112 / 118
hage.112
しおりを挟む
『…耐えられないのは、俺だな。
お前に1年も触れないのは、…ちょっと、キツイな』
なんでか、リツキが泣いてる夢を見た。
勝手に心変わりして、オレを捨てたくせに、引きこもってたオレよりよっぽど辛そうで、胸がきしんだ。
いいよ、リツキ。
お前が幸せなら、オレの未来にお前がいなくても。
だから、笑ってろよ。
いじわるに偉そうに、いつもみたいに笑っててよ。
「ほんっとに、バッカじゃないですか!?」
夢なのに、胸が痛くて切なくて、まぶたも頭もズキズキするオレに、鬼のような罵倒が降ってきた。
「ちょ、ちょ、ちょっとミクちゃん!謝りにきたんじゃないの?!」
聞き慣れた暑苦しい声が慌てている。
面倒くせーヤツらが来たな、オイ。
こいつらのために目を開けることさえダルい。
「そうですよ。このあたしがやっと諦めたのに、何やってんですか、この人は!」
西本ミク、鼻息荒いし。
「…本多はモテるからさ、美女と並んでても当然っていうか、むしろチビザルより似合うっていうか、そもそもチビザルとの組み合わせが、今世紀最大の謎っていうか、…」
てめー、サオトメ!黙って聞いてりゃ言いたい放題過ぎんだろっ
「それは、あたしも思いますけど」
納得すんなよ、西本ミク!
「…うるさいっスよ」
傷心のオレに配慮はねーのか。
「ちょっと、アイ先輩!なに、のん気に寝てるんですか!?リツキ先輩、イタリア美女と真冬のデートですよ!恋のアバンチュールですよっ!?」
もはや猫をかぶる気もないらしいデビルニシモトが吠える。
ってか、お前に言われたくねーし。
「お前、関係ねーだろ。さんざん人に嫌がらせしといて。…まあ、殴ったのはオレがわりーけど」
横目に伺うとさすがにバツの悪そうなニシモトは、もとのきれいなマシュマロ顏で、殴った痕はどこにも見られなくて安堵した。
「嫌がらせしたこと、…謝ります。ネックレス盗んだりして、カズマさんも巻き込んで、…やり過ぎました。もうしません。リツキ先輩に、殺されるかと思ったし」
初めて、しおらしいニシモトを見た。
そしてなぜかデレる早乙女カズマ。頭ん中、お花畑だな、コラ。
「アイを傷付けたら殺す、って、…本気でした。あんな怖い人見たの、初めてです。実際、窒息するかと思いました」
何を思い出したのか、若干青ざめているニシモトの肩を、えらく誇らし気に早乙女先輩が抱く。
いや、エバるとこじゃねーだろ、お花畑っ
「ともかくっ」
言って、ニシモトは肩に添えられた早乙女先輩の手を握りしめた。
…お花畑、許容か、ニシモト。
「リツキ先輩にはアイ先輩しかいないって嫌ってほどよく分かったんです!だから、あたしも諦めて2人の幸せを願ってるんです!」
なんか怒られてる気がすんだけど、感謝すべきなのか、ここは?
「なのに、今さら他のオンナに譲るとか、そんなの絶対許しませんからっ!!」
えらい剣幕のニシモトだけども。
ちょっと待て。
リツキと別れんのにニシモトの許可はいらなくね?
だけど。
「リツキ先輩は、アイ先輩のためなら何でもしますよ?アイ先輩は違うんですか?」
ニシモトの口調が必死で。
「アイ先輩がいなくても、リツキ先輩が幸せだと思ってるんですか?」
こいつだってネジくれてたけど本気でリツキを想ってたって伝わってきて。
「このまま諦めて、リツキ先輩を失って本当にいいんですかっ!?」
なんでか、励まされた気がした。
「あー、チビザルよ。諦めたら終わりだぞ」
この物言いはどうかと思うけど、まあ、早乙女先輩なりにオレを心配してくれているんだろう。
「ニシモト、チビ猫によろしく言っといて。先輩、青春バンザイっスね」
起き上がって、保健室を出た。久しぶりに、穏やかな気分だった。
お前に1年も触れないのは、…ちょっと、キツイな』
なんでか、リツキが泣いてる夢を見た。
勝手に心変わりして、オレを捨てたくせに、引きこもってたオレよりよっぽど辛そうで、胸がきしんだ。
いいよ、リツキ。
お前が幸せなら、オレの未来にお前がいなくても。
だから、笑ってろよ。
いじわるに偉そうに、いつもみたいに笑っててよ。
「ほんっとに、バッカじゃないですか!?」
夢なのに、胸が痛くて切なくて、まぶたも頭もズキズキするオレに、鬼のような罵倒が降ってきた。
「ちょ、ちょ、ちょっとミクちゃん!謝りにきたんじゃないの?!」
聞き慣れた暑苦しい声が慌てている。
面倒くせーヤツらが来たな、オイ。
こいつらのために目を開けることさえダルい。
「そうですよ。このあたしがやっと諦めたのに、何やってんですか、この人は!」
西本ミク、鼻息荒いし。
「…本多はモテるからさ、美女と並んでても当然っていうか、むしろチビザルより似合うっていうか、そもそもチビザルとの組み合わせが、今世紀最大の謎っていうか、…」
てめー、サオトメ!黙って聞いてりゃ言いたい放題過ぎんだろっ
「それは、あたしも思いますけど」
納得すんなよ、西本ミク!
「…うるさいっスよ」
傷心のオレに配慮はねーのか。
「ちょっと、アイ先輩!なに、のん気に寝てるんですか!?リツキ先輩、イタリア美女と真冬のデートですよ!恋のアバンチュールですよっ!?」
もはや猫をかぶる気もないらしいデビルニシモトが吠える。
ってか、お前に言われたくねーし。
「お前、関係ねーだろ。さんざん人に嫌がらせしといて。…まあ、殴ったのはオレがわりーけど」
横目に伺うとさすがにバツの悪そうなニシモトは、もとのきれいなマシュマロ顏で、殴った痕はどこにも見られなくて安堵した。
「嫌がらせしたこと、…謝ります。ネックレス盗んだりして、カズマさんも巻き込んで、…やり過ぎました。もうしません。リツキ先輩に、殺されるかと思ったし」
初めて、しおらしいニシモトを見た。
そしてなぜかデレる早乙女カズマ。頭ん中、お花畑だな、コラ。
「アイを傷付けたら殺す、って、…本気でした。あんな怖い人見たの、初めてです。実際、窒息するかと思いました」
何を思い出したのか、若干青ざめているニシモトの肩を、えらく誇らし気に早乙女先輩が抱く。
いや、エバるとこじゃねーだろ、お花畑っ
「ともかくっ」
言って、ニシモトは肩に添えられた早乙女先輩の手を握りしめた。
…お花畑、許容か、ニシモト。
「リツキ先輩にはアイ先輩しかいないって嫌ってほどよく分かったんです!だから、あたしも諦めて2人の幸せを願ってるんです!」
なんか怒られてる気がすんだけど、感謝すべきなのか、ここは?
「なのに、今さら他のオンナに譲るとか、そんなの絶対許しませんからっ!!」
えらい剣幕のニシモトだけども。
ちょっと待て。
リツキと別れんのにニシモトの許可はいらなくね?
だけど。
「リツキ先輩は、アイ先輩のためなら何でもしますよ?アイ先輩は違うんですか?」
ニシモトの口調が必死で。
「アイ先輩がいなくても、リツキ先輩が幸せだと思ってるんですか?」
こいつだってネジくれてたけど本気でリツキを想ってたって伝わってきて。
「このまま諦めて、リツキ先輩を失って本当にいいんですかっ!?」
なんでか、励まされた気がした。
「あー、チビザルよ。諦めたら終わりだぞ」
この物言いはどうかと思うけど、まあ、早乙女先輩なりにオレを心配してくれているんだろう。
「ニシモト、チビ猫によろしく言っといて。先輩、青春バンザイっスね」
起き上がって、保健室を出た。久しぶりに、穏やかな気分だった。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
父(とと)さん 母(かか)さん 求めたし
佐倉 蘭
歴史・時代
★第10回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★
ある日、丑丸(うしまる)の父親が流行病でこの世を去った。
貧乏裏店(長屋)暮らしゆえ、家守(大家)のツケでなんとか弔いを終えたと思いきや……
脱藩浪人だった父親が江戸に出てきてから知り合い夫婦(めおと)となった母親が、裏店の連中がなけなしの金を叩いて出し合った線香代(香典)をすべて持って夜逃げした。
齢八つにして丑丸はたった一人、無一文で残された——
※「今宵は遣らずの雨」 「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる