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hage.105
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チナツもわからないみたいだし、大丈夫かな、…とちょっと安心しかけた時、
「チビザル~っ、ちゃんと働いてるかぁ」
せっかくの冬休みだというのに、暑苦しさ全開の早乙女先輩が店にやってきた。
「先輩、ランチ、スか」
「おおう!かっ、…彼女とな」
はにかむな、早乙女カズマ!
よく見るとデカい図体の先輩の後ろに今日も天使然とした西本ミクがいる。
あくまで天使然。実際デビルまっしぐら。
「こちらのお席どうぞ~」
デビルニシモトとかかわり合うとろくな目に合わないのは経験済みだから、さっさと案内して、後退したい。
「本日のランチ2つ。俺と彼女の」
早乙女先輩がデレている。はっきり言って気色悪いが、まあ幸せそうだから良しとする。
「アイ!西本ミクじゃん!…大丈夫?」
先輩とニシモトに気づいたチナツがオレに耳打ちするけど、先輩がはしゃいでいるだけで、ニシモトは至っておとなしい。
触らぬ神に祟りなし、ってヤツだよな、と思いながら、
「本日のランチ、お待たせしました」
料理を置いて、さっさと戻ろうとした時、…それが目に入った。
ニシモトの首元で光っている。
リツキのピースネックレス。
心臓が、嫌な音を立てて動く。
身体中の血が一気に冷えて、急速に沸き立つ。
ちょっと待て。
なんでお前がそれを…!!
「あ、チビザル、気づいてくれた?恋のキューピッドネックレス!俺、見つけちゃったのよ。お前、同じのはないって言ってたけど、そっくりじゃん?効力もバッチリで、俺とミクちゃんの仲もさぁ、…」
「お前!それ、どこで見つけたんだよ!?」
完全に頭が沸騰していて、早乙女先輩の能天気な声は聞こえなかった。
ニシモトの胸ぐらにつかみかかると、ニシモトはほんの一瞬だけ、満足そうな笑みを浮かべてから、
「きゃあ!な、…なんですか、怖いっ」
怯えた表情で目に涙を浮かべた。
その一瞬の、してやったり的な笑みで確信した。
「お前、ふざけんなよ!!」
完全に頭に血が上って、ニシモトの挑発に乗ってることにも気づけなかった。
「きゃあ!」
「おいっ、止めろ!」
オレの右手は力任せにニシモトの顔面を殴っていて、ニシモトは身体ごと後ろのテーブルに倒れ込んだ。
「ミクちゃんっ!」
早乙女先輩が慌ててニシモトを助け起こし、
「どこまで汚ねーマネすりゃ気が済むんだっ!」
更につかみかかろうとしたオレは、店長に取り押さえられてバッグヤードに引きずられていった。
「アイちゃん、落ちついて。ね?」
スタッフルームで店長になだめられたけど、悔しくて怒りが収まらねー。
リツキがオレにくれた想いを土足で踏みにじられた気がした。
オレがなくしたんじゃない。
あいつが奪ったんだ。
「アイ、どうしたの?何があった?」
チナツが来たから、店長は仕事に戻っていった。
「…これ、リツキにもらったヤツじゃないんだ」
俺が首から下げているのは、レオンがくれたカモフラージュ。
「あいつが持ってた。ニシモトがリツキの、…」
悔しくて声が震える。
「それ、ホントなの!?許せないっ!取り返すよ、アイ!」
チナツがオレの腕をつかんでドアに向き直った時、控えめなノックの音と共に、タケダが顔をのぞかせた。
「あのさ、本多くんが来たよ」
え、…。
タケダの向こうにリツキが見えた。
「あ、リツ…」
リツキはニコリともしなかった。イタリアで別れた時の甘い顔とは別人みたいで、リツキにかけた言葉が途切れる。
スタッフルームに入ってきたリツキは、何も言わずに自分のネックレスを外してオレの前に立つと、オレの首元のピースネックレスをつかんで二つを合わせた。
「チビザル~っ、ちゃんと働いてるかぁ」
せっかくの冬休みだというのに、暑苦しさ全開の早乙女先輩が店にやってきた。
「先輩、ランチ、スか」
「おおう!かっ、…彼女とな」
はにかむな、早乙女カズマ!
よく見るとデカい図体の先輩の後ろに今日も天使然とした西本ミクがいる。
あくまで天使然。実際デビルまっしぐら。
「こちらのお席どうぞ~」
デビルニシモトとかかわり合うとろくな目に合わないのは経験済みだから、さっさと案内して、後退したい。
「本日のランチ2つ。俺と彼女の」
早乙女先輩がデレている。はっきり言って気色悪いが、まあ幸せそうだから良しとする。
「アイ!西本ミクじゃん!…大丈夫?」
先輩とニシモトに気づいたチナツがオレに耳打ちするけど、先輩がはしゃいでいるだけで、ニシモトは至っておとなしい。
触らぬ神に祟りなし、ってヤツだよな、と思いながら、
「本日のランチ、お待たせしました」
料理を置いて、さっさと戻ろうとした時、…それが目に入った。
ニシモトの首元で光っている。
リツキのピースネックレス。
心臓が、嫌な音を立てて動く。
身体中の血が一気に冷えて、急速に沸き立つ。
ちょっと待て。
なんでお前がそれを…!!
「あ、チビザル、気づいてくれた?恋のキューピッドネックレス!俺、見つけちゃったのよ。お前、同じのはないって言ってたけど、そっくりじゃん?効力もバッチリで、俺とミクちゃんの仲もさぁ、…」
「お前!それ、どこで見つけたんだよ!?」
完全に頭が沸騰していて、早乙女先輩の能天気な声は聞こえなかった。
ニシモトの胸ぐらにつかみかかると、ニシモトはほんの一瞬だけ、満足そうな笑みを浮かべてから、
「きゃあ!な、…なんですか、怖いっ」
怯えた表情で目に涙を浮かべた。
その一瞬の、してやったり的な笑みで確信した。
「お前、ふざけんなよ!!」
完全に頭に血が上って、ニシモトの挑発に乗ってることにも気づけなかった。
「きゃあ!」
「おいっ、止めろ!」
オレの右手は力任せにニシモトの顔面を殴っていて、ニシモトは身体ごと後ろのテーブルに倒れ込んだ。
「ミクちゃんっ!」
早乙女先輩が慌ててニシモトを助け起こし、
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更につかみかかろうとしたオレは、店長に取り押さえられてバッグヤードに引きずられていった。
「アイちゃん、落ちついて。ね?」
スタッフルームで店長になだめられたけど、悔しくて怒りが収まらねー。
リツキがオレにくれた想いを土足で踏みにじられた気がした。
オレがなくしたんじゃない。
あいつが奪ったんだ。
「アイ、どうしたの?何があった?」
チナツが来たから、店長は仕事に戻っていった。
「…これ、リツキにもらったヤツじゃないんだ」
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「あいつが持ってた。ニシモトがリツキの、…」
悔しくて声が震える。
「それ、ホントなの!?許せないっ!取り返すよ、アイ!」
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え、…。
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「あ、リツ…」
リツキはニコリともしなかった。イタリアで別れた時の甘い顔とは別人みたいで、リツキにかけた言葉が途切れる。
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