【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

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リツキと離れて、初めてわかった。

会えないって、
何してるかわからないって、
怖いくらい不安になる。

バカみたいに小さいことで、
疑ったり、悲しくなったり、
悪い想像ばかりする。

「リツ、…」

当たり前みたいにずっとそばにいたけど、それは全然当たり前じゃなくて、

「離さないで」

奇跡みたいに、幸せなことだったんだ。

リツキにしがみついた。

夜が明けたら、オレは日本に帰らなきゃならないし、リツキはまだ半年以上イタリアに滞在する。

リツキのキスも、リツキの温もりも、忘れたくないのにどんどん時間に追いやられて、つないだ手も確かな熱も幻みたいに消えてしまう。

リツキとまた、離れるのが怖い。

いつもリツキのそばに。
誰よりも一番近くに。

オレが居たいよ。

「アイ…」

リツキがオレの涙に口づける。

「離すわけないだろ」

押しつぶされそうなほど、強く強く抱きしめられた、リツキの腕の温もりを、忘れたくない。

泣きたくなるほど、優しく優しくオレを抱くリツキの手も、指も、唇も、全部残しておきたい。

リツキと重なりあって、どこまでも溶け合って、もうこのまま一つになれたらいいと思った。

もう離れなくていいように、
いつでもリツキを感じていられるように。

夜の間、オレとリツキはずっと1ミリの隙間もないくらい、お互いのすぐそばにいた。

リツキがオレを内側から優しく揺らして、何度も飛ばされたけど、気づくとそのまま、まだリツキがいて、オレを抱きしめていた。

朝が来なければいいって、初めて思った。

だけど。

夜が明け切る前に、リツキとホテルを後にした。

リツキと離れたら、自分の半分が、なくなったみたいな気がした。

多分オレは、すごく不安な顔をしてたんだと思う。

リツキが、オレの頭を撫でて、

「アイ、後ろ向いて」

オレの首にネックレスを付けた。
ヘッドにパズルのピースみたいなのが付いてて、小さいダイヤが散っている。
裏返すと、Ritsukiって彫ってあった。

オレが振り返ってリツキを見たら、リツキの胸元にも同じものが揺れていた。

「俺のと対になってる」

リツキが自分のをつまんでオレのと合わせるとピースがはまった。
裏のRitsukiとAiがつながる。

う、わ。

リツキのくせに、ロマンチックで言葉が出ない。

かわりになんか、涙が出て、そんなオレをリツキが引き寄せた。

「お前だけだから。もうちょっとだけ、待ってて」

リツキの腕の中で頷くと、リツキがオレの髪を撫でて、ハゲにキスした。

「お前のハゲが全面に広がっても、マジでカッパになっても、お前は俺がもらってやるから」

リツキのバカ。
涙が止まらない。

「…リツ、好きだよ」

つぶやいたオレを、リツキが強く抱きしめた。

「知ってるよ、バーカ」

リツキの声が、切なくかすれていた。

チナツがネックレスをして、幸せそうだったのが、今はよくわかる。

モノより気持ちだって分かってるけど、好きなヤツからもらったモノはやっぱり特別で。

それを身に付けていられたら、心強くなる。

離れている時のさみしさも不安も知ってしまったから、また離れるのはつらいけど、頑張れそうな気がするんだから、オンナノコなんて現金だ。

現金で、バカなオレは、リツキでいっぱいいっぱいで、すっかり忘れていた。

レオンのこと。

オレらの学校の生徒が滞在しているホテル近くでタクシーを降りて、半ばリツキに抱きかかえられながら戻ったオレの前に、

レオンが仁王立ちして待っていた。
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