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hage.95
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「アイ、ごめん。もうちょい、我慢して」
リツキがオレの涙に唇を寄せると、オレの手を引いて教室の窓から外をうかがう。
「抜けるぞ」
オレを振り返ったリツキが、いたずらな顔で、晴れやかに笑う。
リツキに手を引かれて、教室の窓を乗り越え、茂みに隠れながら、リツキが生活しているらしい寮の裏口まで走って、柵をよじ登った。
ミラノの街には、夕闇が落ちていた。
リツキは通りをしばらく走ってからタクシーを止めて乗り込むと、イタリア語で何やら告げた。
タクシーがゆっくり走り出す。
リツキがずっと、オレの手をつないでいる。
リツキの体温を感じる。
知らない街で、黙って抜け出して、行き先もわからない。
だけど。
指の間に絡められたリツキの骨のある長い指。
行き着く先が天国でも地獄でも、リツキと一緒なら怖くない。
「…っ、リツ…っ」
「黙って」
ホテルの前でタクシーを降りて、リツキに連れられて高層階の一室に入った。
ドアが閉まるよりも早く、リツキが猛然と口づけてくる。
さっきみたいに優しく触れる感じじゃなくて、飢えたケモノみたいに、骨の髄まで食い尽くされそうな、深い深いキス。
息が出来なくて、空気を求めてあえぐと、容赦なくリツキに奪われる。
リツキのキスにいっぱいいっぱいで、気づくと半裸状態でベッドにいた。
ちょっと待て!エロサル!
てめー、いつの間に脱がしてんだよっ
「まっ、…リツ!オレ、お前に確かめたいことが、…っ」
必死でリツキを押しとどめると、
「ちゃんと聞く」
リツキがオレの目と目を合わせながら、柔らかいキスを落とす。
「何でも、お前の言うこと聞いてやるから、抱かせて?」
リツキの瞳が狂おしいほど、オレを求めて揺れていた。
「ごめん、アイ」
リツキの声が切なくて。
「俺、もう一秒も待てない」
リツキの身体が熱くて。
どんだけヤりたかったんだよって思ったら、おかしくて笑いたいのに、泣きたくなった。
「アイ…っ」
オレの身体をなぞるリツキの指も唇も、信じられないくらい熱くて、リツキのくせにまるで余裕がなくて、
「…リツっ」
ただ愛しくてリツキを抱きしめた。
リツキが身体全部でオレを求めてる。
触れ合うところ全てで「好き」って言ってる。
つないだ手も絡めた舌も、オレだけに向けられてて、だから、あっという間に溶かされた。
リツキがオレの中にいて、会いたくて会いたくて、やっと会えたって実感した。
「アイ…っ」
何度も何度もオレを呼ぶリツキも同じなのかもしれない。
この実感が欲しかったのかもしれない。
そんな気がした。
リツキがオレの涙に唇を寄せると、オレの手を引いて教室の窓から外をうかがう。
「抜けるぞ」
オレを振り返ったリツキが、いたずらな顔で、晴れやかに笑う。
リツキに手を引かれて、教室の窓を乗り越え、茂みに隠れながら、リツキが生活しているらしい寮の裏口まで走って、柵をよじ登った。
ミラノの街には、夕闇が落ちていた。
リツキは通りをしばらく走ってからタクシーを止めて乗り込むと、イタリア語で何やら告げた。
タクシーがゆっくり走り出す。
リツキがずっと、オレの手をつないでいる。
リツキの体温を感じる。
知らない街で、黙って抜け出して、行き先もわからない。
だけど。
指の間に絡められたリツキの骨のある長い指。
行き着く先が天国でも地獄でも、リツキと一緒なら怖くない。
「…っ、リツ…っ」
「黙って」
ホテルの前でタクシーを降りて、リツキに連れられて高層階の一室に入った。
ドアが閉まるよりも早く、リツキが猛然と口づけてくる。
さっきみたいに優しく触れる感じじゃなくて、飢えたケモノみたいに、骨の髄まで食い尽くされそうな、深い深いキス。
息が出来なくて、空気を求めてあえぐと、容赦なくリツキに奪われる。
リツキのキスにいっぱいいっぱいで、気づくと半裸状態でベッドにいた。
ちょっと待て!エロサル!
てめー、いつの間に脱がしてんだよっ
「まっ、…リツ!オレ、お前に確かめたいことが、…っ」
必死でリツキを押しとどめると、
「ちゃんと聞く」
リツキがオレの目と目を合わせながら、柔らかいキスを落とす。
「何でも、お前の言うこと聞いてやるから、抱かせて?」
リツキの瞳が狂おしいほど、オレを求めて揺れていた。
「ごめん、アイ」
リツキの声が切なくて。
「俺、もう一秒も待てない」
リツキの身体が熱くて。
どんだけヤりたかったんだよって思ったら、おかしくて笑いたいのに、泣きたくなった。
「アイ…っ」
オレの身体をなぞるリツキの指も唇も、信じられないくらい熱くて、リツキのくせにまるで余裕がなくて、
「…リツっ」
ただ愛しくてリツキを抱きしめた。
リツキが身体全部でオレを求めてる。
触れ合うところ全てで「好き」って言ってる。
つないだ手も絡めた舌も、オレだけに向けられてて、だから、あっという間に溶かされた。
リツキがオレの中にいて、会いたくて会いたくて、やっと会えたって実感した。
「アイ…っ」
何度も何度もオレを呼ぶリツキも同じなのかもしれない。
この実感が欲しかったのかもしれない。
そんな気がした。
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