に移ることになったとマリカちゃんが教えてくれた。
私は翔と稜さんのマンションから一歩も外に出れなくなった。
稜さんのマンションは、セキュリティが固いので、そこにこもっている私と翔に危害が加えられることはないけれど、周辺は野次馬に囲まれていた。
翔がまったく口を利かなくなった。
「ゆい、ごめんな」
稜さんが私を抱きしめて謝る。
「あのまま、あいつと逃げればよかったな」
私は稜さんの胸の中で首を振る。
わかってる。
逃げてもどこにも行けない。
私たちは、現実を生きている。
逃げて、逃げて、どこにも行けなくて、
もしも悠馬が歌えなくなったら、私は自分を許せない。
「稜さん、ごめんね。ありがとう」
稜さんがいなかったら、私の居場所はどこにもなかった。
いつも、私と翔を守ってくれてありがとう。
「私、稜さんに何にも返せてない」
稜さんに申し訳なくて、首を垂れる私の頭のてっぺんに
「俺がそばにいてほしいんだよ、ゆい。
あいつが迎えにくるまでは、俺に守らせて」
稜さんが優しいキスをしてくれた。
リナさんは実際に手首を切り、倒れていたところを
仕事関係者に発見されて、病院に搬送されたらしい。
以来、仕事は全てキャンセルして、引きこもっているという。
食事も睡眠も摂らず、衰弱しきっているという。
悠馬はずっとそばについているらしい。
私に対するバッシングは以前の比ではなかった。
『人殺し』『悪女』『性悪』『死ね』『消えろ』『要らない』『寄生虫』『ヘビ女』…
仕事を終えてタクシーに乗ろうとしたときに、後ろからやってきた人につかみかかられて、地面に引きずり倒された。
「お前が死ね!お前が!」
罵倒とともに、激しく殴打されて、蹴りつけられた。
幸い、タクシーの運転手と近くにいた人が止めに入ってくれたけれど、
病院に戻った私はひどい有様だったようで、稜さんが血相を変えて飛んできた。
「ゆい、ごめん。ゆい…!」
稜さんが震えながら、ずっと私を抱きしめていてくれた。
けがの治療という名目で、私は休職を余儀なくされた。
病院周辺は、野次馬の数や騒動が激しく、利用者からの苦情が殺到したようだ。
しらかばハイツは建物への危害が続き、住民への危険性を考えて、他の社宅に移ることになったとマリカちゃんが教えてくれた。
私は翔と稜さんのマンションから一歩も外に出れなくなった。
稜さんのマンションは、セキュリティが固いので、そこにこもっている私と翔に危害が加えられることはないけれど、周辺は野次馬に囲まれていた。
翔がまったく口を利かなくなった。
「ゆい、ごめんな」
稜さんが私を抱きしめて謝る。
「あのまま、あいつと逃げればよかったな」
私は稜さんの胸の中で首を振る。
わかってる。
逃げてもどこにも行けない。
私たちは、現実を生きている。
逃げて、逃げて、どこにも行けなくて、
もしも悠馬が歌えなくなったら、私は自分を許せない。
「稜さん、ごめんね。ありがとう」
稜さんがいなかったら、私の居場所はどこにもなかった。
いつも、私と翔を守ってくれてありがとう。
「私、稜さんに何にも返せてない」
稜さんに申し訳なくて、首を垂れる私の頭のてっぺんに
「俺がそばにいてほしいんだよ、ゆい。
あいつが迎えにくるまでは、俺に守らせて」
稜さんが優しいキスをしてくれた。
0
お気に入りに追加
109
あなたにおすすめの小説
鬼上司は間抜けな私がお好きです
碧井夢夏
恋愛
れいわ紡績に就職した新入社員、花森沙穂(はなもりさほ)は社内でも評判の鬼上司、東御八雲(とうみやくも)のサポートに配属させられる。
ドジな花森は何度も東御の前で失敗ばかり。ところが、人造人間と噂されていた東御が初めて楽しそうにしたのは花森がやらかした時で・・。
孤高の人、東御八雲はなんと間抜けフェチだった?!
その上、育ちが特殊らしい雰囲気で・・。
ハイスペック超人と口だけの間抜け女子による上司と部下のラブコメ。
久しぶりにコメディ×溺愛を書きたくなりましたので、ゆるーく連載します。
会話劇ベースに、コミカル、ときどき、たっぷりと甘く深い愛のお話。
「めちゃコミック恋愛漫画原作賞」優秀作品に選んでいただきました。
※大人ラブです。R15相当。
表紙画像はMidjourneyで生成しました。
契約彼氏とロボット彼女 〜100万円から始まる100%の恋〜
風音
恋愛
財閥御令嬢の沙耶香は友人の提案で貧乏人で命の恩人 颯斗に100万円を差し出して一ヶ月間の恋人契約を結ぶ。同棲を始めるが、テレビは捨てられ、料理が出来ると言って任せてみたらデリバリーに頼み、アルバイトを始めたらミスしても謝らないなど、やる事なす事が破天荒だ。ひたすら身分を隠し続ける沙耶香だが父親と誓約書を交わして一ヶ月間自由を手に入れていた。迫り来る期限、崩壊していく心、募りゆく恋心に沙耶香は…。
執筆開始 2023/2/8
完結 2023/3/25
※この物語はフィクションになります。
物語に登場する人物名、団体名、施設名は架空のものとなります。
【完結】その男『D』につき~初恋男は独占欲を拗らせる~
蓮美ちま
恋愛
最低最悪な初対面だった。
職場の同僚だろうと人妻ナースだろうと、誘われればおいしく頂いてきた来る者拒まずでお馴染みのチャラ男。
私はこんな人と絶対に関わりたくない!
独占欲が人一倍強く、それで何度も過去に恋を失ってきた私が今必死に探し求めているもの。
それは……『Dの男』
あの男と真逆の、未経験の人。
少しでも私を好きなら、もう私に構わないで。
私が探しているのはあなたじゃない。
私は誰かの『唯一』になりたいの……。
【完結】つぎの色をさがして
蒼村 咲
恋愛
【あらすじ】
主人公・黒田友里は上司兼恋人の谷元亮介から、浮気相手の妊娠を理由に突然別れを告げられる。そしてその浮気相手はなんと同じ職場の後輩社員だった。だが友里の受難はこれでは終わらなかった──…
極道に大切に飼われた、お姫様
真木
恋愛
珈涼は父の組のため、生粋の極道、月岡に大切に飼われるようにして暮らすことになる。憧れていた月岡に甲斐甲斐しく世話を焼かれるのも、教え込まれるように夜ごと結ばれるのも、珈涼はただ恐ろしくて殻にこもっていく。繊細で怖がりな少女と、愛情の伝え方が下手な極道の、すれ違いラブストーリー。
ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編
タニマリ
恋愛
野獣のような男と付き合い始めてから早5年。そんな彼からプロポーズをされ同棲生活を始めた。
私の仕事が忙しくて結婚式と入籍は保留になっていたのだが……
予定にはなかった大問題が起こってしまった。
本作品はシリーズの第二弾の作品ですが、この作品だけでもお読み頂けます。
15分あれば読めると思います。
この作品の続編あります♪
『ヤリたい男ヤラない女〜デキちゃった編』
竜人のつがいへの執着は次元の壁を越える
たま
恋愛
次元を超えつがいに恋焦がれるストーカー竜人リュートさんと、うっかりリュートのいる異世界へ落っこちた女子高生結の絆されストーリー
その後、ふとした喧嘩らか、自分達が壮大な計画の歯車の1つだったことを知る。
そして今、最後の歯車はまずは世界の幸せの為に動く!
羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。
泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。
でも今、確かに思ってる。
―――この愛は、重い。
------------------------------------------
羽柴健人(30)
羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問
座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』
好き:柊みゆ
嫌い:褒められること
×
柊 みゆ(28)
弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部
座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』
好き:走ること
苦手:羽柴健人
------------------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる