【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

文字の大きさ
上 下
117 / 118

hage.117

しおりを挟む
『…リツキくんがそう言ったなら、アイのためだよ』

チナツの言葉がよみがえる。
…リツキの嘘は、そういうことか。

「痛て」

オレをぎゅうぎゅうに抱きしめながら、ぶつぶつ言ってるリツキを下から頭突いた。

「お前がバカだろ」
「あ?」
「お前が自分で言ったんだろ。…他に何があっても幸せになれない、って」

リツキの目をのぞきこんだ。
茶色がかったきれいな瞳にオレが映る。

いつでもそこに、オレを映して欲しい。
リツキがいなきゃ幸せになれない。

「アイ、…」

リツキの瞳が揺れる。
冬の澄んだ空気に、リツキの息がとける。

「ごめん。…愛してる」

リツキがオレの頬に手を添えて、ゆっくり優しくキスをした。

数え切れないくらいリツキとキスしたけど、いつも、リツキの想いが溢れてくる。

言葉よりもっと、雄弁に聴こえる。
言葉にできない気持ちまで伝わる。

誓いのキス…




「えええ~~~っ、イタリア移住ぅ!?」

教室にチナツの大声が響く。

「え。コマチ、イタリア行くの?」

なぜかオレらの周りに人が集まってきて、違うクラスのタカヤまで顔をのぞかせている。

「…まあ、な」

そんな注目されると、テレるし。
いや、なに? みんなちょっとさみしいとか?

「で、結婚するんだろ」

テレてるオレを差し置いて、ハセガワがトップシークレットを暴露する。

「はあああああ~~~っ!?けっこんーーーーーっっ!?」

教室中がコダマする。
おいっ!ハセガワ、おいしーとこ持ってくなよっ

「…結婚、…かぁ」

チナツがほうけたように呟いて、

「良かったねっ、アイっ!」

オレに抱きついてきた。

「や、…まあ、オレはその、アレなんだけど、リツがさっ、…リツがどうしてもって、…」

「まだ、十代のくせにズルい~っ、コマちゃん、ズルい~~~っ」

…カワシマ、子どもか。

しかしまあ、実際のところ。
口で言うほど簡単じゃなかった。

「は?イタリア? 無理に決まってるじゃない。一体どこにそんなお金があると思ってるの?」

ハナクソ母が至極最もなことを言い出し、

「リツキくんにも負担がかかるし、せめて高校卒業してからでも良いんじゃないか?」

普通が売りの父親は、普通ゆえに常識的なことを言い放った。

「アンタ、それ、リツキの可能性潰しに行くようなもんよ。そんな不安定な状態、共倒れがオチよ」

くそぅ、ハナクソの意見なんて聞いてねーけど、言い返す材料もねー。

リツキんちでも、

「何も今すぐじゃなくても…」

反対は同じで。

自分が無力な17歳だってことを嫌になるくらい痛感した。

「契約金で駆け落ちするか」

リツキは余裕で笑ってたけど、リツキの将来を潰すわけには絶対いかない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

カフェ・シュガーパインの事件簿

山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。 個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。 だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

ハルといた夏

イトマドウ
青春
小学6年生の奈月(なつき)が、小学生最後の夏休みに父の実家へ遊びに行くことに。 そこで出会った高校1年性の従姉、小晴(こはる)と虫取りや夏まつりに行くことで 少しだけ大人になる物語。

一夜の男

詩織
恋愛
ドラマとかの出来事かと思ってた。 まさか自分にもこんなことが起きるとは... そして相手の顔を見ることなく逃げたので、知ってる人かも全く知らない人かもわからない。

隣の優等生は、デブ活に命を捧げたいっ

椎名 富比路
青春
女子高生の尾村いすゞは、実家が大衆食堂をやっている。 クラスの隣の席の優等生細江《ほそえ》 桃亜《ももあ》が、「デブ活がしたい」と言ってきた。 桃亜は学生の身でありながら、アプリ制作会社で就職前提のバイトをしている。 だが、連日の学業と激務によって、常に腹を減らしていた。 料理の腕を磨くため、いすゞは桃亜に協力をする。

リリーの幸せ

トモ
恋愛
リリーは小さい頃から、両親に可愛がられず、姉の影のように暮らしていた。近所に住んでいた、ダンだけが自分を大切にしてくれる存在だった。 リリーが7歳の時、ダンは引越してしまう。 大泣きしたリリーに、ダンは大人になったら迎えに来るよ。そう言って別れた。 それから10年が経ち、リリーは相変わらず姉の引き立て役のような存在のまま。 戻ってきたダンは… リリーは幸せになれるのか

消えていく君のカケラと、進まない僕の時間

月ヶ瀬 杏
青春
青山陽咲、藤川大晴、矢野蒼月は、幼稚園の頃からの幼馴染。小学校までは仲の良かった三人だが、十歳のときに起きたある出来事をキッカケに、陽咲と蒼月の仲は疎遠になった。 高二の夏休み、突然、陽咲と蒼月のことを呼び出した大晴が、 「夏休みに、なんか思い出残さない?」 と誘いかけてくる。 「記憶はいつか曖昧になるから、記録を残したいんだ」 という大晴の言葉で、陽咲たちは映画撮影を始める。小学生のときから疎遠になっていた蒼月と話すきっかけができた陽咲は嬉しく思うが、蒼月の態度は会う度に少し違う。 大晴も、陽咲に何か隠し事をしているようで……。 幼なじみの三角関係ラブストーリー。

コミュ障な幼馴染が俺にだけ饒舌な件〜クラスでは孤立している彼女が、二人きりの時だけ俺を愛称で呼んでくる〜

青野そら
青春
友達はいるが、パッとしないモブのような主人公、幸田 多久(こうだ たく)。 彼には美少女の幼馴染がいる。 それはクラスで常にぼっちな橘 理代(たちばな りよ)だ。 学校で話しかけられるとまともに返せない理代だが、多久と二人きりの時だけは素の姿を見せてくれて──。 これは、コミュ障な幼馴染を救う物語。 毎日更新します。

処理中です...