【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

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「アイ、ごめん。もうちょい、我慢して」

リツキがオレの涙に唇を寄せると、オレの手を引いて教室の窓から外をうかがう。

「抜けるぞ」

オレを振り返ったリツキが、いたずらな顔で、晴れやかに笑う。

リツキに手を引かれて、教室の窓を乗り越え、茂みに隠れながら、リツキが生活しているらしい寮の裏口まで走って、柵をよじ登った。

ミラノの街には、夕闇が落ちていた。

リツキは通りをしばらく走ってからタクシーを止めて乗り込むと、イタリア語で何やら告げた。

タクシーがゆっくり走り出す。

リツキがずっと、オレの手をつないでいる。
リツキの体温を感じる。

知らない街で、黙って抜け出して、行き先もわからない。

だけど。

指の間に絡められたリツキの骨のある長い指。

行き着く先が天国でも地獄でも、リツキと一緒なら怖くない。

「…っ、リツ…っ」
「黙って」

ホテルの前でタクシーを降りて、リツキに連れられて高層階の一室に入った。

ドアが閉まるよりも早く、リツキが猛然と口づけてくる。
さっきみたいに優しく触れる感じじゃなくて、飢えたケモノみたいに、骨の髄まで食い尽くされそうな、深い深いキス。

息が出来なくて、空気を求めてあえぐと、容赦なくリツキに奪われる。

リツキのキスにいっぱいいっぱいで、気づくと半裸状態でベッドにいた。

ちょっと待て!エロサル!
てめー、いつの間に脱がしてんだよっ

「まっ、…リツ!オレ、お前に確かめたいことが、…っ」

必死でリツキを押しとどめると、

「ちゃんと聞く」

リツキがオレの目と目を合わせながら、柔らかいキスを落とす。

「何でも、お前の言うこと聞いてやるから、抱かせて?」

リツキの瞳が狂おしいほど、オレを求めて揺れていた。

「ごめん、アイ」

リツキの声が切なくて。

「俺、もう一秒も待てない」

リツキの身体が熱くて。

どんだけヤりたかったんだよって思ったら、おかしくて笑いたいのに、泣きたくなった。

「アイ…っ」

オレの身体をなぞるリツキの指も唇も、信じられないくらい熱くて、リツキのくせにまるで余裕がなくて、

「…リツっ」

ただ愛しくてリツキを抱きしめた。

リツキが身体全部でオレを求めてる。
触れ合うところ全てで「好き」って言ってる。

つないだ手も絡めた舌も、オレだけに向けられてて、だから、あっという間に溶かされた。

リツキがオレの中にいて、会いたくて会いたくて、やっと会えたって実感した。

「アイ…っ」

何度も何度もオレを呼ぶリツキも同じなのかもしれない。

この実感が欲しかったのかもしれない。

そんな気がした。
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