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hage.84
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「お父上、お母上、姉上。挨拶が遅くなって申し訳ありませんでした」
レオンが狭い団地の上がり口で三つ指をついて頭を下げる。
「ワタクシ、桐野レオン、本日、古町アイさんをお迎えに上がりました」
や。
どうにも時代がかってておかしいから。
しかし、無害を絵に描いたような父親はともかく、ハナクソ母子ですらチラリとも笑わない。
驚きを通り越して、正座を始める始末だ。
「ハ、ハロー、ナイストゥミートユゥ、…」
チラチラとレオンをうかがいながら話す、ハナクソなけなしの英語が虚しく響く。
落ち着け。
レオンはバリバリ日本語話してるだろ。
「とりあえず、入れよ」
レオンを居間に通すと、
「王子様…」
あからさまに目をハートにしたハナクソがレオンの隣に張り付いた。
わかりやすいな、おい。
「ワタクシ、アイの姉のハナです。趣味は琴です」
なんか、ハナクソ、前もそんなこと言ってなかった?
だから、この狭い団地のどこら辺に琴が!?
「姉上。以後末永くお付き合いをお願いします」
レオンが王子スマイルをかますと、ハナクソのくせに頬を染めてみたりして、
「お、…お付き合い…っ」
幸せな妄想を始めたクサい。
「レオンはさ、今日からオレのクラスメイトになったんだけど、友だちん家に来たことないっていうから遊びに来たの。まあ、それだけ」
ハナクソが若干心配なところではあるけど、話がおかしくなる前にちゃんと言っとかないと!
「アイ。ご家族にはきちんと話さないと!」
レオンがきりっとした目でオレを制すけど、なんかややこしいことになりそうだし、団地の前に停まってるロールスロイスは住民の目に毒だし。
「今日は入籍のお願いをしにきたのです。お許しいただければ、今すぐにでもアイと結婚します」
「入籍?」
「アイが!?」
「け、結婚??」
レオンさぁ、…物には順序ってもんがあるだろ。
オレがせっかくさりげなくやり過ごそうとしたのに、レオンは一切無視して妙にきっぱり宣言する。
当然ながら、ハナクソ母子も無害父も話に着いて行けるはずがなく。
「俺、…私とアイは、幼少期に将来を固く誓い合いました。私は今日で18歳になり、法的に婚姻を認められる年齢になりました。今日まで、アイを迎えに来るために、学業を修了し、仕事を軌道に乗せ、収入を安定させました。…」
レオンが何やら書類を取り出して、会社の説明をしている。
が、オレと同様、家族も詳しいことはさっぱりだ。
ただ何となく、会社がデカくて調子よくいってることは伝わってくる。
まあ、ロールスロイスだしな。
何事かって感じだよな。座り心地いいけど。
レオンが狭い団地の上がり口で三つ指をついて頭を下げる。
「ワタクシ、桐野レオン、本日、古町アイさんをお迎えに上がりました」
や。
どうにも時代がかってておかしいから。
しかし、無害を絵に描いたような父親はともかく、ハナクソ母子ですらチラリとも笑わない。
驚きを通り越して、正座を始める始末だ。
「ハ、ハロー、ナイストゥミートユゥ、…」
チラチラとレオンをうかがいながら話す、ハナクソなけなしの英語が虚しく響く。
落ち着け。
レオンはバリバリ日本語話してるだろ。
「とりあえず、入れよ」
レオンを居間に通すと、
「王子様…」
あからさまに目をハートにしたハナクソがレオンの隣に張り付いた。
わかりやすいな、おい。
「ワタクシ、アイの姉のハナです。趣味は琴です」
なんか、ハナクソ、前もそんなこと言ってなかった?
だから、この狭い団地のどこら辺に琴が!?
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「お、…お付き合い…っ」
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「レオンはさ、今日からオレのクラスメイトになったんだけど、友だちん家に来たことないっていうから遊びに来たの。まあ、それだけ」
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「アイ。ご家族にはきちんと話さないと!」
レオンがきりっとした目でオレを制すけど、なんかややこしいことになりそうだし、団地の前に停まってるロールスロイスは住民の目に毒だし。
「今日は入籍のお願いをしにきたのです。お許しいただければ、今すぐにでもアイと結婚します」
「入籍?」
「アイが!?」
「け、結婚??」
レオンさぁ、…物には順序ってもんがあるだろ。
オレがせっかくさりげなくやり過ごそうとしたのに、レオンは一切無視して妙にきっぱり宣言する。
当然ながら、ハナクソ母子も無害父も話に着いて行けるはずがなく。
「俺、…私とアイは、幼少期に将来を固く誓い合いました。私は今日で18歳になり、法的に婚姻を認められる年齢になりました。今日まで、アイを迎えに来るために、学業を修了し、仕事を軌道に乗せ、収入を安定させました。…」
レオンが何やら書類を取り出して、会社の説明をしている。
が、オレと同様、家族も詳しいことはさっぱりだ。
ただ何となく、会社がデカくて調子よくいってることは伝わってくる。
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何事かって感じだよな。座り心地いいけど。
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