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hage.117
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『…リツキくんがそう言ったなら、アイのためだよ』
チナツの言葉がよみがえる。
…リツキの嘘は、そういうことか。
「痛て」
オレをぎゅうぎゅうに抱きしめながら、ぶつぶつ言ってるリツキを下から頭突いた。
「お前がバカだろ」
「あ?」
「お前が自分で言ったんだろ。…他に何があっても幸せになれない、って」
リツキの目をのぞきこんだ。
茶色がかったきれいな瞳にオレが映る。
いつでもそこに、オレを映して欲しい。
リツキがいなきゃ幸せになれない。
「アイ、…」
リツキの瞳が揺れる。
冬の澄んだ空気に、リツキの息がとける。
「ごめん。…愛してる」
リツキがオレの頬に手を添えて、ゆっくり優しくキスをした。
数え切れないくらいリツキとキスしたけど、いつも、リツキの想いが溢れてくる。
言葉よりもっと、雄弁に聴こえる。
言葉にできない気持ちまで伝わる。
誓いのキス…
「えええ~~~っ、イタリア移住ぅ!?」
教室にチナツの大声が響く。
「え。コマチ、イタリア行くの?」
なぜかオレらの周りに人が集まってきて、違うクラスのタカヤまで顔をのぞかせている。
「…まあ、な」
そんな注目されると、テレるし。
いや、なに? みんなちょっとさみしいとか?
「で、結婚するんだろ」
テレてるオレを差し置いて、ハセガワがトップシークレットを暴露する。
「はあああああ~~~っ!?けっこんーーーーーっっ!?」
教室中がコダマする。
おいっ!ハセガワ、おいしーとこ持ってくなよっ
「…結婚、…かぁ」
チナツがほうけたように呟いて、
「良かったねっ、アイっ!」
オレに抱きついてきた。
「や、…まあ、オレはその、アレなんだけど、リツがさっ、…リツがどうしてもって、…」
「まだ、十代のくせにズルい~っ、コマちゃん、ズルい~~~っ」
…カワシマ、子どもか。
しかしまあ、実際のところ。
口で言うほど簡単じゃなかった。
「は?イタリア? 無理に決まってるじゃない。一体どこにそんなお金があると思ってるの?」
ハナクソ母が至極最もなことを言い出し、
「リツキくんにも負担がかかるし、せめて高校卒業してからでも良いんじゃないか?」
普通が売りの父親は、普通ゆえに常識的なことを言い放った。
「アンタ、それ、リツキの可能性潰しに行くようなもんよ。そんな不安定な状態、共倒れがオチよ」
くそぅ、ハナクソの意見なんて聞いてねーけど、言い返す材料もねー。
リツキんちでも、
「何も今すぐじゃなくても…」
反対は同じで。
自分が無力な17歳だってことを嫌になるくらい痛感した。
「契約金で駆け落ちするか」
リツキは余裕で笑ってたけど、リツキの将来を潰すわけには絶対いかない。
チナツの言葉がよみがえる。
…リツキの嘘は、そういうことか。
「痛て」
オレをぎゅうぎゅうに抱きしめながら、ぶつぶつ言ってるリツキを下から頭突いた。
「お前がバカだろ」
「あ?」
「お前が自分で言ったんだろ。…他に何があっても幸せになれない、って」
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茶色がかったきれいな瞳にオレが映る。
いつでもそこに、オレを映して欲しい。
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「アイ、…」
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