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hage.zakari

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リツキがオレと別れようとした気持ち、分かりたくないけど、…少しだけ分かった気がする。

そんな。
窮地に陥ったオレを救ってくれたのは。

「一緒に行こうか、アイ」

神様レオン様だった。

「新規事業を立ち上げる話があるから、アイは学校に行きながらウチで働けばいいよ」

レオン様っ!

「もともと俺と結婚する予定だったんだから、一緒に住むのは問題ないし」

レオン様?

「婚姻届はアイのサインを待つばかりだし、俺たちの新生活がイタリアの地からなんてオシャレじゃない?アイ」

おい、レオン。

結局。

編入できるイタリアの高校を必死で探し、なんとか潜りこんだ。
当面の間は、高校に通いながらレオンの会社で契約社員として働かせてもらい、社員寮に住まわせてもらうことになった。

リツキの誕生日が来たら、入籍する。
リツキのチームの様子を見ながら同居する。

…多分。

先行きは完璧じゃないけど。

「まあ、それまではまだ、俺にもチャンスがあるってことだな」
「手、出したら、襲うよ。レオちゃん」

リツキが居れば怖くない。

「アイを泣かせてばかりの奴に言われたくないね」
「……」

チラ見すると、リツキとレオンが何やらじゃれあっている。

「…あんなアイは、もう二度と見たくない。分かってるんだろうな?」
「分かってる。…誓う」

…レオンをリツキに近づけるのは、心配な気がしなくもない。

「アイ。そのネックレス、いつでも俺のに変えていいから」

レオンスマイル。ウインク付き。
…これか、リツキをオトす武器は。

「おい。今度こざかしいマネしたら、イタリア中にお前のハゲさらすからな」

背後からささやく氷点下のリツキはコワい。
けど、海外って、ハゲに寛大じゃなかった?


「アイっ、3月まで、いっぱいベタベタしようねっ!」

教室で、チナツがちょっと涙ぐんでて、オレまでうるっとくる。

「ダンナ、迎えに来たみたいだぞ」

ハセガワの言葉に、窓から外をのぞくと、校門にリツキの姿が見えた。

今日、リツキはイタリアに戻り、3月にまたオレを迎えに来る。

「リっく~~~んっ、今行くわ~~~っ」

カワシマが開口一番、教室を飛び出して行く。

ちょっと待て。なんでお前が、…

「きゃあああ~っ、本多く~~~んっ」
「リツキ、久しぶり~~~っ」

カワシマの後に女子も男子も束になって走り出す。

「おっ、前ら、ちょっと、…っ」

リツキはオレを迎えに来たんだっての!

「ドンマイ、コマチ」

タカヤに肩をたたかれ、

「行こうっ、アイっ!」

チナツに手を引かれて、オレも慌てて駆け出した。

「リツーーーっ」

校門で揉みくちゃにされているリツキの元へ。
オレの1番好きな場所へ。

「おせーよ、ハゲ」

どんな人混みの中でも、1番に分かる。
1番に聴こえる。

リツキの声。リツキの笑顔。

オレを抱きとめたリツキが、ハゲにこっそりキスをする。

誓います。

この先にどんな困難が待ち受けていようとも、つないだこの手を離さずに、一緒に乗り越えて行くことを。

雨上がりに虹がかかる。
長いトンネルの向こうは光が溢れてる。

ハゲても生えても、キミと居れば花ざかり。
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