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hage.103
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『売ってねえよ。俺のオリジナルだから』
…マジか!
リツキにメールでネックレスのこと聞いてみたら、そんな返信がきた。
ピースネックレスはリツキがデザインして、ジュエリー工房で形にしてもらったらしい。名前は自分で彫ったっつってた。
なんつーか、嫌味なくらい器用なヤツだな、リツキ。
外したネックレスを目の前に掲げてみる。
胸の奥がギュッてなる。
俺のために、リツキが作ってくれた。カッパメールの陰でこんなの準備して、ホテルも予約して、…
リツキは、オレがさみしいってわかってたのかもしれない。
だから一晩中、一緒にいてくれたのかもしれない。
ネックレスを胸に握りしめた。
もう。大丈夫。
あと半年離れてても、オレはリツキを信じてるし、不安はない。
ずっと大事にしようと心底思った。
リツキがオレのためにくれたネックレス。
まさか。
なくしてしまうなんて。
オレはどこまでバカなんだろう。
「アイ、すごいね。1500mぶっちぎりじゃん」
「まあな、オレ、体育だけは小学校から満点だからな」
…他教科のことは語るまい。
「あ~、疲れたぁ」
「高校女子に長距離走らせるなっての」
「大林、マジ、鬼~」
「だから、オニバヤシだって」
体育の授業が終わって、ぶうぶう言いながら着替える更衣室。
さっさと着替え終わったオレは、もう習慣になっていて意識しないまま、ポケットを探る。
オニバヤシがうるせーから、体育の間はネックレスを外して制服のポケットに入れてある。
それ以外は学校でもずっと付けてる。オレのお守り。
…れ?
「お待たせ、アイ」
何度探っても指先に感触がない。
「どしたの、アイ?」
左右のポケットをひっくり返す。
体操着袋を裏返す。ロッカー、床を隈なく探す。
…ない。
指先が冷たくなって、背中に冷や汗が伝う。
…ネックレスがない。
「アイ、…どうしたの?」
床に這いつくばったまま、動けなくなったオレに、チナツが心配そうな目を向ける。
「…なくした」
口に出したら、余計に思い知らされる。
「リツのネックレス、…なくしちゃった」
自分でもギョッとするほど、声が震えていた。
どうしよう…!
「アイ、落ち着いて思い出してみなよ。最後に見たのは?いつ、どこで?」
チナツがオレの肩を抱く。
「体育の前に、ここで外してポケットに入れたんだ。確かに、入れたんだ…」
でも、ない。
何度確かめても、ない。
「ポケットからなくなるなんて…」
チナツがオレを立たせて目をのぞき込む。
「考えたくないけど、なくなったんじゃなくて、…」
「いや。オレ、どっかに落としてるのかも!」
しっかりしろ、と足に言い聞かせる。
「チナツ、オレ、今日通ったところ全部探してくるっ」
「アイ…!」
更衣室から走り出た。
考えるな。他の誰かのせいなんて。
…マジか!
リツキにメールでネックレスのこと聞いてみたら、そんな返信がきた。
ピースネックレスはリツキがデザインして、ジュエリー工房で形にしてもらったらしい。名前は自分で彫ったっつってた。
なんつーか、嫌味なくらい器用なヤツだな、リツキ。
外したネックレスを目の前に掲げてみる。
胸の奥がギュッてなる。
俺のために、リツキが作ってくれた。カッパメールの陰でこんなの準備して、ホテルも予約して、…
リツキは、オレがさみしいってわかってたのかもしれない。
だから一晩中、一緒にいてくれたのかもしれない。
ネックレスを胸に握りしめた。
もう。大丈夫。
あと半年離れてても、オレはリツキを信じてるし、不安はない。
ずっと大事にしようと心底思った。
リツキがオレのためにくれたネックレス。
まさか。
なくしてしまうなんて。
オレはどこまでバカなんだろう。
「アイ、すごいね。1500mぶっちぎりじゃん」
「まあな、オレ、体育だけは小学校から満点だからな」
…他教科のことは語るまい。
「あ~、疲れたぁ」
「高校女子に長距離走らせるなっての」
「大林、マジ、鬼~」
「だから、オニバヤシだって」
体育の授業が終わって、ぶうぶう言いながら着替える更衣室。
さっさと着替え終わったオレは、もう習慣になっていて意識しないまま、ポケットを探る。
オニバヤシがうるせーから、体育の間はネックレスを外して制服のポケットに入れてある。
それ以外は学校でもずっと付けてる。オレのお守り。
…れ?
「お待たせ、アイ」
何度探っても指先に感触がない。
「どしたの、アイ?」
左右のポケットをひっくり返す。
体操着袋を裏返す。ロッカー、床を隈なく探す。
…ない。
指先が冷たくなって、背中に冷や汗が伝う。
…ネックレスがない。
「アイ、…どうしたの?」
床に這いつくばったまま、動けなくなったオレに、チナツが心配そうな目を向ける。
「…なくした」
口に出したら、余計に思い知らされる。
「リツのネックレス、…なくしちゃった」
自分でもギョッとするほど、声が震えていた。
どうしよう…!
「アイ、落ち着いて思い出してみなよ。最後に見たのは?いつ、どこで?」
チナツがオレの肩を抱く。
「体育の前に、ここで外してポケットに入れたんだ。確かに、入れたんだ…」
でも、ない。
何度確かめても、ない。
「ポケットからなくなるなんて…」
チナツがオレを立たせて目をのぞき込む。
「考えたくないけど、なくなったんじゃなくて、…」
「いや。オレ、どっかに落としてるのかも!」
しっかりしろ、と足に言い聞かせる。
「チナツ、オレ、今日通ったところ全部探してくるっ」
「アイ…!」
更衣室から走り出た。
考えるな。他の誰かのせいなんて。
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