【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

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わずかに形が噛み合わなくて、今更ながらにオレは悟る。

『俺のと対になってる』

慌てて作った偽物でリツキをごまかせるわけなかったんだ。
リツキはピッタリはまる対のネックレスを持っているんだから。

「これ、レオンにもらったってホントか?」

甘くて低いオレの大好きなリツキの声なのに、背筋が凍る。

「あ、…」

後ろめたさでリツキの顔が見れない。

「あのね!リツキくん、これには訳が、…っ」

たまり兼ねたチナツが代わりに弁解してくれようとするのを、リツキは冷たい一瞥で黙らせた。

「…帰るわ」
「リツっ!待ってっ」

このままリツキを帰らせたらマズイことくらい、オレにだってわかる。

向けられた背中に必死でしがみついた。

「…離せ」

リツキの声が、ぞっとするほど冷たくて、指先が凍って、…

オレの腕をすり抜けて、リツキが出て行った。

「アイ、追いかけなよ!リツキくん、誤解してる!これじゃ西本ミクの思うままだよ」

頭では、チナツの言うとおりだって分かってる。
でも足が動かない。

リツキの冷たい拒絶に全身が凍りついて、

「…チナツ、オレ、…」

手も足も、心臓さえも、もう動かせないような気がした。

「アイ、大丈夫だよ。リツキくんなら、アイのこと分かってくれる。西本ミクからネックレス取り返して、ちゃんと謝りな」

チナツが優しくオレを諭す。
チナツの言葉だけが、今のオレを動かす全てだった。

リツキ、空港からここに直接来たのかな。
最初にオレに、会いに来てくれたのかな。

そう思ったら、どんなに冷たく拒絶されても、いじけてる場合じゃねーって思いが込み上げてきた。

足に気合いを入れた。

でも戻ると、ニシモトと早乙女先輩は帰った後で、リツキもとっくに姿を消していた。



「本当に申し訳ありませんでした!!」

仕事上がりに再度、深々と頭を下げた。

店長とヒグチがニシモトをとりなして、頬を冷やした後、勘定も無しにしてお詫びのデザートを持ち帰らせたらしい。

「アイちゃんをあそこまで怒らせるようなことを、あの子がしたんでしょう」

店長はオレをクビにしてもイイのに、そう言って穏和に笑った。

「まあ、でも、手を出すのはやめた方がいいね。どうしたって、こっちが悪くなるから」

笑って手を振る店長にお礼を言って、チナツとタケダと別れた後、ヒグチと帰った。

「…本多くんが」

沈黙のまま歩いた後、ヒグチがぽつりとつぶやいた。

「アイちゃんの仇は打ったと思うよ」

え?

「あの子、本多くんに何か言われて、青ざめてた。彼氏の方は彼女をかばってたけど、…なんとなく事情分かったんじゃないかなぁ」

リツキが?

「あの子がしてたネックレスのせいなんでしょ?多分、本多くんが取り返してるよ」

ヒグチを見ると、優しく笑っていた。

「離れてても、分かってるんだね、本多くん。付けいる隙、全くないよねぇ」

「ヒグチ!オレ、…っ」

胸に熱いものが込み上げてきて、居ても立っても居られなくなった。

「まあ、仲良くね~」

手を振るヒグチに礼を言って、駆け出した。

リツキ。
オレ、全然イイ子じゃなかったけど、やり直させて。

おかえりって、もう一度迎えさせて。

それで、ネックレスのこと、謝って、いっぱい謝って、それで、…

団地に着いた時には息が切れていた。
辺りはすっかり暗くなり、オレの吐く息が白く立ち昇る。

リツキの家に向かおうと息を整えた時、

「あ、アイ~」

リツキの家族が外階段を降りてきた。

「おかえり~、リツとラウラとごはん食べに行くんだよ」

無邪気に笑うナツキの手は、ブロンド美女の手につながれ、その横に立つリツキの腕には、美女の腕が絡められていた。

イタリアの美女ラウラが、当然のようにリツキの隣で、悠然と微笑んでいた。
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