【完結】乙女ざかりハゲざかり〜爆笑ハイテンションラブコメディ

remo

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「えー、3センチ×3センチ。…あれ?広がった?」

ハゲ通院で、ふちなしメガネに衝撃的な事実を告げられた。

マジか!知らないうちにハゲ増殖…

「なんか、悩み事でもあったかな?ま、とりあえず、撮っとくか」

オレがショックを受けているにもかかわらず、ハゲを容赦なく激写するメガネ。

医者ならもう少しデリカシーを持て!

と、言いたいが。

「…ついでにオレのスマホでも撮ってください」

自ら撮影を希望するオレもどうかと思われる。

だって仕方ない。

リツキに送るって約束しちゃったし。

「あはは、自分で撮る元気があるなら、大丈夫、大丈夫」

おい、メガネ。
全然大丈夫じゃねーよ。

オレはハゲが広がるほど悩んでるんだ!

っていうか。

あっという間に夏休みになって、慌ただしくリツキが行ってしまって、心にぽっかり穴があくって、こういう気持ちを言うんだってわかった。

リツキがイタリアに行くことを決めたから、一学期の終業式は、えらい騒ぎだった。

「イタリアに行っても応援してます」
「頑張って下さい!」
「私のこと忘れないで」
「最後に抱いて、リっくんっ!」

おい、カワシマ。タカヤはどうした。

「stammi bene.  イタリア語を覚えて、会いに行きますね」

おいおい、ニシモト!?

「ニャヒ ニャールニョ」

ボンジョルノっつった?やるな、チビ猫。

女子らがリツキに殺到して、記念写メやら記念告白やら記念タッチ?やらでリツキは揉みくちゃにされていた。

「…マジで、窒息するかと思った」

奇跡の生還を果たしたリツキには悪いが、オレには女子らの必死な気持ちがよく分かる。

手をつないで学校から帰るのも、これで最後かと思うと、…

「ん?」

絡めた指も、広い手のひらも、滑らかな肌触りも、全部覚えておきたいって思うから。

「アイ」

オレをチラリと見たリツキが、素早くオレを引き寄せて、キスする。

なんでコイツは道の真ん中で、公衆の面前で、いつもいつも自分の都合で、…っ

「一人で泣くなよ」

リツキの長い指が目じりにたまった涙を優しくぬぐう。
クソ、オレは別に泣いてなんか、…!

「俺はお前だけだから。不安になるなよ」

オレは、別に、…!

「アイ」

リツキがオレの頭を自分の胸に抱きかかえて、

「お前のところに帰ってくるから。…待ってて」

泣くつもりなんて全然なかったのに、リツキが低く優しくささやくから、勝手に涙が転がり落ちた。

リツキの胸で、リツキに包まれて、泣いたり笑ったりわめいたり、…
すぐそばにいて、窮地に陥るとどこからか駆けつけてくれて、バカにしたり、からかったり、ふざけたり、…
普通の、何の変わり映えもしない、飽きるようなただの毎日が、
こんなに大切なものだったなんて、

…なくしてから、初めて気が付くものなんだな。
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