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hage.88
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何はともあれ!
2か月後には、リツキに会える!
オレが浮かれて、『会いに行くぜ』メールを送ると、
『待つカッパ』メールが返ってきた。
おい、リツキ、もっと浮かれろよ!
オレはカッパじゃねー。
と思いながらも、ハゲに薬を塗り込むのは欠かせない。
クソ。乙女の行為じゃねー。
でも、まあ。
リツキに会えるなら。
「白雪姫、愛の力であなたを目覚めさせましょう!」
嫌がらせとしか思えない文化祭の白雪姫劇場も乗り越えられるってもんだ。
たとえ王子がレオンで、オレが白雪姫だとしても。
レオンが王子なのはわかるけど、なんでオレが白雪?
どこが白雪?
「アイ~、ほら、キスシーンの練習しよっ」
…全部レオンの陰謀なんだけど。
「お前、イタリア行く前にレオンのことちゃんとしろよ?
リツキが気の毒だろ」
ハセガワに言われるまでもない。
「Oh,白雪!どうしてあなたは白雪なの?お前のすべてを食べてしまいたいっ」
わかってる。
レオンはオレのそばにいるべきじゃない。
「レオン様、ナイスセリフです~っ」
オレはレオンに想ってもらえる価値はない。
「白雪~、ほら、目覚めのキスだよ~」
「ちけーよっ」
こんな風に冗談交じりでいつもそばにいるけど、こんなのレオンもリツキも傷つけるだけだって、…ちゃんとわかってるんだ。
「とは言え、あからさまに避けるわけにもいかないしねぇ。レオン王子、結構、強引だし」
昼休みの中庭。
レオンが仕事で一時会社に戻っている合間のチナツとのランチタイム。
相変わらず、チナツの弁当は格別にうまい。
「アイ、さりげに何度も王子とキスしてるけど、…全然王子には傾かないの?」
「ぐふぁっ」
クソ。超絶美味な卵焼きを吹いてしまった…!
「んもぉ~、動揺し過ぎ~。別に、心変わりしたって責めないよ?」
チナツが優しくハンカチで拭ってくれる。
「してねーよ!?」
慌てて言い募るオレに、
「ああ、うん。えーと、じゃあ、一時の過ち?」
チナツは落ち着いてさやいんげんのピーナツ和えを頬張る。
レオンのことは…
「…過ってねー」
レオンは、団地のオレんちにもあっという間に馴染んで、隙あらばちょっかいをかけてくる。
おかげでオレはしみじみする暇もなく、レオンには感謝してるんだけど…
オレは、リツキのいない寂しさを、レオンで埋めているのか。
「うお~、オレ、最低じゃん!」
思わず絶叫するオレに、
「アイってば、落ち着いて。誰も責めてないから。…リツキくんに置いて行かれて、寂しいんだから仕方ないよ」
達観したようなセリフを吐くチナツ。
「リツキくん、素っ気ないしね。
あの王子に全力で迫られて、ちょっとくらいフラフラしても罰は当たらないっていうかね」
「…チナツ、何かあった?」
チナツの発言に若干トゲを感じて、恐る恐る聞いてみると、
「…カイトくん。なんか、隠してるっぽい。心変わりしてるのかも」
ぎょっとするようなことを言い出した。
お前ら、この前めちゃめちゃラブラブしてなかった?
「…最近ちょっと会えなくて。他校だし、…やっぱりそばにいる人がいいのかな」
おいおい。
肩を落としているチナツになんて声をかけていいかわからないから、頭をなでてみた。
そばに、ね。
なんだか胸がチクチクする。
オレはリツキが今、誰と一緒にいて何をしているんだか、さっぱりわかんねー。
チナツみたいに隠してるっぽいとか、感じることもできねー。
でも。
リツキは心変わりなんか、しねーよな?
2か月後には、リツキに会える!
オレが浮かれて、『会いに行くぜ』メールを送ると、
『待つカッパ』メールが返ってきた。
おい、リツキ、もっと浮かれろよ!
オレはカッパじゃねー。
と思いながらも、ハゲに薬を塗り込むのは欠かせない。
クソ。乙女の行為じゃねー。
でも、まあ。
リツキに会えるなら。
「白雪姫、愛の力であなたを目覚めさせましょう!」
嫌がらせとしか思えない文化祭の白雪姫劇場も乗り越えられるってもんだ。
たとえ王子がレオンで、オレが白雪姫だとしても。
レオンが王子なのはわかるけど、なんでオレが白雪?
どこが白雪?
「アイ~、ほら、キスシーンの練習しよっ」
…全部レオンの陰謀なんだけど。
「お前、イタリア行く前にレオンのことちゃんとしろよ?
リツキが気の毒だろ」
ハセガワに言われるまでもない。
「Oh,白雪!どうしてあなたは白雪なの?お前のすべてを食べてしまいたいっ」
わかってる。
レオンはオレのそばにいるべきじゃない。
「レオン様、ナイスセリフです~っ」
オレはレオンに想ってもらえる価値はない。
「白雪~、ほら、目覚めのキスだよ~」
「ちけーよっ」
こんな風に冗談交じりでいつもそばにいるけど、こんなのレオンもリツキも傷つけるだけだって、…ちゃんとわかってるんだ。
「とは言え、あからさまに避けるわけにもいかないしねぇ。レオン王子、結構、強引だし」
昼休みの中庭。
レオンが仕事で一時会社に戻っている合間のチナツとのランチタイム。
相変わらず、チナツの弁当は格別にうまい。
「アイ、さりげに何度も王子とキスしてるけど、…全然王子には傾かないの?」
「ぐふぁっ」
クソ。超絶美味な卵焼きを吹いてしまった…!
「んもぉ~、動揺し過ぎ~。別に、心変わりしたって責めないよ?」
チナツが優しくハンカチで拭ってくれる。
「してねーよ!?」
慌てて言い募るオレに、
「ああ、うん。えーと、じゃあ、一時の過ち?」
チナツは落ち着いてさやいんげんのピーナツ和えを頬張る。
レオンのことは…
「…過ってねー」
レオンは、団地のオレんちにもあっという間に馴染んで、隙あらばちょっかいをかけてくる。
おかげでオレはしみじみする暇もなく、レオンには感謝してるんだけど…
オレは、リツキのいない寂しさを、レオンで埋めているのか。
「うお~、オレ、最低じゃん!」
思わず絶叫するオレに、
「アイってば、落ち着いて。誰も責めてないから。…リツキくんに置いて行かれて、寂しいんだから仕方ないよ」
達観したようなセリフを吐くチナツ。
「リツキくん、素っ気ないしね。
あの王子に全力で迫られて、ちょっとくらいフラフラしても罰は当たらないっていうかね」
「…チナツ、何かあった?」
チナツの発言に若干トゲを感じて、恐る恐る聞いてみると、
「…カイトくん。なんか、隠してるっぽい。心変わりしてるのかも」
ぎょっとするようなことを言い出した。
お前ら、この前めちゃめちゃラブラブしてなかった?
「…最近ちょっと会えなくて。他校だし、…やっぱりそばにいる人がいいのかな」
おいおい。
肩を落としているチナツになんて声をかけていいかわからないから、頭をなでてみた。
そばに、ね。
なんだか胸がチクチクする。
オレはリツキが今、誰と一緒にいて何をしているんだか、さっぱりわかんねー。
チナツみたいに隠してるっぽいとか、感じることもできねー。
でも。
リツキは心変わりなんか、しねーよな?
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