【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

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「…白雪姫。神があなたを眠らせたなら、私も共に眠りに就こう」

文化祭、当日。
舞台上でスポットライトを一身に浴びるレオンは、『ザ・王子』そのもので、女子生徒はもちろん、観客の老若男女全てから羨望の眼差しを送られていた。

そんなキラキラしたレオンを見ながら、オレはなぜか、なかよし保育園、スミレ組の学芸会を思い出す。

セリフとか全然違うけど、あの時も確か白雪姫をやって。
なんでかリツキが白雪で。オレが王子で。
リツキにキスするフリをするのにテンパって、
ホントに…

あん時、リツキに初めてキスしたんじゃねーのかなぁ。

「愛しています。あなただけを。たとえ、あなたが誰を想っていようと」

気づいたら、レオンのドアップが目の前にあった。

うお。
のけぞる隙もなく、

「アイが好きだよ」

耳元で優しくレオンがささやいて、観客がかたずをのんで見守る中、王子は完璧にきれいなキスを落とした。

レオンのキスが優しすぎて泣きたくなった。

リツキのこと、考えてたのに。
なんでレオンは、こんなオレに優しいんだ。

オレが目を開けると、レオンの優しい笑顔があって、

「目覚められたのですね、愛しの白雪!」

レオンに抱きしめられながら紙ふぶきを浴びた。
観客の拍手喝さいがなんだか妙に切なかった。

「…純粋にアイがうらやましくなっちゃったな」

文化祭のステージ終了後、チナツに言われた。

「レオン王子、本当にアイのこと、好きなんだね」

オレだって。
オレだって、レオンのことは好きだし、感謝もしてる。

でも。
気持ちに応えられない以上、このままってわけにいかない。

来月の修学旅行前に、もう一度ちゃんとレオンと話そう、って決めた。

なのに。

「アイ先輩。レオン様とご婚約おめでとうございます。リツキ先輩も祝福されてましたよ」

久々に寄って来たマシュマロニシモトが、オレを一気に叩きのめした。



リツキがブロンド美人と親しげに顔を寄せ合って笑っている。
美人の頭に手を乗せて、オレにしてたみたいに撫でている。
リツキが美人を抱きしめて、耳元で何かささやいている。
美人がリツキの頬にキスして、リツキが照れたみたいに笑っている。
リツキが美人の頬に手を置いて、2人でキスしてる。



自室の2段ベッドで、頭から布団をかぶった。

『秋の連休に、イタリアに行ったんです。リツキ先輩、待ってるって言ってくれて』

ニシモトの声がよみがえる。

『待つカッパ』って、オレだけってわけじゃなかったんだな。

『リツキ先輩、すごく歓迎してくれました!学校とか街とか案内してくれて、仲間の皆さんに、fidanzata(彼女)って言われちゃって。リツキ先輩否定しないから、ラウラさんに睨まれちゃいました』

ニシモトはそこで楽しそうな笑みを浮かべた。

『ラウラさん。リツキ先輩の恋人なんですって。イタリアにいる間の』

ニシモトから見せられたリツキと美女が親しげに写る数々の写真。

『情熱の国って感じなのかなぁ。すごくアツアツで妬けちゃいました』

ニシモトの言葉は耳をすり抜けていく。

ほんの少ししか離れてなかったのに、リツキが別人みたいに見えた。
ムダにかっこいいのは変わらないけど、ちょっと日に焼けて、全身が更に引き締まって、オレの知らないリツキみたいに見えた。

『リツキ先輩も、悪いオトコですよね。一時の恋って思ってるから、余計盛り上がってるみたいで』

あんなにリツキに会いたかったのに。

『浮気が本気にならないといいですね。あ、でも。アイ先輩にはレオン様がいるから、もう関係ないか』

もう、会いたいのか、わかんねー。
いつニシモトがいなくなったのか、どうやって家まで帰ってきたのか、記憶がねー。

布団をかぶっているのに、寒い。

『お前のところに帰ってくるから、…』

帰ってくる、って。
そういう意味か?
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