【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

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これが現実なら、いらない。
こんな現実、オレには生きていけない。

これが夢なら、早く覚めて。
早くリアルに連れ帰って本物のリツキに会わせて。

「…助けて。…リツ」

1月の凍てつく空の下、オレの声は、もうリツキには届かない。

わめくことも動くことも出来ないオレをその場に残したまま、リツキの足音が遠ざかる。

早く。
早く、嘘だって言えよ。

戻ってきて、抱きしめて、全部嘘だって。

単純なオレのこと、バカだって笑えよ。

バカで、ハゲで、カッパでカピバラだって、…悪態つきながら抱きしめて。

「リツ、…」

寒いよ、リツキ。
頼むから、オレを温めて。

『お前だけだよ』

リツキ、言ったよな。

『ハゲが全面に広がっても、マジでカッパになっても、お前は俺がもらってやる』

そう言ったよな。

こんなの嘘だよな。
いくらオレがバカだって、わかるよ。

オレがリツキを好きで、リツキがオレを好きだから。

ずっと、ずっと前から、ずっと、ずっと先まで。

だから大丈夫だって。

「リツ、…っ」

リツキは戻ってこない。
オレの声は誰にも聞こえない。

いつまでたっても、目が覚めない。
誰も嘘だって言ってくれない。

リツキを失うくらいなら、一生ハゲのままでいい。

こんなことになるんなら、全面ハゲてカッパの方がいい。

リツキがいなくなったのに、どうしてオレはまだここにいるんだろう。

こんなの到底信じられなくて、オレの頭が、全身が、受け入れるのを拒否していて、このまま寒さに凍って壊れてしまえばいいと思った。

心も身体もバラバラになって、もう何も感じなくなればいい。

「アイ…!」

どれだけ時間が経ったのかわからない。

聞こえた足音はリツキのものじゃなくて。

「アイ、帰ろう」

レオンがしていたマフラーをオレに巻いてくれた。

リツキがいないのに、どこに帰れるんだろう。

リツキがいないのに、なんでオレの世界は終わらないんだろう。

恋は。
2人で始めるのに。
終わる時は1人なんだな…
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