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hage.101
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修学旅行で来れなくても、バイト代貯めて、リツキに会いに行こうと思ってたけど、…
もう一度来れたら、その時は、オレもリツキに何かあげてーな。
「アイ」
チナツが、オレの考えを読んだかのように、オレの頭をなでた。
「優しさって、優しさで返したくなるよね。やっぱりリツキくんは信じられるよ。アイのこと、すごく大事にしてるもん。西本ミクが何言ってきても、もう動揺しなくて大丈夫」
「そうだな」
素直にうなずけた。
リツキを見たら、大丈夫だって思えた。
離れてても、信じられるって思えた。
まだ残るリツキの温もりが、オレを勇気づけていた。
「産毛が生えてきてる」
マジかっ! マジでかっ!?
イタリアから戻って、受診した病院で、クールな皮膚科医が珍しく興奮気味に告げた。
この朗報に、思わず皮膚科医と手に手を取り合ってコサックダンスを踊ってしまったオレは、我に返った皮膚科医にはたかれた。
「君には冷静さが著しく欠如している。この私がコサックダンスなど…!」
ブツブツ。
いや、センセ、ノリノリでしたぜ?
「アイ、おかえり」
うちに帰ると、ほとんど住み着いているんじゃないかと思われるレオンに出迎えられた。
「アップルパイが出来てるから、一緒に食べよう」
レオンはニコニコして、かいがいしく世話を焼いてくれるんだけど、…
「レオン様~っ、このパイ、神業ですわ~」
本当はひどく傷つけてしまったんじゃないかと思う。
「口に合ってよかった。今、アイと行きます」
ハナクソごときに愛想のムダ遣いをするレオンを上目に見ると、
「ほら。手を洗っておいで」
レオンはふんわりと上品に笑う。
こういう顔は、オレが大好きだったレオちゃんそのものだ。
「本多リツキに頼まれたから、ってわけじゃない」
レオンがぽつりと、何か言った。
「え?」
「俺だってアイを、泣かせたくないんだよ」
レオンがオレの頭を撫でる。
レオンのアップルパイは甘くて、めちゃめちゃおいしくて、だけどほんのり酸っぱかった。
「ちょっとアイ!食べ過ぎ~」
「まあまあ、また作りますから」
リツキ。
オレは大丈夫だよ。
オレの周りには、優しさが溢れてるから。
その晩、リツキに祝・産毛メールを送った。
リツキが笑っててくれたらいいな。
『おやすみ、まだらハゲカッパ』
…若干ムカつくけどな。
もう一度来れたら、その時は、オレもリツキに何かあげてーな。
「アイ」
チナツが、オレの考えを読んだかのように、オレの頭をなでた。
「優しさって、優しさで返したくなるよね。やっぱりリツキくんは信じられるよ。アイのこと、すごく大事にしてるもん。西本ミクが何言ってきても、もう動揺しなくて大丈夫」
「そうだな」
素直にうなずけた。
リツキを見たら、大丈夫だって思えた。
離れてても、信じられるって思えた。
まだ残るリツキの温もりが、オレを勇気づけていた。
「産毛が生えてきてる」
マジかっ! マジでかっ!?
イタリアから戻って、受診した病院で、クールな皮膚科医が珍しく興奮気味に告げた。
この朗報に、思わず皮膚科医と手に手を取り合ってコサックダンスを踊ってしまったオレは、我に返った皮膚科医にはたかれた。
「君には冷静さが著しく欠如している。この私がコサックダンスなど…!」
ブツブツ。
いや、センセ、ノリノリでしたぜ?
「アイ、おかえり」
うちに帰ると、ほとんど住み着いているんじゃないかと思われるレオンに出迎えられた。
「アップルパイが出来てるから、一緒に食べよう」
レオンはニコニコして、かいがいしく世話を焼いてくれるんだけど、…
「レオン様~っ、このパイ、神業ですわ~」
本当はひどく傷つけてしまったんじゃないかと思う。
「口に合ってよかった。今、アイと行きます」
ハナクソごときに愛想のムダ遣いをするレオンを上目に見ると、
「ほら。手を洗っておいで」
レオンはふんわりと上品に笑う。
こういう顔は、オレが大好きだったレオちゃんそのものだ。
「本多リツキに頼まれたから、ってわけじゃない」
レオンがぽつりと、何か言った。
「え?」
「俺だってアイを、泣かせたくないんだよ」
レオンがオレの頭を撫でる。
レオンのアップルパイは甘くて、めちゃめちゃおいしくて、だけどほんのり酸っぱかった。
「ちょっとアイ!食べ過ぎ~」
「まあまあ、また作りますから」
リツキ。
オレは大丈夫だよ。
オレの周りには、優しさが溢れてるから。
その晩、リツキに祝・産毛メールを送った。
リツキが笑っててくれたらいいな。
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…若干ムカつくけどな。
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