【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

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『…リツキくんがそう言ったなら、アイのためだよ』

チナツの言葉がよみがえる。
…リツキの嘘は、そういうことか。

「痛て」

オレをぎゅうぎゅうに抱きしめながら、ぶつぶつ言ってるリツキを下から頭突いた。

「お前がバカだろ」
「あ?」
「お前が自分で言ったんだろ。…他に何があっても幸せになれない、って」

リツキの目をのぞきこんだ。
茶色がかったきれいな瞳にオレが映る。

いつでもそこに、オレを映して欲しい。
リツキがいなきゃ幸せになれない。

「アイ、…」

リツキの瞳が揺れる。
冬の澄んだ空気に、リツキの息がとける。

「ごめん。…愛してる」

リツキがオレの頬に手を添えて、ゆっくり優しくキスをした。

数え切れないくらいリツキとキスしたけど、いつも、リツキの想いが溢れてくる。

言葉よりもっと、雄弁に聴こえる。
言葉にできない気持ちまで伝わる。

誓いのキス…




「えええ~~~っ、イタリア移住ぅ!?」

教室にチナツの大声が響く。

「え。コマチ、イタリア行くの?」

なぜかオレらの周りに人が集まってきて、違うクラスのタカヤまで顔をのぞかせている。

「…まあ、な」

そんな注目されると、テレるし。
いや、なに? みんなちょっとさみしいとか?

「で、結婚するんだろ」

テレてるオレを差し置いて、ハセガワがトップシークレットを暴露する。

「はあああああ~~~っ!?けっこんーーーーーっっ!?」

教室中がコダマする。
おいっ!ハセガワ、おいしーとこ持ってくなよっ

「…結婚、…かぁ」

チナツがほうけたように呟いて、

「良かったねっ、アイっ!」

オレに抱きついてきた。

「や、…まあ、オレはその、アレなんだけど、リツがさっ、…リツがどうしてもって、…」

「まだ、十代のくせにズルい~っ、コマちゃん、ズルい~~~っ」

…カワシマ、子どもか。

しかしまあ、実際のところ。
口で言うほど簡単じゃなかった。

「は?イタリア? 無理に決まってるじゃない。一体どこにそんなお金があると思ってるの?」

ハナクソ母が至極最もなことを言い出し、

「リツキくんにも負担がかかるし、せめて高校卒業してからでも良いんじゃないか?」

普通が売りの父親は、普通ゆえに常識的なことを言い放った。

「アンタ、それ、リツキの可能性潰しに行くようなもんよ。そんな不安定な状態、共倒れがオチよ」

くそぅ、ハナクソの意見なんて聞いてねーけど、言い返す材料もねー。

リツキんちでも、

「何も今すぐじゃなくても…」

反対は同じで。

自分が無力な17歳だってことを嫌になるくらい痛感した。

「契約金で駆け落ちするか」

リツキは余裕で笑ってたけど、リツキの将来を潰すわけには絶対いかない。
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