【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

文字の大きさ
上 下
105 / 118

hage.105

しおりを挟む
チナツもわからないみたいだし、大丈夫かな、…とちょっと安心しかけた時、

「チビザル~っ、ちゃんと働いてるかぁ」

せっかくの冬休みだというのに、暑苦しさ全開の早乙女先輩が店にやってきた。

「先輩、ランチ、スか」
「おおう!かっ、…彼女とな」

はにかむな、早乙女カズマ!

よく見るとデカい図体の先輩の後ろに今日も天使然とした西本ミクがいる。
あくまで天使然。実際デビルまっしぐら。

「こちらのお席どうぞ~」

デビルニシモトとかかわり合うとろくな目に合わないのは経験済みだから、さっさと案内して、後退したい。

「本日のランチ2つ。俺と彼女の」

早乙女先輩がデレている。はっきり言って気色悪いが、まあ幸せそうだから良しとする。

「アイ!西本ミクじゃん!…大丈夫?」

先輩とニシモトに気づいたチナツがオレに耳打ちするけど、先輩がはしゃいでいるだけで、ニシモトは至っておとなしい。

触らぬ神に祟りなし、ってヤツだよな、と思いながら、

「本日のランチ、お待たせしました」

料理を置いて、さっさと戻ろうとした時、…それが目に入った。

ニシモトの首元で光っている。
リツキのピースネックレス。

心臓が、嫌な音を立てて動く。
身体中の血が一気に冷えて、急速に沸き立つ。

ちょっと待て。
なんでお前がそれを…!!

「あ、チビザル、気づいてくれた?恋のキューピッドネックレス!俺、見つけちゃったのよ。お前、同じのはないって言ってたけど、そっくりじゃん?効力もバッチリで、俺とミクちゃんの仲もさぁ、…」

「お前!それ、どこで見つけたんだよ!?」

完全に頭が沸騰していて、早乙女先輩の能天気な声は聞こえなかった。

ニシモトの胸ぐらにつかみかかると、ニシモトはほんの一瞬だけ、満足そうな笑みを浮かべてから、

「きゃあ!な、…なんですか、怖いっ」

怯えた表情で目に涙を浮かべた。

その一瞬の、してやったり的な笑みで確信した。

「お前、ふざけんなよ!!」

完全に頭に血が上って、ニシモトの挑発に乗ってることにも気づけなかった。

「きゃあ!」
「おいっ、止めろ!」

オレの右手は力任せにニシモトの顔面を殴っていて、ニシモトは身体ごと後ろのテーブルに倒れ込んだ。

「ミクちゃんっ!」

早乙女先輩が慌ててニシモトを助け起こし、

「どこまで汚ねーマネすりゃ気が済むんだっ!」

更につかみかかろうとしたオレは、店長に取り押さえられてバッグヤードに引きずられていった。

「アイちゃん、落ちついて。ね?」

スタッフルームで店長になだめられたけど、悔しくて怒りが収まらねー。

リツキがオレにくれた想いを土足で踏みにじられた気がした。

オレがなくしたんじゃない。
あいつが奪ったんだ。

「アイ、どうしたの?何があった?」

チナツが来たから、店長は仕事に戻っていった。

「…これ、リツキにもらったヤツじゃないんだ」

俺が首から下げているのは、レオンがくれたカモフラージュ。

「あいつが持ってた。ニシモトがリツキの、…」

悔しくて声が震える。

「それ、ホントなの!?許せないっ!取り返すよ、アイ!」

チナツがオレの腕をつかんでドアに向き直った時、控えめなノックの音と共に、タケダが顔をのぞかせた。

「あのさ、本多くんが来たよ」

え、…。

タケダの向こうにリツキが見えた。

「あ、リツ…」

リツキはニコリともしなかった。イタリアで別れた時の甘い顔とは別人みたいで、リツキにかけた言葉が途切れる。

スタッフルームに入ってきたリツキは、何も言わずに自分のネックレスを外してオレの前に立つと、オレの首元のピースネックレスをつかんで二つを合わせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

【完結】あの日、君の本音に気付けなくて

ナカジマ
青春
藤木涼介と清水凛は、中学3年のバレンタインで両片思いから両想いになった。しかし高校生になってからは、何となく疎遠になってしまっていた。両想いになったからゴールだと勘違いしている涼介と、ちゃんと恋人同士になりたいと言い出せない凛。バスケ部が楽しいから良いんだと開き直った涼介と、自分は揶揄われたのではないかと疑い始める凛。お互いに好意があるにも関わらず、以前よりも複雑な両片思いに陥った2人。 とある理由から、女子の好意を理解出来なくなったバスケ部男子と、引っ込み思案で中々気持ちを伝えられない吹奏楽部女子。普通の男女が繰り広げる、部活に勉強、修学旅行。不器用な2人の青春やり直しストーリー。

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

燦歌を乗せて

河島アドミ
青春
「燦歌彩月第六作――」その先の言葉は夜に消える。 久慈家の名家である天才画家・久慈色助は大学にも通わず怠惰な毎日をダラダラと過ごす。ある日、久慈家を勘当されホームレス生活がスタートすると、心を奪われる被写体・田中ゆかりに出会う。 第六作を描く。そう心に誓った色助は、己の未熟とホームレス生活を満喫しながら作品へ向き合っていく。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

Missing you

廣瀬純一
青春
突然消えた彼女を探しに山口県に訪れた伊東達也が自転車で県内の各市を巡り様々な体験や不思議な体験をする話

EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。 ※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

処理中です...