【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

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「レオンくん、リツキくんのこと知ってるんだ」

チナツが驚いた顔をしているけど、まあ、オレもリツキもなかよし保育園児だったんだから、知っていてもおかしくはないか。

「あの女たらしはこの世の敵だね。アイツがまだアイの周りをうろついていると分かった以上、長居は無用。帰ろう、アイ。早く区役所行かなきゃ」

言うなりレオンがオレの手をつかんで歩き出す。

「おい、ちょっと待て。勝手に話を進めんじゃねー」

「アイ。いい子だから黙って」

オレの抗議に、レオンはより一層オレを引き寄せて、人差し指で唇に触れる。

「アイを幸せにできるのは俺だよ? リツキがアイのために何かした? 俺は仕事も収入もある。アイと生きていくためだけに今日までやってきた。長い間さみしい思いをさせたけど、これからはずっと俺がそばにいるから」

インチキ王子が妙に真剣な顔をするから、若干ひるんだ。

保育園児の約束だろ?
コイツちょっと、大げさすぎじゃね?

「俺、アイとしかキスしたことないよ?」

唐突に至近距離にレオンの顔が迫る。
ちけーよっ

「触るのも、アイだけ。俺はアイしかいらないから」

レオンの瞳が揺れている。
碧い瞳が静かに燃えている。

「行こう」

言い返す言葉を失ったオレを、レオンが抱きかかえるようにして連れていく。

保育園、て、何年前だよ。
オレは今の今まで、お前のことなんかすっかり忘れて、…つーか、今だってそんな約束、思い出せないっていうのに。

本気で?
コイツ、本気で言ってんの?

オレがレオンを見つめていると、レオンが王子然とした整った笑みを見せる。

「やっと迎えに来れて、本当に嬉しいよ、アイ」

校門に、間近で見るのはほとんど初めてと言っていい黒塗りのロールスロイスが停まっていた。

はぁぁぁ?
なにこの場違いすぎる車は。

通行人も下校する生徒も一様にぎょっとした面持ちで通り過ぎる。

「お帰りなさいませ」

スーツのお兄さんが、レオンに頭を下げて、レオンは慇懃にうなずくと、オレをうながして後部座席に乗り込む。

「ちょ、…!お前んち、金持ちなワケ!?」

生まれて初めて乗ってしまった高級車に、どう座っていいかわかんねーし!

「俺の会社の車だよ。対外的なこともあるし」
「お前の会社ぁぁぁ?」

オレのパニックをよそに、滑るように運転しているスーツ姿のお兄さんが、

「レオン社長は、16歳で起業されて、2年で急成長させ、現在社長の会社は、某有名会社のIT関連グループ企業になっています。海外のお客様も多く乗せますのでこちらのお車をご利用です」

にこりともせずに説明してくれた。

レオン社長?
16歳で起業??

オレの隣に座るコイツ、ホントは何者なんだし!?

「会社の経営は安定してるし、アイが不安に思うことはないよ。俺は今日で18だから、日本の法律でも結婚できる。 アイが急だっていうなら、とりあえず入籍だけにしてもいいし」

良くねーしっ!

オレの不審なまなざしをなんと勘違いしたのか、レオンが王子スマイルで流暢に話す。

「アイ」

完全に固まっているオレにレオンが手を伸ばして、そっと頬に触れる。

長い指先が滑らかにオレの頬をなでる。

「会いたかった…」

レオンがオレの背に腕を回して、宝物のようにそっと包み込む。
碧い瞳が切なく潤んでいて、レオンの想いが伝わってくるようで、その腕を振りほどけなかった。

リツキ。
早く帰って来いよ。

オレ、お前のぬくもりを忘れちゃいそうで、…

怖いよ。
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