上 下
84 / 118

hage.84

しおりを挟む
「お父上、お母上、姉上。挨拶が遅くなって申し訳ありませんでした」

レオンが狭い団地の上がり口で三つ指をついて頭を下げる。

「ワタクシ、桐野レオン、本日、古町アイさんをお迎えに上がりました」

や。
どうにも時代がかってておかしいから。

しかし、無害を絵に描いたような父親はともかく、ハナクソ母子ですらチラリとも笑わない。
驚きを通り越して、正座を始める始末だ。

「ハ、ハロー、ナイストゥミートユゥ、…」

チラチラとレオンをうかがいながら話す、ハナクソなけなしの英語が虚しく響く。

落ち着け。
レオンはバリバリ日本語話してるだろ。

「とりあえず、入れよ」

レオンを居間に通すと、

「王子様…」

あからさまに目をハートにしたハナクソがレオンの隣に張り付いた。
わかりやすいな、おい。

「ワタクシ、アイの姉のハナです。趣味は琴です」

なんか、ハナクソ、前もそんなこと言ってなかった?
だから、この狭い団地のどこら辺に琴が!?

「姉上。以後末永くお付き合いをお願いします」

レオンが王子スマイルをかますと、ハナクソのくせに頬を染めてみたりして、

「お、…お付き合い…っ」

幸せな妄想を始めたクサい。

「レオンはさ、今日からオレのクラスメイトになったんだけど、友だちん家に来たことないっていうから遊びに来たの。まあ、それだけ」

ハナクソが若干心配なところではあるけど、話がおかしくなる前にちゃんと言っとかないと!

「アイ。ご家族にはきちんと話さないと!」

レオンがきりっとした目でオレを制すけど、なんかややこしいことになりそうだし、団地の前に停まってるロールスロイスは住民の目に毒だし。

「今日は入籍のお願いをしにきたのです。お許しいただければ、今すぐにでもアイと結婚します」

「入籍?」
「アイが!?」
「け、結婚??」

レオンさぁ、…物には順序ってもんがあるだろ。
オレがせっかくさりげなくやり過ごそうとしたのに、レオンは一切無視して妙にきっぱり宣言する。

当然ながら、ハナクソ母子も無害父も話に着いて行けるはずがなく。

「俺、…私とアイは、幼少期に将来を固く誓い合いました。私は今日で18歳になり、法的に婚姻を認められる年齢になりました。今日まで、アイを迎えに来るために、学業を修了し、仕事を軌道に乗せ、収入を安定させました。…」

レオンが何やら書類を取り出して、会社の説明をしている。
が、オレと同様、家族も詳しいことはさっぱりだ。

ただ何となく、会社がデカくて調子よくいってることは伝わってくる。
まあ、ロールスロイスだしな。
何事かって感じだよな。座り心地いいけど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

切り抜き師の俺、同じクラスに推しのVtuberがいる

星宮 嶺
青春
冴木陽斗はVtuberの星野ソラを推している。 陽斗は星野ソラを広めるために切り抜き師になり応援をしていくがその本人は同じクラスにいた。 まさか同じクラスにいるとは思いもせず星野ソラへの思いを語る陽斗。 陽斗が話をしているのを聞いてしまい、クラスメイトが切り抜きをしてくれていると知り、嬉しさと恥ずかしさの狭間でバレないように活動する大森美優紀(星野ソラ)の物語

陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!

みずがめ
青春
 杉藤千夏はツンデレ少女である。  そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。  千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。  徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い! ※他サイトにも投稿しています。 ※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

イラスト部(仮)の雨宮さんはペンが持てない!~スキンシップ多めの美少女幽霊と部活を立ち上げる話~

川上とむ
青春
内川護は高校の空き教室で、元気な幽霊の少女と出会う。 その幽霊少女は雨宮と名乗り、自分の代わりにイラスト部を復活させてほしいと頼み込んでくる。 彼女の押しに負けた護は部員の勧誘をはじめるが、入部してくるのは霊感持ちのクラス委員長や、ゆるふわな先輩といった一風変わった女生徒たち。 その一方で、雨宮はことあるごとに護と行動をともにするようになり、二人の距離は自然と近づいていく。 ――スキンシップ過多の幽霊さんとスクールライフ、ここに開幕!

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

処理中です...