90 / 118
hage.90
しおりを挟む
他の誰かのところに行くけど、…帰ってくる、ってことなのか。
「アイ~、ごはん出来たってよ~」
「…いらない」
自分の声が震えていた。
「なによぅ。具合でも悪いの?レオン様も待ってるのに」
ハナクソがぶーぶー言ってるけど、答える元気がなかった。
いつの間にレオンが来てたんだか、気づきもしなかった。
『アイ先輩にはレオン様がいるから、…』
リツキが他の誰かとキスしてたとしても、新しい恋人を作っていたとしても、オレには責める資格なんかない。
オレだってレオンと。
だけど。
だけど、胸が痛い。胸が苦しい。
だけど、どうしても、涙が出る。
『一人で泣くなよ』
リツキの手が欲しい。
『俺はお前だけだから。不安になるなよ』
今すぐリツキに抱きしめて欲しい。
マシュマロニシモトの言うことなんか、ウソに決まってんだろって、いつもみたいにイジワルな顔で、優しいキスをして欲しい。
布団にくるまって丸まっていたら、急にスマホが振動してビビる。
『今週のハゲカッパは?』
そのメールを見たら、涙が止まらなくなってしまった。
リツキのカッパメールが、世界一大事に思えた。
リツキ。
心変わりなんて、してないよな。
浮気も本気もないよな。
オレがカッパになっても、
リツキは変わらないよな。
いつしか、スマホを握りしめたまま、眠ってしまったらしい。
誰かが、オレの髪をなでている。
優しい手。…リツキの手。
オレ、リツキに触られるの、好きなんだ。
「アイ、…」
やっぱり、ニシモトの言うことなんて、ウソだよな。
「泣かないで」
だってリツキは、ここにいるし。
安心して、笑ったつもりが、しゃくりあげたみたいになった。
オレの髪をなでる優しい手が、本当はリツキの手じゃないって、どこかで気づいていたのかもしれない。
なんとなく、ハゲがムズムズして目が覚めた。
ハゲを掻くのは厳禁らしいから、危ないところだった。
…って。
抱きしめられてるっ?!
「…ん」
オレが焦って仰け反ったら、オレを抱きしめてる腕の主が目を開けて、きれいな微笑みを見せた。
「起きた?アイ」
澄んだ碧い瞳。
「…レオン」
ごめんな、レオン。
オレ、ほんの少しだけ、リツキのこと、思い浮かべてたんだ。
溶けそうに熱かった、リツキの腕の中。
あの腕の中に、今は別の誰かがいるなんて、考えたくも、ねーな…
「おはよう」
レオンがオレの額に口づけて、オレの髪をなでる。
我に返って確認すると、レオンはバッチリ服を着てるし、オレは未だ制服姿だった。
ちなみにここは、オレんちの狭い2段ベッドの中。
「アイを抱いて眠っただけだよ」
オレの考えはお見通しらしい。
「アイ~、ごはん出来たってよ~」
「…いらない」
自分の声が震えていた。
「なによぅ。具合でも悪いの?レオン様も待ってるのに」
ハナクソがぶーぶー言ってるけど、答える元気がなかった。
いつの間にレオンが来てたんだか、気づきもしなかった。
『アイ先輩にはレオン様がいるから、…』
リツキが他の誰かとキスしてたとしても、新しい恋人を作っていたとしても、オレには責める資格なんかない。
オレだってレオンと。
だけど。
だけど、胸が痛い。胸が苦しい。
だけど、どうしても、涙が出る。
『一人で泣くなよ』
リツキの手が欲しい。
『俺はお前だけだから。不安になるなよ』
今すぐリツキに抱きしめて欲しい。
マシュマロニシモトの言うことなんか、ウソに決まってんだろって、いつもみたいにイジワルな顔で、優しいキスをして欲しい。
布団にくるまって丸まっていたら、急にスマホが振動してビビる。
『今週のハゲカッパは?』
そのメールを見たら、涙が止まらなくなってしまった。
リツキのカッパメールが、世界一大事に思えた。
リツキ。
心変わりなんて、してないよな。
浮気も本気もないよな。
オレがカッパになっても、
リツキは変わらないよな。
いつしか、スマホを握りしめたまま、眠ってしまったらしい。
誰かが、オレの髪をなでている。
優しい手。…リツキの手。
オレ、リツキに触られるの、好きなんだ。
「アイ、…」
やっぱり、ニシモトの言うことなんて、ウソだよな。
「泣かないで」
だってリツキは、ここにいるし。
安心して、笑ったつもりが、しゃくりあげたみたいになった。
オレの髪をなでる優しい手が、本当はリツキの手じゃないって、どこかで気づいていたのかもしれない。
なんとなく、ハゲがムズムズして目が覚めた。
ハゲを掻くのは厳禁らしいから、危ないところだった。
…って。
抱きしめられてるっ?!
「…ん」
オレが焦って仰け反ったら、オレを抱きしめてる腕の主が目を開けて、きれいな微笑みを見せた。
「起きた?アイ」
澄んだ碧い瞳。
「…レオン」
ごめんな、レオン。
オレ、ほんの少しだけ、リツキのこと、思い浮かべてたんだ。
溶けそうに熱かった、リツキの腕の中。
あの腕の中に、今は別の誰かがいるなんて、考えたくも、ねーな…
「おはよう」
レオンがオレの額に口づけて、オレの髪をなでる。
我に返って確認すると、レオンはバッチリ服を着てるし、オレは未だ制服姿だった。
ちなみにここは、オレんちの狭い2段ベッドの中。
「アイを抱いて眠っただけだよ」
オレの考えはお見通しらしい。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
俺にはロシア人ハーフの許嫁がいるらしい。
夜兎ましろ
青春
高校入学から約半年が経ったある日。
俺たちのクラスに転入生がやってきたのだが、その転入生は俺――雪村翔(ゆきむら しょう)が幼い頃に結婚を誓い合ったロシア人ハーフの美少女だった……!?
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜
green
青春
一ノ瀬財閥の令嬢、一ノ瀬綾乃は小学校一年生からサッカーを始め、プロサッカー選手になることを夢見ている。
しかし、父である浩平にその夢を反対される。
夢を諦めきれない綾乃は浩平に言う。
「その夢に挑戦するためのお時間をいただけないでしょうか?」
一人のお嬢様の挑戦が始まる。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる