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hage.87

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「キャアアア~~~、レオンさまぁ~~~っ」
「ナイスパスです、レオン様」
「ナイス解答です、レオン様」
「ナイススマイルですぅ~~~」

自称レオン親衛隊は、今日も朝から騒がしい。
四六時中レオンに付きまとい、一挙一動に歓声が上がる。

レオンは朝、ロールスロイスが世界一似合わない団地に、それを颯爽と停めて、オレを好奇の視線の道連れにし、校門でオレの手を取って車から降りる。

寒ーし、痒ーし。
ってオレが訴えても、「妻の務め」とかいう一点張りで態度を改めようとしない。

「アイは流されやすいからなぁ…」

チナツがオレの隣に陣取るレオンを見て、ため息交じりにつぶやく。

レオンは日がな一日、オレにまとわりついてくるんだけど、何をやらせても有能なので、誰も邪険にできない。
というか、そもそもコイツは今更高校になんて通う必要はないんだけど、そこは何とか大人の圧力で丸め込んだらしい。

『おはカッパ』

最近リツキから来たメールはその一言だけで、マジでいい加減にしろよって思う。

「まあ、遠距離恋愛の必須事項はマメなコミュニケーションだからね」

チナツもオレに同感らしい。

リツキは。
オレがいなくてもさみしくねーのかな。

「あー、文化祭の出し物と、修学旅行の班決めをするぞー」

担任のオギノがやる気のない声で指示を出す。

「楽しみだね、アイ。文化祭も修学旅行も」

オレの隣でレオンがルンルンしていて、それをクラスの女子らがワクワク見ている。

「…やる気でねー」

机に突っ伏したオレを、

「アイ!アイっ!」

前からチナツが揺さぶる。

「いい事思い付いたよ!修学旅行にイタリア行きを提案すればいいよ!」

…え。

イタリアの四文字に起き上がるオレ。

「カワシマが前に言ってたじゃん。リツキくんは学校の宝だって。宝を応援に行くんだよ!」

チナツ様。なんて素晴らしいアイデア!

『イタリアに行って、サッカーを頑張る本多リツキくんを応援しよう』の声は、カワシマを筆頭にリツキファンの間にたちまち広がりを見せた。

男子らもイタリアサッカーには興味津々らしく、乗り気なやつらが続出し、

「なんで、本多リツキ…」

どうにもリツキを敵視しているレオンでさえも、

「まあ、アイとの新婚ぶりを本多リツキに見せつけるいい機会か」

最終的にはよくわからない理由で賛成していた。

いや。あくまでも、結婚してねーから。

そんなわけで。
チナツ発、修学旅行イタリア行きは、瞬く間に盛り上がりを見せ、カワシマの有無を言わせぬ説得で、ついに学校長の許可が下りた。

ブラボー、カワシマ!

「リっくん、待ってて。アヤのラブパワーを届けるわ~~~」

「…俺、絶対遊ばれたよね」

ドンマイ、タカヤ。
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