上 下
39 / 88
3章. ゆい

machi.38

しおりを挟む
『寝耳に水!Yumaも知らなかった衝撃の事実』

どうして…

「しばらく周りが騒々しくなりそうね。心無いことを言う人もいるかもしれない。…大丈夫かしら?」

杏子師長が心配してくれているのがわかるけれど、
言葉が頭に入ってこない。

誌面に並ぶ文字がぐるぐる回る。

どうしよう。
どうしよう。

「看護部長から注意があったの。厳しいことを言うようだけど、ここはあくまでも病院だから、患者さんに迷惑がかかることは避けなければいけない。報道関係者や野次馬が詰めかけるようなら、しばらく休んでもらった方がいいかもしれないわ」

自分の心臓の音がうるさいくらい頭に響く。

「個人での解決が難しければ、事業に連絡して、職場を異動することも考えましょうか」

師長の冷静な声が頭の中をすり抜けていく。
多分、頷いたのだろうけれど、どうやってその場を後にしたのか、全く覚えていない。

どうしよう。
どうしよう。

知られてしまった。

悠馬の日常を邪魔するつもりじゃなかった。
悠馬を悩ませるつもりじゃなかった。

一生、誰にも言わないつもりだったのに。


「リナ、かわいそう」

「認知するのかな」

「一夜限りなのを勘違いして、迷惑なんじゃないの」

「子どもをだしにされたら、無下にできないよねぇ」

ナースステーションから聞こえてくる会話に足がすくむ。

悠馬とリナさんの邪魔をするつもりじゃなかった。

再会した時に言えなかったのは、
私が臆病なせいだけど、
悠馬がもう結婚してたから。

悠馬の邪魔を、したい訳じゃなかった。

私の存在に気付いたナースさんたちが話を止め、無言のまま回診に出ていった。


ステーションの清掃と点検を終えて、トイレの清掃に回っていると、中から出てきた女性2人組に冷ややかな視線を向けられた。

「あり得ないよね」

「身の程を知れ」

小さいけれど悪意のこもった言葉がはっきりと聞こえる。

そのトイレの中では、全てのトイレットペーパーが便器に捨てられていて、詰まった汚物が床に溢れていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。

泉野あおい
恋愛
人の気持ちに重い軽いがあるなんて変だと思ってた。 でも今、確かに思ってる。 ―――この愛は、重い。 ------------------------------------------ 羽柴健人(30) 羽柴法律事務所所長 鳳凰グループ法律顧問 座右の銘『危ない橋ほど渡りたい。』 好き:柊みゆ 嫌い:褒められること × 柊 みゆ(28) 弱小飲料メーカー→鳳凰グループ・ホウオウ総務部 座右の銘『石橋は叩いて渡りたい。』 好き:走ること 苦手:羽柴健人 ------------------------------------------

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される

永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】 「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。 しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――? 肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

【完結】その男『D』につき~初恋男は独占欲を拗らせる~

蓮美ちま
恋愛
最低最悪な初対面だった。 職場の同僚だろうと人妻ナースだろうと、誘われればおいしく頂いてきた来る者拒まずでお馴染みのチャラ男。 私はこんな人と絶対に関わりたくない! 独占欲が人一倍強く、それで何度も過去に恋を失ってきた私が今必死に探し求めているもの。 それは……『Dの男』 あの男と真逆の、未経験の人。 少しでも私を好きなら、もう私に構わないで。 私が探しているのはあなたじゃない。 私は誰かの『唯一』になりたいの……。

冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています

朱音ゆうひ
恋愛
恋人に浮気された果絵は、弁護士・颯斗に契約結婚を持ちかけられる。 颯斗は美男子で超ハイスペックだが、冷血弁護士と呼ばれている。 結婚してみると超一方的な溺愛が始まり…… 「俺は君のことを愛すが、愛されなくても構わない」 冷血サイコパス弁護士x健気ワーキング大人女子が契約結婚を元に両片想いになり、最終的に両想いになるストーリーです。 別サイトにも投稿しています(https://www.berrys-cafe.jp/book/n1726839)

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

【完結】つぎの色をさがして

蒼村 咲
恋愛
【あらすじ】 主人公・黒田友里は上司兼恋人の谷元亮介から、浮気相手の妊娠を理由に突然別れを告げられる。そしてその浮気相手はなんと同じ職場の後輩社員だった。だが友里の受難はこれでは終わらなかった──…

極道に大切に飼われた、お姫様

真木
恋愛
珈涼は父の組のため、生粋の極道、月岡に大切に飼われるようにして暮らすことになる。憧れていた月岡に甲斐甲斐しく世話を焼かれるのも、教え込まれるように夜ごと結ばれるのも、珈涼はただ恐ろしくて殻にこもっていく。繊細で怖がりな少女と、愛情の伝え方が下手な極道の、すれ違いラブストーリー。

処理中です...