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hage.83
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「レオンくん、リツキくんのこと知ってるんだ」
チナツが驚いた顔をしているけど、まあ、オレもリツキもなかよし保育園児だったんだから、知っていてもおかしくはないか。
「あの女たらしはこの世の敵だね。アイツがまだアイの周りをうろついていると分かった以上、長居は無用。帰ろう、アイ。早く区役所行かなきゃ」
言うなりレオンがオレの手をつかんで歩き出す。
「おい、ちょっと待て。勝手に話を進めんじゃねー」
「アイ。いい子だから黙って」
オレの抗議に、レオンはより一層オレを引き寄せて、人差し指で唇に触れる。
「アイを幸せにできるのは俺だよ? リツキがアイのために何かした? 俺は仕事も収入もある。アイと生きていくためだけに今日までやってきた。長い間さみしい思いをさせたけど、これからはずっと俺がそばにいるから」
インチキ王子が妙に真剣な顔をするから、若干ひるんだ。
保育園児の約束だろ?
コイツちょっと、大げさすぎじゃね?
「俺、アイとしかキスしたことないよ?」
唐突に至近距離にレオンの顔が迫る。
ちけーよっ
「触るのも、アイだけ。俺はアイしかいらないから」
レオンの瞳が揺れている。
碧い瞳が静かに燃えている。
「行こう」
言い返す言葉を失ったオレを、レオンが抱きかかえるようにして連れていく。
保育園、て、何年前だよ。
オレは今の今まで、お前のことなんかすっかり忘れて、…つーか、今だってそんな約束、思い出せないっていうのに。
本気で?
コイツ、本気で言ってんの?
オレがレオンを見つめていると、レオンが王子然とした整った笑みを見せる。
「やっと迎えに来れて、本当に嬉しいよ、アイ」
校門に、間近で見るのはほとんど初めてと言っていい黒塗りのロールスロイスが停まっていた。
はぁぁぁ?
なにこの場違いすぎる車は。
通行人も下校する生徒も一様にぎょっとした面持ちで通り過ぎる。
「お帰りなさいませ」
スーツのお兄さんが、レオンに頭を下げて、レオンは慇懃にうなずくと、オレをうながして後部座席に乗り込む。
「ちょ、…!お前んち、金持ちなワケ!?」
生まれて初めて乗ってしまった高級車に、どう座っていいかわかんねーし!
「俺の会社の車だよ。対外的なこともあるし」
「お前の会社ぁぁぁ?」
オレのパニックをよそに、滑るように運転しているスーツ姿のお兄さんが、
「レオン社長は、16歳で起業されて、2年で急成長させ、現在社長の会社は、某有名会社のIT関連グループ企業になっています。海外のお客様も多く乗せますのでこちらのお車をご利用です」
にこりともせずに説明してくれた。
レオン社長?
16歳で起業??
オレの隣に座るコイツ、ホントは何者なんだし!?
「会社の経営は安定してるし、アイが不安に思うことはないよ。俺は今日で18だから、日本の法律でも結婚できる。 アイが急だっていうなら、とりあえず入籍だけにしてもいいし」
良くねーしっ!
オレの不審なまなざしをなんと勘違いしたのか、レオンが王子スマイルで流暢に話す。
「アイ」
完全に固まっているオレにレオンが手を伸ばして、そっと頬に触れる。
長い指先が滑らかにオレの頬をなでる。
「会いたかった…」
レオンがオレの背に腕を回して、宝物のようにそっと包み込む。
碧い瞳が切なく潤んでいて、レオンの想いが伝わってくるようで、その腕を振りほどけなかった。
リツキ。
早く帰って来いよ。
オレ、お前のぬくもりを忘れちゃいそうで、…
怖いよ。
チナツが驚いた顔をしているけど、まあ、オレもリツキもなかよし保育園児だったんだから、知っていてもおかしくはないか。
「あの女たらしはこの世の敵だね。アイツがまだアイの周りをうろついていると分かった以上、長居は無用。帰ろう、アイ。早く区役所行かなきゃ」
言うなりレオンがオレの手をつかんで歩き出す。
「おい、ちょっと待て。勝手に話を進めんじゃねー」
「アイ。いい子だから黙って」
オレの抗議に、レオンはより一層オレを引き寄せて、人差し指で唇に触れる。
「アイを幸せにできるのは俺だよ? リツキがアイのために何かした? 俺は仕事も収入もある。アイと生きていくためだけに今日までやってきた。長い間さみしい思いをさせたけど、これからはずっと俺がそばにいるから」
インチキ王子が妙に真剣な顔をするから、若干ひるんだ。
保育園児の約束だろ?
コイツちょっと、大げさすぎじゃね?
「俺、アイとしかキスしたことないよ?」
唐突に至近距離にレオンの顔が迫る。
ちけーよっ
「触るのも、アイだけ。俺はアイしかいらないから」
レオンの瞳が揺れている。
碧い瞳が静かに燃えている。
「行こう」
言い返す言葉を失ったオレを、レオンが抱きかかえるようにして連れていく。
保育園、て、何年前だよ。
オレは今の今まで、お前のことなんかすっかり忘れて、…つーか、今だってそんな約束、思い出せないっていうのに。
本気で?
コイツ、本気で言ってんの?
オレがレオンを見つめていると、レオンが王子然とした整った笑みを見せる。
「やっと迎えに来れて、本当に嬉しいよ、アイ」
校門に、間近で見るのはほとんど初めてと言っていい黒塗りのロールスロイスが停まっていた。
はぁぁぁ?
なにこの場違いすぎる車は。
通行人も下校する生徒も一様にぎょっとした面持ちで通り過ぎる。
「お帰りなさいませ」
スーツのお兄さんが、レオンに頭を下げて、レオンは慇懃にうなずくと、オレをうながして後部座席に乗り込む。
「ちょ、…!お前んち、金持ちなワケ!?」
生まれて初めて乗ってしまった高級車に、どう座っていいかわかんねーし!
「俺の会社の車だよ。対外的なこともあるし」
「お前の会社ぁぁぁ?」
オレのパニックをよそに、滑るように運転しているスーツ姿のお兄さんが、
「レオン社長は、16歳で起業されて、2年で急成長させ、現在社長の会社は、某有名会社のIT関連グループ企業になっています。海外のお客様も多く乗せますのでこちらのお車をご利用です」
にこりともせずに説明してくれた。
レオン社長?
16歳で起業??
オレの隣に座るコイツ、ホントは何者なんだし!?
「会社の経営は安定してるし、アイが不安に思うことはないよ。俺は今日で18だから、日本の法律でも結婚できる。 アイが急だっていうなら、とりあえず入籍だけにしてもいいし」
良くねーしっ!
オレの不審なまなざしをなんと勘違いしたのか、レオンが王子スマイルで流暢に話す。
「アイ」
完全に固まっているオレにレオンが手を伸ばして、そっと頬に触れる。
長い指先が滑らかにオレの頬をなでる。
「会いたかった…」
レオンがオレの背に腕を回して、宝物のようにそっと包み込む。
碧い瞳が切なく潤んでいて、レオンの想いが伝わってくるようで、その腕を振りほどけなかった。
リツキ。
早く帰って来いよ。
オレ、お前のぬくもりを忘れちゃいそうで、…
怖いよ。
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